アルティメットチョイス
現代の『銭形平次』だと、思った。
改札にいるカップルの女の方だ。どうやら喧嘩をしているらしい二人の、女の方が手に何かを持って男を叩いている。何度も振り下ろされるその右手には『Suica』が握られていた。「何回同じ事してんの、ねぇ聞いてんの。」女は何度も電子マネーで浮気男を叩き、成敗していたのだ。電子マネーは辺りに散らばることはないので、回収の心配などせずにその光景を見ていられた。
女は左手に鋲のついたカバンも持っていたが、Suicaを選択するところからすると、優しく限度をわきまえた女性なのだろう。
ある場面でどういう手段を選択するかは極めて重要だ。その繰り返しが人生だと10代の頃、友人の金物屋の息子に説教されたことがある。小学生の頃には、地元のガキ大将に「今日は駄菓子屋で万引きするか、隣の学校のやつらとケンカしにいくか、どうする。」と選択を迫られたこともあった。はっきりと嫌な思い出だ。
子供の頃、好きだった遊びがある。『究極の選択ゲーム』を知っているだろうか。「ウンコ味のカレーとカレー味のウンコどっちを選ぶ?」というような、なぜ選ばなければいけないのか分からない、一食ぐらい我慢するよと文句を言いたくなる、理不尽な二択からの選択をするゲームだ。簡単には選べないからこそ楽しい、悩みの娯楽である。
そんな究極の選択をいくつか提示するので、童心に返って各々やってみてほしい。
なってしまうなら?“これからずっと夏”と“これからずっと冬”
僕は夏です。
入るなら?“自由で快適な刑務所に終身刑”と“悪辣なパワハラと残業だらけの大企業に定年まで”
生きがいをなにに託すか。
味わってみるなら?“野球選手になってサヨナラホームラン”と“お笑い芸人になって会場が揺れるほどの大爆笑をとる”
特別な快感。
なるなら?“エロい事を考えると目が光る”と“怒ると鼻から白煙が吹き出る”
電気消して。とか言われたら逆に。
付き合うなら?“暗い過去を持っている人”と“巨大な斧を持っている人”
後者は待ち合わせに斧をカラカラ引きずり現れます。
食べるなら?“アイドルのウンコ味のカレー”と“カレー味の中年男性のウンコ”
ある特殊な性癖の人は迷わず決められるはず。
やるなら?“ヤクザとオセロ”と“ホームレスとツイスターゲーム”
究極でもないか。
大目に見るなら?“ダラダラ二択を書き連ねる者”と“腐った政治家”
許してちょろちょろ蛇口。