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スーパー救急(精神科救急病棟)、その設立から役割を終えるまで

時系列で見て行こう!

1987年:精神衛生法改正され精神保健法成立
入院の基本形態は任意入院
その他の入院形態は医療保護入院、措置入院等の非自発的(強制)入院

2001年:付属池田小学校事件
◎加害者である宅間守は、事件前措置入院歴があったが、事件後立件され死刑

2002年:付属池田小学校事件をうけて精神科救急入院料が設けられる。
◎それは主に統合失調症者の急性期症状(幻覚妄想状態)への対処を目的としたもの
「入院期間3ヶ月以内、非自発的(強制)入院患者は常時6割以上、24時間365日対応、精神科領域では最も高額な入院料を保証」

◎その後の精神科救急病棟制度の評価
世界に冠たる精神科救急医療制度!!
開設者や医療従事者らは!スーパー救急と自賛

2014年12月17日付朝日新聞「精神科病院を考える 下」
「全国で5万~10万床の緊急用の病床は必要ですが、それ以外は国が強制的に減らすぐらいのこと~。」内閣府障害者政策委員会・上野秀樹委員(精神科医)

◎まさに、精神科救急病棟にあらずんば精神科医療機関にあらずといった勢いであった。よって、精神科救急病棟を有しない精神科病院には、日曜、祝日における輪番救急の対応が課せられた。そして平日夜間もその対応が求められ、一部自治体では実施している。
さらに通常夜間無人の精神科クリニックにおいても夜間輪番を求める動きがあった。

2021年大阪ビル放火事件以後、その精神科クリニックの夜間輪番の要請は影を潜める。
◎しかし一方で、この数年多量服薬、リストカット等のいわゆる「生きたくないけど、死にたくない」といったケースの救急搬送が一般救急医療領域の大きな負担となり社会問題となっている。

2022年3月22日 西日本新聞
精神科の強制入院 縮小
「医療保護入院について、~厚生労働省は21日までに、制度の将来的な廃止も視野に入れ、縮小する方向で検討に入った。~」 

2023年10月16日 日本精神科救急学会 声明文
「病棟は高規格病棟である。~人権擁護を基調としており、 非自発的入院~許容されない。」・・・「~ケア対象に一定の重症~~を求める~~~入院形態を代用する考えは時代遅れ

2024年8月7日厚生労働省検討会 CBニュース
『施設基準(精神科救急)満たすための~本来は任意入院なのに
医療保護(強制)入院の存在明らかに!~「モラルハザード」か?』
翌8月8日CBニュース・ネット上から削除

2024年11⽉22⽇ CBニュース
役割終えた「スーパー救急」 軸⾜は「精神科地ケア」に 岐路に⽴つ精神医療 これからの経営思考(2)』
「~20世紀の終わりごろから全国で精神科救急医療システムの整備が進み、その旗振り役として精神科救急入院料(現精神科救急急性期医療入院料、いわゆる「スーパー救急病棟」)に高い診療報酬が設定された。これにより全国にスーパー救急病棟が整備されたが、・・・・・・精神科救急の患者が減少している。スーパー救急病棟の整備は歴史的役割を終えた~~これからは精神疾患を有する⼈の地域移⾏・地域定着に向けた重点的な支援を提供する「精神科地域包括ケア病棟」(精神科地ケア病棟)の整備が急務である。」
⽯川県⽴こころの病院院長、⽇本公的病院精神科協会会長 北村立

◎なるほど!
だが、20世紀末精神科救急医療システムの整備を行う中、すでに潮流となっていた「精神科疾病構造の変化」に関心を持っておくべきではなかったか!?(図表1・2)
当初から私はズーッと、いわゆる「スーパー救急病棟」が精神科救急医療システムの旗振り役、役割を担っていたと露ほども感じたことはなかった。

【図表1】
西脇病院新規受診者500名の移り変わり
【図表2】
精神疾患加え「五大疾病」に 疾病別の患者数

2024年11月6日 CBニュース
「厚生労働省は6日、2040年ごろを想定した新たな地域医療構想に精神医療を位置付ける場合の課題などを議論するプロジェクトチームの初会合を開いた」

