再編 ジジイとガキがマブダチ


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、1985年に第一作が公開された、世界中で最も愛されている大人気SF映画シリーズである。主人公の高校生マーティ・マクフライとその親友で科学者のブラウン博士(通称ドク)が、デロリアンを改造したタイムマシンに乗り込み、タイムトラベルをしながら次々に起こる困難や自身のコンプレックスを克服していく、夢と希望と遊び心と楽しさしかない娯楽映画だ。物語を通じて、少しの勇気と行動で未来は変えられるということを教えてくれる。デロリアンのデザインや巨大なアンプ、ホバーボードなどのワクワクするSF的な描写の面白さはもちろんだが、この作品の魅力の一つに、マーティとドクの厚い友情がある。二人は互いに信頼し、支え合い、笑い合う親友なのだ。二人の仲睦まじい姿がたまらなく愛おしいバディムービーでもある。しかし、よく考えてみると、マーティは短気で自分勝手な高校生、ドクは偏屈で怪しい老人。そんな二人がなぜ親友でいられるのだろう。今回はその理由を作品の中から考察してみよう。それがわかればどんな人でも世代を超えた友情を築けるかもしれない。


・世間から疎まれても気にしない。

映画の中でドクは周囲の人々から、危険人物でロクなやつではないと噂されている。それもそのはず、見た目からしていかがわしい。白髪でハゲあがっているのに襟足は長く、いまにもシェケナベイベーと言い出しそうな風貌である。さらに庭まで散らかった自宅兼研究室で夜通し実験を繰り返し、たまに爆発なんかを起こしている。近隣の住人からすれば迷惑極まりない。一方のマーティもキレやすく軽薄なところがあり、学校では落ちこぼれと呼ばれている。そんな二人の関係だが、嫌われ者同士で馴れ合っているわけでも、同情して一緒にいるわけでも決してない。二人は周りからどう思われるかなんて、なんにも気にしていないのだ。打算が一切ない。信頼以外の目的は二人の間には存在しない。年の差の友情には、他人を全く気にしないある種のガサツさを持つことが大切なのだ。


・理解出来なくてもいい。

マーティとドクは年の差もそうだが、まず根本からしてタイプの違う人間である。天才科学者とロックを愛する高校生。話が合うはずがない。実際、映画の中でドクが、1.21ジゴワット必要だとか、宇宙の法則がどうだとか、専門知識を語りだすと、マーティはほとんどシカトしている。ちゃんと聞いていないのが顔に出ているのだ。タイムマシンを作り出すほどの天才とまともな会話なんて成立しない。それをマーティ自身も分かっているのだろう。それでもマーティがこんなにも懐いているのは、マーティにとってドクが、理想の男であり尊敬すべき人間だからだ。マーティはギターの腕に覚えがあり、音楽の道に進みたいと思っているが、どうも自信が持てない。しかし、ドクは自分の才能と可能性を信じてひたすらに突き進んでいる。まさにドクの生き様は憧れるロックスターそのものなのだ。心のどこかで同じように生きられたらと望んでいる。つまり、相手の全てが理解出来なくてもいい。趣味が違えど主義が同じなら、友情に障壁はないのだ。盆栽をするおじいちゃんとネイルアートが好きな女子はきっと、美しさについて語り合えるはずである。


・単純に頻繁に会う。

マーティは朝がとても苦手なはずなのに、毎朝8時にドクの家に行っては学校に遅刻するまで発明の手伝いをしている。こんな付き合いたてのカップルのような関係が、マーティが13歳の時から続いているらしい(脚本上の設定)。「たまにしか会わなくたって友情は変わらない」という人もいるが、老人が相手では悠長なことは言ってられない。いつなにがあるかわからない。限られた時間の中でとにかく沢山の思い出を作ることをオススメする。


・相手の為なら頑なさは捨てる。

ドクが、未来の情報を持ち帰り金儲けをしようとしたマーティに気付き、激昂しするシーンがある。「タイムマシンはそんな目的で作ったんじゃない。人間性をより明確に認識し、宇宙の問題に対する答えを知るためだ!」と科学者のモラルにのっとった講釈をする。しかし、自分はマーティとその家族の未来の為にガンガン歴史を書き換える。さっきはそう言ったけど、マーティのためだもん、ポリシー捨てるぜ、と言わんばかりの態度だ。マーティも人に「チキン野郎!」と呼ばれたら必ずキレるという習性のごときポリシーがあったが、ドクのために忍耐を覚えていくのだ。時には相手を守るためなら自分を捨てる。親友のためならなんだって出来る。

それほどの熱い想いこそ友情を築く秘訣なのだ。


マーティとドクは年の差はあっても上下関係はなく、尊敬しあいながらふざけあえる親友だ。マーティが無事に未来に帰れた時、ドクは飛び上がって喜び、ドクが生きていたと知った時、マーティは走り回って喜ぶ。そんな二人のように心の底から信頼できる友人と出会うことは稀かもしれない。しかし、年が離れていても、どんな違いがあったとしても、出会う全ての人に愛情を持って接すればきっと、今までなら触れることのなかった価値観を持つ親友がみつかるはず。来年2015年は、マーティとドクがデロリアンに乗ってタイムスリップしてくる年です。

それまでに、今回ご紹介した方法をぜひ参考に、サイコーの親友を手に入れて、二人を一緒に出迎えよう!

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