お勉強488:乳房温存照射超長期フォロー

https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(24)00347-4/abstract


かなーり古いスコットランドの
乳房温存後、照射するかしないかの試験を
超長期のフォローで見ている。
(観察期間中央値17.5年!)

スコットランドの14病院で行われたランダム化比較試験
70歳未満の早期乳がん患者(腫瘍4cm以下)が対象
乳房温存手術後、(肉眼マージン1㎝が基本のよう)
エストロゲン受容体(ER)状態に応じた全身療法を実施
(ER+ならタモキシフェン ER-ならCMF)

患者を放射線療法群と非放射線療法群に1:1でランダム割り付け
照射は50Gy/20-25Fr 
Boostもしているよう(電子線 or Irインプラント)
腋窩廓清していなかったら鎖骨上窩まで照射と。
主要評価項目は同側乳房腫瘍再発と全生存率
1985/4~1991/10まで589人が登録され、
585人が解析対象

観察期間中央値17.5年のフォローアップ

局所再発率:RT群16%・RT無し群36%
(HR 0.39, 95%CI 0.28-0.55, p<0.0001)
局所再発の差は最初の10年間のみ有意
(最初の10年は HR0.24 95%CI 0.15-0.38, p<0.0001)
(10年以降はHR 0.98, 95%CI 0.54-1.79, p=0.95)

30年全生存率に有意差なし
(RT群23.7% vs RTなし群27.5%, HR 1.08, 95%CI 0.89-1.30, p=0.43)
MSTはRT群18.7年 vs RTなし群19.2年 

乳がん死:RTなし群102名(46%)、RT群82名(37%) (p=0.054)
他がん死:RTなし群24名(11%)、RT群44名(20%) (p=0.012)
(特に特別何癌が多い、というのは群間に差なし)
心血管死:RTなし群14名(11%)、RT群11名(5%) (p=0.53)
(左右で差なし)

放射線療法は最初の10年間で局所再発を有意に減少させるが、
その後の効果は限定的
→EBCTCGとか他の研究でもそうだったらしい

全生存率への有意な影響は見られなかった

放射線療法の効果が時間依存的なのでは?という考察
患者との放射線療法のメリット・デメリットを考慮せよ
といういつもの結論

照射は初めにあった乳がんの局所再発の芽
を潰すことによる局所予防しかできないのかも

他のアジュバント(薬剤)も結構10年超の長期の
エビデンスは乏しいらしい

限界点として
40年前の治療法
毒性データの欠如(もともと調べる試験ではなかったよう)
20年以降のイベント数の少なさも含めパワー不足の可能性


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