夏の青色
湯船に広がる青い粒。バスソルトが好きだ。
正確には、「バスクリン」なのだが。
大人になって「ちょっと良いところ」で買ったバスソルトを使っていてもいつも思い出すのは、夏祭りで浴衣を着る前に、必ず入れられたお風呂のあの匂いだ。
浴衣なんて年に何回着るだろうか。1回着れば良いところだが、母は、昔学んだ着付けスキルを存分に発揮して私たち姉妹に毎年浴衣を着せてくれた。昔はクーラーなんてものは一般家庭になかったので、浴衣を着る前は汗を落とすためにお風呂に入れられた。なぜシャワーじゃないのか、それは、実家が冷水を風呂に入れて後から水を沸かすタイプの風呂だったからだ。しかもシャワーから出る水は、水道水なんかよりも冷たい井戸水だ。井戸水といのは真夏でも耐えられないほどの冷たさになる。なので、汗を流すためとはいえ、一度お湯を沸かして風呂に入らなければいけない。そんな時、投入されたのが、ツムラのスーッとする青いバスクリンだった。
なので私にとってツムラのバスクリンは、夏祭りを思い出させる香りだ。大人になって久しくツムラにはお世話になっていないが、どんなにオシャレなメーカーのものを使っても、あの青とあの香りを嗅ぐと一瞬で昔に戻ってしまう。手の中でゆっくり広がっていく青を見ながら、もう戻れないあの夏の花火を思い出す。