◎私ごとだが、1982年3月に父の逝去に伴い精神科病院を継承、今日に至る昭和の精神科医である。これまで国の方針に従い、約50年近くで、利用病床300床超を実働病床180床程度に減床。年間に入退院は約500人前後、内任意入院は概ね90%。もちろん精神科病院である以上、非自発的入院(医療保護・措置入院)も受け入れている。
加えて例年、年間を通して救急輪番日の入院受入れ件数は県内ダントツ一位と認識。それも多くが任意入院。
また、これも当たり前だが精神症状に伴う問題行動に対しては、必要と判断したら隔離、身体拘束も法の手続きを踏んで、躊躇なく行っている。
何故、病床削減出来たか!

  1. 多くの入院患者を管理するのがいやだったから。

  2. 同世代(昭和の精神科医)が取り組んでいた「社会復帰、開放化」とやらには、一切興味と関心を持たなかった。

  3. 精神科疾病構造の変化には目聡かった。

ただそれだけだ!
確かに、精神科救急入院料を取得しておらず、病院経営はズーッと綱渡り状態を継続中。
だが、地域医療のど真ん中で精神医療をリードしている、と自負している。

◎やっと分かったんだね!よかった!でも次の目途が2040年とは遅すぎませんか! 
これまで「ブルシット ジョブ (Bullshit jobs)」だったよね!マァいいか!

◎今、感情労働の増加(図表3)に伴い、多様な精神疾患、とくに2022年6月9日「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」(厚生労働省)の報告書にある「精神保健(メンタルヘルス)上の課題を抱えた方」、つまり「労働を強く意識して罹る精神疾患」は増加の一途。彼らとの治療の進め方は、任意契約、任意入院が常道である。しかし、この20年間、精神科医、精神医療従事者は「労働を強く意識して罹る精神疾患」に対しての任意契約、任意入院で治療関係を築く術を身に付けてこなかった。だが、「新たな地域医療構想に精神医療を位置付ける」上で、とても重要なことだと思うのだが・・・如何なさるのかな!?

【図表3】
WORK 働き方全史「働きすぎる種」ホモ・サピエンスの誕生
ジェイムス・スーズマン著 2024 東洋経済

解説①

  • 図表1:当院における新規受診者の疾病構造の変化・・・20世紀末以降は他の精神科医療機関(HP・年報等の資料より確認)においても統合失調症の新規受診者減は顕著

  • 図表2:精神疾患が5つの重要疾患の一つとなったのは2013年度からだが・・・

  • 図表3:労働環境の推移と精神科疾病構造の変化とは相関がありそうだ・・・この先どうなるか?

解説②

  • 付属池田小学校事件:2001年6月8日、大阪教育大学付属池田小学校で発生した無差別殺傷事件

  • 大阪ビル放火事件:2021年12月17日、北新地ビル4階(精神科クリニック)で発生した放火殺人事件

解説③

「労働を強く意識して罹る精神疾患」とは以下の対策等の対象者
 ・過労死等防止対策 ・依存症対策、・自殺予防対策、
 ・孤独・孤立対策、・災害後メンタルケア・PTSAD
 ・DV防止対策・ハラスメント対策 ・ヤングケアラー対策
 ・大人の発達障害・アダルトチルドレン
 ・妊婦のメンタルヘルス相談支援体制・シングルマザー・育児支援等
                いわゆる良くも悪くも高機能精神疾患

◎これまでのそんな課題、問題点をnoteに掲載している。ご一読、あるいは再読いただければ幸いである。

これからの精神科医に求めること
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どうする精神保健指定医① ・どうする精神保健指定医②
「精神科の強制入院の課題」とは、精神科医が任意入院に努め、その腕をみがくこと
小さな記事だが「氷山の一角」
私見としてのあるべき精神科救急について

他諸々…
よろしければ(ニーケンnote)から検索の上、のぞいて頂きたい


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