ジェットコースター人生 その25[1]
今までに味わったことのない気持ちよさです。色でいえばきれいなピンク色の雲の中にふわふわ浮いている感じ。
なんの心配もありません。なんの気がかりなこともありません。きっと私は、このまま少し待っていたら主人が迎えに来るのだろうと疑いませんでした。そう思ったとたん、大きな大きな渦がゆっくりと回り始めました。音もなく静かです。トンネル⁈。少し先が右側に曲がってどこかに繋がっているようです。「あそこからきっと,,,」
しばらく待っていました。誰かが呼ぶ声が聞こえました。「気が付きましたか?」医師の声でした。
その朝はなんとなく体が重く瞼も腫れぼったかったのを覚えています。首の下鎖骨の隙間にぽつぽつと湿疹が出ています。大きくて赤くはれています。疲れると蕁麻疹が出ることがあったので、常備薬を飲みました。いつもはすぐに引くのですが、その時はますますだるくなってきました。
例の気合で家を出ると、駅までの10分間が何時間にも思えて、行きかう人が、異様な目ですれ違います。きっと腫れているんだろう。
身体が鉄の靴を履いてるようで一歩が踏み出せません。ようやく駅近くの皮膚科に飛び込みました。
混雑している待合室で我慢ができず、診察の順番を尋ねたところ老医師は顔を見るなりベットで休んでいるように言いました。
どうにか横になると、ますます、体が硬直してきて、動きません。
「車が来ましたよ。行きましょう」⁇
ベットから起き上がったとたん、目の前がまっ黄色で何も見えません。呼吸もしずらく、両腕を抱えられて、乗り込んだ車は大きな病院に着きました。
移動ベットは診察を待つ大勢の人の間を走っていきます。
意識ははっきりしているものの体は動かない。せわしなく周りでいろんな声が聞こえます。「脈が薄い」「血圧低下」「心拍も弱くなってます」聞こえる声は他人のことを言っているようで、不思議な気持ちのまま意識はかすんでいきました。
「やっぱり私は死んでいくんだ。」