お勉強462:JCOG1109! NExT試験
JCOG1109 NExT 試験
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)00745-1/abstract
FLOTで有名な先生もコメント
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)01084-5/abstract
(私の中での理解での背景として)
JCOG9906:
によって日本の標準治療は
術後FP→術前FPになった。
ただ、このインパクトは日本では絶大であったが、
海外ではいま二つ? ぐらいに扱われてしまった。
端的に言えば海外の標準治療は
(当時)術前CRTだったからである。
CROSS試験やNEOCRTEC、
とくにCROSS試験は10年フォローアップも出て
海外ではかなりsolidなデータととらえられており、
術前治療としてケモvs.ケモラジがはっきりと
行われていない中だが
pCR率などの良さからケモ<ケモラジで「なんとなく」
世界は流れてきていた。
頭頸部も含め扁平上皮癌の化学療法は
(ある意味今も、だが)FPぐらいしかなかったのだが
(海外ではCBDCA+PTXも)頭頚部で
TPF(DOC+CDDP+FP)が導入療法としてええやん、という
話が海外から出始め、日本にも導入され始めた。
※食道がんではDCFの呼び名のほうが一般的
国癌の先生たちは使いこなしペーパー化している
今回のJCOG1109でもこの論文が元なのか、
70-70-750のDCFが使用されている。
(3W回しというなかなかハードレジメンではある)
※予防的抗生剤内服(FQ系)と
ハイリスク群(高齢者・栄養不良者)の
G-CSFの使用がかなりポイントのよう。
前置きはこのあたりにして、
漏れ聞く話としてはサンプルサイズのことも考え
術前DCF vs. 術前FP のデザインも考慮されたらしいが、
世界的インパクトのある研究にするためには
術前CRTも入れるべし!(英断!)
という話になり、
術前DCF vs. 術前FP
術前CRT vs. 術前FP
どっちも試験レジメンが勝つなら DCFvsCRTもする
というデザインになったよう。
ちなみに術前FPは (800-80) 3W回し
術前CRT はJCOG0909チックに 41.4/23Fr
FP併用(1000‐75)4W回し
照射野は腹部は行わなかったよう。(吻合不全を考慮して)
導入療法後2か月以内に手術
サプリによれば1‐2/3領域廓清 35%/65% 程度
D2/3廓清で95%
開胸:胸腔鏡は1:1程度
蓋を開けてみれば、
最初は501人を6.5年で集める計画で始めたが、
そこは鉄の結束JCOG食道がんグループ、なんと
症例集積が予想以上に速く、最終的に600人を集めるように変更。
パワーが70%→80%に。
結局
術前CF:199名
術前DCF:202名
術前CRT:200名
が登録
59%が中部、下部胸部食道がん
68%がT3(一応切除可能であろう、というのが今回の対象群)
29%がStageII
術前治療完遂率は
術前CF:84%
術前DCF:85%
術前CRT:89%
で、肝心のOSだが中央観察期間50.7ヵ月で
術前CF/DCF/CRTで3年生存率62.6・72・1・68.3%であった
生存期間中央値は 5.6年/NR/7年と
OSのHRは
術前DCF vs. 術前FP HR:0.68 95%CI(0.5-0.92) 有意差あり
術前CRT vs. 術前FP HR:0.84 95%CI(0.63-1.12) 有意差なし
一応(本来の計画では行われないはずだが)post-hocで
術前DCF vs. 術前CRTが行われており、
有意差はないがHR:0.8 95%CI(0.59-1.10)
💮術前DCFが(世界的)標準治療!! として確立 👏
ちなみに海外ではFLOT
(DOC+5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)
レジメンが同様に「強い化学療法」として登場し、
ASCO2024でESOPECがプレナリーで発表された。
https://twitter.com/KrishanJethwa/status/1797337064683274680
https://dailynews.ascopubs.org/do/asco24-first-look-dr-julie-gralow-esopec
この試験でも(強力な)化学療法>CRTが示され
時代は大きく転換していきそうです。
<放射線治療医の視点から以下細々>
・pCR率は術前CRT群が一番高い(FP/DCF/CRTで2/19.8/38.5)
→モダリティーごとでpCR率を比較するのは実は×であった。
というのは重要知見
・Utに限るとCRT群が一番成績が良い
→心臓線量や肺線量が少ない・手術手技が難しいというのが
原因か。Ut症例は術前CRTのいい使いどころなのかも
Utから下に降りていくほど、HRが悪くなっていくので
心肺線量は確実に悪さをしているだろう
・再発形式としてDCFは局所再発が多い(再発例の43%)
→日本の手術をもってしても進行食道がんはしぶとい
ただ、サルベージのCRT/RTがかなり効いているのでは?
との考察あり
ちなみにDCF+RTのサルベージの報告が
ASCO24で日本からあり
https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/234208
DCF(35-40-400)で5年PFSが56.2% PFS中央値は62ヵ月!!
放射線は全体にあてると有害事象が強いので
サルベージにとっておく戦略がこれからの主流になるか…
ちなみに全再発数がほぼ同じ術前CRT群は
遠隔転移が再発例の77%
CFでは遠隔転移を制御しきれない…
CROSS試験でもCRTと手術のみで
遠隔転移は変わらなかったらしい
・T3brやT4でDCFとCRTのどちらが良いか、というのは
なかなか難しそう。局所制御のことも考えると術前CRT有利?
・死亡原因が食道がんの比率は術前CRTが一番少なめではある。
しかし、他病死が群を抜いて多い。 特に肺・感染症が多い
→心臓がもっと多いのかと思ったらそうでもなかった。
肺線量も気にしなくてはいけないのかもしれない…
食道の手術をしているのも、たぶんマイナスポイント
・年齢中央値は65歳、上限は75歳であったよう。
→高齢者の標準治療は術前FPということになるか?
術前CRTも選択肢の一つではあると思うが…
(FOLFOX-RTの成績は?)
<今後の方向性?>
・一応術後ニボが入ってきているので、
術前CRTの成績はも少し上がっている可能性
→手術も術前ICI+ケモが肺がん同様期待される?
・術前DCFやってT1bN0になったらCRTに切り替えるという
試験、CROC試験もあるとのこと。
https://report.gi-cancer.net/beirinsyo2021/4027/index.html
でもJCOG0909試験より食道温存率は悪い…
https://report.gi-cancer.net/beirinsyo2018/report/4051/
食道温存を安全に、よりよくできるレジメンは必要
cfDNAのことなどがコメンタリーにはあり。
・陽子線治療は肺線量・心臓線量も下げれるし、
かなり期待。(VMATはどうかは何とも…)
ENIにこだわらず、IFRTにする、というのは
冒険だが、ある意味一つの選択肢なのかもしれない
(JCOG0303もそうだったし)
・逆に状態の悪い人をどうしていくかも今後の課題
・術前DCFの管理方法をしっかり広めていく必要がある
G-CSF,予防的抗生剤治療をしてもFNが10%程度
あるので、基幹病院から家が遠い人などは
近い病院との連携が必要と思われる
医師主導治験、3armの試験デザイン
患者の集積を可能にするグループの結束力
すべてが結実した素晴らしい結果に
関係者の皆様、おめでとうございます。