神戸にはパンがよく似合う
神戸北野辺りには美味しいベーカリーがたくさんあります。
私はハード系が好きで小麦の匂いのする細長いにバケットに
スモークサーモンやクリームチーズ、厚切りのベーコンに目玉焼きなどをのせて食べます。一緒に挟むのはベビーリーフ。色も大きさも丁度いい!
濃い目のダブルエスプレッソとそのオープンサンドは週に一度の土曜日の
ブランチによく作ります。
バケットの歯ごたえや味もそれぞれのお店で違うのでニケとの散歩で見つけるのが楽しみの一つです。
そんなしゃれたお店が多い中私のとっておきのお店があります。
昔ながらのジャムパンやクリームパンを売っているぱんやさんという響きがピッタリでご夫婦はお二人とも70歳をゆうに超えておられますが、毎朝3時に起きてパンを焼くそうです。
近くには高校や大学があり、女子高生で狭い店はいつも満員。
娘、いや孫のようなお客さんを静かに椅子に座って見守っておられます。
この辺りでは人気のぱんやさんで、この店を知らない人はいないでしょう。
私は叔母が結婚してこの辺りに住んでいたので、遊びに来た時はかならず帰りに寄りました。
クリームパンにするかジャムにするか迷うのですが結局決まってイチゴジャムぱん。野球のグローブみたいな形ですが中にはたっぷりの甘いジャムが入っています。神戸のというとお洒落なパン屋さんを思い浮かべますが、こんな町中のお店も貴重です。
今のようなふわふわの食パンではなくて、ちょっと固め、というよりはしっかりしていますが、店主はどこよりもおいしいと自慢します。
お店の裏の厨房では奥さんが今では普通ですがおかずパンを娘さんと一緒に作っています。お昼までにはいつも完売!素朴なおかずパンはなんだか懐かしくて昭和の香りがします。
若い時二人の娘の一人を難病で亡くされたご夫婦はその女学生を見守るも優しい親御さんのまなざしです。
悲しみを忘れるためにも毎日懸命に働いたそうです。つらい思いは学生さんの明るい声を聞くことで癒されたとか…。
美味しいパンを作る。それは簡単ではありません。バスに乗って買いに来る常連客はみんな子供のころからここの味が大好きです。
たまに無性に食べたくなるとか…。
昨日久しぶりにお邪魔しました。すっかり髪が白くなって痩せたご亭主は深く刻まれたしわのお顔も当時の優しい面影は一緒です。
もうそろそろ引退と思いつつもこの子たちが卒業するまでと毎年思いながら一年を超しておられるそうです。「もうパンをオーブンに入れるのも重労働になって来たわー。」と少し寂し気に笑いますが、傍から奥様が、「その時はその時!」と三角巾がよく似合う姿も往時のままのです。
私はやっぱりジャムぱん。従兄と半分ずつした当時を思い出しました。
子供たちはこのぱんやさんを知りません。私だけの大切な場所として大事にしておきます。
お土産用のカレーパンとフレンチトーストを買って、ガラガラと引き戸を開けると温かい春の風が入ってきました。「おじさん、お体を大切になさってください!」とあいさつして遠くに見える海に目を細めて坂を下っていきました。
今朝は昨日おじさんがオマケ!と言ってくれた4枚切りの食パンを頂いています。
今日もいい日にしましょう!
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