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ジェットコースター人生 その52-4
バスはぬかるんだ原っぱに止められました。観光バスが何十台もやってきて日本のように規律正しく駐車しないのであっち向いたりこっち向いたりのいい加減さです。
先に入ったバスがなかなか出られないのはこの状態だからとすぐに想像がつきます。クラクションがすさまじく叫んでいます。
カラフルなバスのボディはそのぬかるんだ原っぱに一面花が咲いたかのような華やかさです。
その上降りてくるいろんな国の人たちのテンションも上がりっぱなしなので雨上がりの肌寒さも忘れるくらいでした。
スタジアムまでは10分ぐらい歩きました。チケットの座席がばらばらだったのでコーチはゴール脇、母親2人はど真ん中の中断。高校生2人は一番前の侍ブルーのベンチ裏。元スタッフでチケットをゲットしてくれた彼と息子は、私たちの真正面当たり。とそのゲートに向かって別れました。集合は一本の大きな木。
荷物検査がありそこを通過すると急に広がるスタジアム。日本の国旗、横断幕、選手の個人の名前のボードなどすぐに目に入りました。
スタジアム全体がうなっています。席に着くと周りは不思議そうに私たちを見ています。私たちに拍手する若者もいて「すみません。初めてお邪魔します。」みたいな心地悪さでした。日本とジャマイカどちらも初出場ですから人気もそれほどではないと思っていましたが、立錐の余地もありません。
上からも下からも横からも「どこから来たの?」「日本のスーパースターは誰?」「出場出来て良かったね!」矢継ぎ早に話しかけてきます。
この渦の中のどこかで同じようなことをそれぞれが聞かれているんだろうなあと思うとおかしくなりました。
いよいよあの入場曲が響きました。どよめきと唸り声が一つになって心臓が痛くなるくらいでした。君が代が静かに流れてくると泣きたくなりました。
善戦はしたもののゴンの渾身のシュートの1点にとどまり1-2の惜敗でワールドカップの夏は終わりました。
あれだけ待ちに待ったワールドカップも終わってみれば一瞬に感じるほどあっという間でした。
祭りの後の寂しさ。寂寥感をそれぞれ抱えながら帰路の車内はとても静かでした。