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ヒトは意味のない数字に踊らされがちである

 この動画で紹介されている実験は次の通りです。

1. あるゲームをやってもらう
2. グループAの人には、ゲームオーバーになると次の文章が表示される
「うまくいきませんでした。もう一度やってみましょう」
3. グループBの人には、ゲームオーバーになると別の文章が表示される
「うまくいきませんでした。5点の減点です。残りの点数は195点です。もう一度やってみましょう」

 誰がどのグループに振り分けられるかは運次第(ランダム)でした。

 さて、5万人にこのゲームをやってもらったところ(動画の流れ的に、正確にはのべ5万人なのかもしれない)、興味深い結果となりました。

1. ゲームを攻略できた人数の割合は、グループAでは68%であったのに対し、グループBでは52%しかなかった(統計的な有意差あり)
2. ゲームを攻略するまでに要した試行回数(チャレンジした回数)は、グループAでは12回であったのに対し、グループBでは5回だけであった

 以上から推論できるのは、「グループAの人たちは、グループBの人たちよりもたくさんチャレンジしたので、結果的にゲームをより攻略できた」ということになるようです。

 動画の趣旨は「何を失敗とするか」の思考の枠組みを変えよう、という話なんですが、僕はむしろこの点数システムに興味を持ちました。

 というのも、どちらのグループでも、ゲームを攻略できなかった時に表示される文章に「うまくいきませんでした。(That didn’t work.)」という文言が入っている時点で、どちらのグループの人も、ある種の敗北感や挫折感を味わってはいたはずだと思ったからです。

   †   †

 少し話は変わるのですが、文章を投稿できるウェブサイトとしては、Note以外にも色々あります。
 その中のひとつに「NOVEL DAYS」というプラットフォームがあります。

 NOVEL DAYSでは、作品の人気を表す指標の一つに「★(お気に入り)」があり、これはNoteで言う「♥(スキ)」に類似しています。読者が一回だけ、作品に対して「★」をつけることができるのです。

 ところが、★とスキには決定的な差があります。

 それは、最初から★が二つ与えられていること。

「は?」と思いました。
 が、面白いことに、NOVEL DAYSの公式ページのどこを見ても、★がお気に入りだとは明記されていない!

 どうやら、厳密にはこういうことのようなのです。

「読者が作品をお気に入り登録すると、作品に★が一つ与えられる」
「それとは別に、作品には最初から★が二つ与えられている」

 つまり……。

「★の数 ≠お気に入りの数」であり、正しくは、
「★の数 =(お気に入りの数+2)」である。

 トリックにもほどがある……!

   †   †

 ここからはただの推測でしかないのですが……。

 NOVEL DAYSの運営は、おそらくこう考えたのでしょう。

「お気に入りがゼロだと投稿者のモチベーションが下がってしまう」

 至極、まっとうな判断だと思います。

 皆さんも、Noteに投稿した記事に「スキ」が一つも付かなかったら落ち込みますよね。
 だから、最初から作品に「スキ」を二つ与えてしまおう――。

 逆転の発想だ……!

 それが根本的な解決になっていないのはそうなのですが、同時にこれは非常に面白い発想だとも思いました。

 というのも、投稿した段階で自動的に付与される「スキ」と、「自己紹介|はじめてのnote」を投稿した時に、Note初心者めがけて投げつけられる「スキ」に、どれだけの差があるでしょうか?

 あるNoterは、自分の有料記事を知ってもらいたいがために、タイムラインで目に付いた作品すべてに「スキ」をする。
 別の人は、フォロワーを増やすために「#自己紹介」のタグを巡回し、片っ端から「スキ」をする。

 それならば、いっそのこと運営が全投稿に「スキ」をしたっていい。
 あとは、手動でするのか自動なのかの違いでしかない。

   †   †

 そこで今回のタイトルに行きつくわけです。

「ヒトは意味のない数字に踊らされがちである」

 どうでしょうか。
 内容を読んでくださっている読者さんからの「スキ」のほうが、嬉しいに決まってはいます。
 でも、「スキ」が0であるよりかは、たとえ読まれていなくても――機械的にタップされているのが薄々分かっていても――「スキ」がいくつかあったほうが安心する。
 ゼロよりかは心が落ち着きませんか?

   †   †

 YouTuber界隈では「再生回数」が非常に重要です。
 ところが、これも変動的な数字であり、時々減ることがあるようです。

 だから、とある動画投稿者はこう言っていました。

「結局信じられるのは、広告料だけだ」

 つまりは現金です。
 あまりにも現金!

 銀行口座に振り込まれたお金のみが「意味のある数字」。
 それは美味しい食べ物と交換可能で、映画館に入るために必要で、友達にプレゼントを贈ることを可能とする「数字」です。

 分かっていても、気にはなる! という気持ちではありますけれど、そこをなんとか、世の中の大半を「ただの数字だ!」で割り切れるようになれたらいいなあと、思ったのでした。

   †   †

 最後までお読みくださってありがとうございました!

 逆に言うと、肯定的なコメントをすることがいかに大切かという話にもなってくるのかな~と思ったので、心と時間に余裕がある時は、できるだけコメントするようにがんばろう~! と思ったりもしました。

 あと、読まずに「スキ」をする行為を貶めるつもりもありません。その「スキ」のおかげで何かのアルゴリズムに乗っかりやすくなって、よりたくさんの人の目に届くかもしれないし、そもそも「スキ」をつけてくれるだけでめちゃくちゃありがたいことに、変わりはないのだから。

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ニカ
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