こんな美味い刺身は初めて食べた!
こんな美味い刺身は初めて食べた!
ボクの祖父の口癖だ。
孫たちを含め親戚が集まる座敷で、乾杯してひと口目、刺身を食べて必ず言う。
毎回毎回、祖父は刺身の世界記録を更新する。
ボクが子供の頃は「またおじーちゃんが同じことを言ってるなぁ」、とか、「正直言って前に食べた刺身の方が美味かった」、とか思っていた。けど…なんとなく今はわかる歳になってきた気がする。
「いいかえいすけ!よく聴きなさい!おじーちゃんはむくちだ。六つの口と書いて六口だ 笑」そーだね…ほんとよく喋ってる。遺伝かもしれないと最近思うよ。
サファリパークに孫たちを連れてくけど、「ライオン元気ないな!痩せすぎだ!」と煽る 笑 何か言わずにはいれない性分なのだ。
法学部に進学したボクに「尊属殺人を知らないのか?」と迫り、もうないんだよ、と伝えても「おじーちゃんは夜な夜な六法読んだんだ!」と譲らず。
なのに数日後に電話が来て
「やっぱり英輔が正しかった。あの後図書館で調べたんだ。すまないことをした。」と謝りながら「ちゃんと勉強してるな!えらいぞ!」と激励してくれた。
なんか真っ直ぐなひとなのだ。
もう10年以上前になるけど、祖父は叙勲を頂けることになった。
ボクは、「警察官として汗をかいてやってきたことが認められて良かったね…」みたいな声を掛けたと思う。
そしたら、
「この賞状は、殉職した同僚達と一緒にもらったものだ。たまたま運良く生き残ったからじーちゃんは代表してもらったんだ。」
そー言って、関係者に御礼の手紙を書いていた。なんかその姿は、かっこよかった。あったかいなーと思った。
公務員の仕事について祖父と話していた時、
当たり前のことをしても褒められるコトはない。
やらかしたときは叩かれるかもしれない。でも、当たり前のことを当たり前にやり続けることは実は難しい。
そんな話をした記憶が甦る。
孫達と食卓を囲んで刺身を食べることも当たり前ではなくなった。
ひ孫は刺身を食べれるようになった。また世界記録更新する瞬間が楽しみだ。