お勉強293:新たなスタイルの直腸温存療法
T1-T3abNM0の早期直腸がんの直腸温存療法として、
RTはしないで3カ月のmFOLFOX6かCAPOXを
行い、経肛門的局所切除でypT0/1cN0ならば直腸温存、TME回避
というかなり大胆なプロトコール。
対象はwell-moderately differentiated rectal adenocarcinomaで
cT1-T3ab cN M0の下部から中部直腸がん
(あくまで経肛門的にとれると判断された場合のみ)
と限定的なステージではある。
骨盤MRI頸部から骨盤までのCTは必須
PS=0-1 臓器機能良好が対象。
ケモ終了後2~3週後にMRIと肛門鏡
プロトコール内なら経肛門的切除へ。
進行もしくはレスポンス無しなら
進行度によってTMEかネオアジュバントCRTへ
経肛門的手術はケモ後2~6週後
1㎝以上のマージンを取った。
(ビデオテストみたいなのを行った
経験豊富な医師がやる、とかいてある)
局所治療後のTステージを評価。
ypT0/cN0もしくはypT1でも予後不良因子がないものを
経過観察とした。
ypT1で予後不良因子あり、ypT2/3 cN+はTME推奨。
予後不良因子=低分化腺癌・脈管侵襲・断端近接(1㎜以下)
フォローは手術後3年まで
6カ月おきに肛門鏡、MRI、CEA測定
1年おきに胸腹骨盤部CT
58人が患者として登録
6サイクルの mFOLFOX6 か4サイクルの CAPOX
約9割が完遂
経肛門的手術した56例のうち93%がR0切除。
2例経肛門的手術できなかった。
1例はTME
もう一例はCRTして経肛門的手術へ。
57%がypT0/1cN0を達成
cTStageはあまり奏功には影響しなかったよう。
残りの23人はTME推奨。13人は
患者希望もあり、TMEせず。
(ypT1 ハイリスク1名、ypT2 11名 ypT3 1名)
結局79%(46/58)が温存に回る
手術を10人でしたが、うち7例は残存無し
N+は2例
1/2年局所領域再発無し生存は98%/90%
(観察期間中央値15.4ヶ月で2人局所領域再発
うち一例はTME拒否症例:ypT2)
遠隔転移や死亡例はなし。
患者のQOLは術前を100%とすると
手術前89% 半年後85% 一年後86%
ベースラインのLARSのmajorは10%。
6か月後は22%と増えたが、一年後には14%と良好に保たれた
図を見る限り、QOL/LARSの中央値はほとんど悪化していない。
筆者たちはRTを加えなくてもcN-で
高~中分化腺癌、しっかりとしたMRIの検査を
したうえで、症例を選べば
経肛門的手術の発展もあり、
術前ケモ→経肛門的手術は
(下部の)直腸がんには合併症も少なく
機能的も極めて良好ないい手段ではと述べている。
「自主的に」温存に回った人も、比較的予後が良く
TMEを行った人も7例はpCRということで、
早期の直腸温存療法としては
かなり期待できるアプローチ!
あとからCRTを足す、というのもTNTとして織り込み済みなら
ありなわけで、結構良い戦略と思います。
進行期でW&Wと言っているので、当然といえば当然ですが
こういう流れは出てくるでしょうね。
早期の直腸癌はまず初手に手術しない時代が普通にやってくるのでしょう。