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ニケと歩けば cent douze

こんなレンガ塀のアイビーを見ると「最後のひと葉」を思い出します。

オー・ヘンリーの短編。画家の卵,二人の女性の一人は流行病の肺炎になってベッドの上で窓の外のレンガの壁を見るだけ。ツタに残っている葉っぱの数をかぞえる毎日です。「最後の一葉が落ちると私も…。」

それを知った階下に住む売れない画家の老人が嵐の中、一枚のツタの葉を書いて、彼女の生きる力を呼び戻しました。引き換えにずぶ濡れで部屋に帰ってきた老人は肺炎になって亡くなってしまうというお話です。

命がけで若い女性に生きる気力をプレゼントした老人の何とも切ない温かい気持ち。

私は命がけで何かを守ることが出来るだろうか、そんな大それたことはできなくても温かい心はあるのだろうかと…。

この季節になるとこの短編がよみがえります。

小学生のころ教科書で読んだ時の気持ちは忘れられません。

お爺さんっこだった私は自分の祖父と重なって胸が熱くなりました。

急いで帰って祖父の部屋をのぞきましたが、いつものように私の好きなパイプの煙をくゆらして何やら読書中でした。

「なあんだ大丈夫だった」売れない画家と祖父を繋ぐものは老人ということしかありません。

でもその時「よかったー」と思ったのです。

その祖父もそれから数年後に逝き今から思うと誰しも永遠の命はないということを学習したように思います。

火のついていないパイプをそーっと吸って母に見つかりこっぴどく叱られたのも、遠い昔のことです。

命を繋ぐことは当たり前のように行われていますが、これまでも、これからもどこまでも続いてほしいと思います。


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