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人類にとって「抑制不能(依存症)」とは

この20~30年の間に我々の生活では、諸々の情報を拡散、取得するため掌に乗る小さなタブレットが不可欠なものとなっている。不可欠なものとは、それを拠りどころとし、それに従属していることである。

生物は「従属栄養生物」と「独立栄養生物」が存在する。「独立栄養生物」とは光合成で生存、繁殖する「植物」。「従属栄養生物」とは外部から栄養分(食物)を摂取して生存、繁殖する「動物」。もちろん我々ヒトも「従属栄養生物」で、摂取するのは雑多なモノ、つまり雑食。
そうなると、ヒトはこれまで雑食(食)に従属、依存してきたわけだ。それも食物連鎖のほぼ最下層から今日の頂点に上り詰めたのである。しかし、人類学者の長谷川真理子は次のように述べている。

「ヒトの進化史の99%において・・・糖質、脂肪がふんだんにある状況なかった~摂取を控えるシグナル~備えてない・・・ 取りすぎに対する歯止め~持っていない」

「ヒトの原点を考える」 長谷川真理子 著 東京大学出版会 2023

と。なるほど、面白い。ヒトの生存にとって「ストッパーがない」、「抑制不能」の仕組みは、必要不可欠であったということだ。つまり、ヒトは満腹になることに憧れ続けてきたのである。それもズーッと~ズーッと~つい最近まで・・・。ただ有史となって以来、その雑食物から抽出された「薬(アルコール・マリファナ・タバコ・コカイン等々)」を余分に摂取し、過剰従属状態となる「薬の依存」といった問題に向き合うことになった。その対応の術は長年見いだせないでいた。しかし、20世紀に入ってビルとボブがAAを、そして日本では松村春繁が断酒新生会を通じて、その「薬の依存」への対処法を提言、その実践を行った。それは、今日においても有効な手段だと評価されている。

また、ヒトは中世(日本では江戸時代)以後「富」を求める(商いをする)ことを希求するようになる。そして、一か八かの勝負にでることに心躍らせ、それにのめり込むようになった(世界最古の経済バブルはチューリップバブル→17世紀・オランダ)。それを「ギャンブル依存」という。この「ギャンブル依存」と先の「薬の依存」はヒト(人類)の存続を根底から脅かすものではなさそうである。

一方、ヒトは6万年前ごろから「こころ(think)」を持つようになったとされている。
そうなると、「こころ」と「こころ」のつながりを求め、かつ相手の「こころ」を探り合う中で、言葉と文字が生まれた。そこで得られる情報は大切なモノとして扱われた。そして、そんな情報をヒトは時代が進む中で、モット詳細にモット容易にと求め続けてきた。
それがこの20~30年間で瞬く間に、掌にも乗る小さなタブレットからヒトは世界中の膨大な情報と噂話を手に入れるようになった。今やそのタブレットはヒトにとって、不可欠なモノとなった。しかし反面、そんな世界中の情報と噂話に溢れるタブレットを所持することをヒトは「ネット(ゲーム)依存」といい、その対策を講じようとしている。それは約20万年前からヒトが憧れてきた「満腹・飽食」を「肥満、生活習慣病=雑食依存」だと恐れているのと同じように・・・。ヒト(人類)は何故そんなモノに従属するかである。それは生存、存続のため必要不可欠だからだ。となるとヒョットすると、それが充分に満たされ溢れるコト、それはヒト(人類)の存続を脅かすコトになるのかもしれない? よく分からない。難解である。

ただ、そんな中、これまでむしろ自閉と荒廃の道を辿るとされているヒトたち(精神障害者)に寄り添い、向き合うことに尽力してきた日本の精神医療業界は今、この「ネット(ゲーム)依存症」に熱い視線をそそいでいる。些か過熱気味の感もあるようだが~~。老婆心ながら私見だが、まずは「薬の依存症」、あるいは「ギャンブル依存症」から取り組まれてみてはと思うのだが~~如何なものか、と!?
 
参考図書:「ヒトの原点を考える」 長谷川真理子 著 東京大学出版会 2023

★補足:

「ストッパーがわずかに腸管ホルモンに存在判明
1987年遺伝子配列判明⇒グルカゴン様ペプチド1(GLP1)⇒食欲調整ストッパー
何れ、過食や諸々依存症に陥るかも明らかに?と!」

食欲の正体 日経サイエンス(SCIENTIFIC AMERICAN 日本版)2024 9

*既に、GLP1受容体作動薬は糖尿病治療薬として承認、発売されている。

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