お勉強505:早期乳がん腋窩問題さらに…
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/202412/586936.html
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2412063
腋窩廓清問題、さらにさらに。
INSEMIA試験
腋窩リンパ節生検を省略した場合の生存率が、
SLNBを行った場合と比較して非劣性であるかを評価。
ドイツ・オーストリア151施設共同ランダム化試験
・18歳以上
・乳房温存療法予定(温存手術+全乳房RT)
・cT1/2(腫瘍径5cm以下)
・cN0(画像所見含む。USで怪しければ陰性生検要)
(DCISは入っていない)
5154人(ITT)が登録
SLNBを行わない群(非SLNB群)
SLNBを行う群(SLNB群)に
1:4で割り付け
今回発表されたのはSNLB群と非SNLB群の
iDFS:invasive disease free survival
(局所・腋窩・遠隔の浸潤再発/死亡/反対側乳がん/乳がん以外のがん)
非劣勢試験で、
解析はper-protocol集団で実施
非劣性は、Cox比例ハザードモデルによるハザード比95%信頼区間上限で1.271と設定された。
per-protocol集団は4858人
非SLNB群には962人、
SLNB群には3896人
SLNB群で
・センチネルリンパ節が検出されなかったのは38人、
・センチネルリンパ節陰性が3275人
※センチネル陽性は15%(579人)
・センチネルリンパ節微小転移が認められたのは133人(3.5%)
・陽性リンパ節数が1~3個だったのは438人(11.4%)、
・陽性リンパ節数が4個以上だったのは8人(0.2%)
※T1<T2でリンパ節転移が多かったと
※当然のことながら、アジュバント化学療法を受ける確率も
SLNB群の方が高かった(とはいっても10.4%vs.12.9%)
年齢中央値は両群ともに62歳で、50歳未満は10%程度
臨床腫瘍径が2cm以下(cT1)だったのは
非SLNB群が90.5%、
SLNB群が90.4%
実際のところ
pT1は80.4%/79.1%
c→p T2が
非SLNB群9.5%→18.4%
SLNB群9.6%→19.4%
※結構過小評価している… プロトコールまで読んでいないが
MRIまではやってなさげな雰囲気(エコー主体?)
G1が
非SLNB群が38.7%、
SLNB群が37.6%、
G2が
非SLNB群が57.4%、
SLNB群が58.8%、
G3は非SLNB群が3.9%、
SLNB群が3.6%。
HR陽性がほとんどで
非SLNB群が98.4%、
SLNB群が98.5%
HER2も陰性例がほとんどで
95.4%と96.7%だった。
観察期間中央値73.6カ月で
per-protocol集団における
非SLNB群の5年iDFS率は91.9%、
SLNB群の5年iDFS率は91.7%、ハザード比は0.91
(95%信頼区間:0.73-1.14)
→非劣勢証明(ITTでも結果はほぼ一緒)
ただし、iDFSのサブグループ解析でG1/2の患者ではハザード比が0.891(95%信頼区間:0.710-1.12)
G3の患者では1.22(95%信頼区間:0.545-2.72)と高かった。
(Nが少ないがG3は慎重さ要?)
もう一つ、SLNB群が有利かもしれない群が
腫瘍径1cm以下の群
ハザード比1.34(95%信頼区間:0.92-1.95)
これは結構数もあるのに、(N=1708)謎。
iDFSイベントとして
浸潤性局所再発が
非SLNB群で2.1%
SLNB群で1.6%
浸潤性対側乳癌がそれぞれ1.1%と0.6%、
遠隔再発はともに2.6%/2.8%に見られた。
腋窩再発率は、
非SLNB群で1.0%、SLNB群で0.4%
死亡は
非SLNB群で1.7%、SLNB群で2.5%
非SLNB群では、
リンパ浮腫(1.8% vs. 5.7%)や
腕の動きの制限、(2.0%/3.5%)
痛みの発生(2.0%/4.2%)が有意に少ない。
OSは全体では非SLNB群が良い傾向ではあったと
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe2414899
ではこのINSEMIAやSOUNDについて語っている
SOUND試験は→
他にも
BOOG2013-08とかNAUTILUSなる試験も控えているそう
前提条件として、そもそも早期で
低リスクの乳がんに「そもそもセンチネルするか?」
というスタンスなのはあるようだ。
(「センチネル」リンパ節を廓清することの
ハードエンドポイント改善はないため)
そういったところで、cN(-)で閉経後の
HR+/HER2-がセンチネルの省略候補としてターゲットになっている
※特に今回の2試験はサブタイプは規定していないが、
結果的リンパ節転移で方針がそう変わらない、群で
暗にそういう群になっている。
きちんとエコーなどで評価していれば、
腋窩手術を省略しても腋窩再発率は非常に低い(0.4~1.0%)
でも、今回の試験とSOUND試験でUSで(生検もして)
陰性、といった中に10%ぐらいは顕微鏡的N+がある。
でもN=4~9というpN2の可能性は1%以下
サイズが大きい腫瘍やG3の腫瘍に関しては
腋窩リンパ節転移の可能性が高い
たとえば、今回の試験のpT2の中央径は2.5cmだが
マクロ転移の可能性は2割程度に及ぶ。
もっと腫瘍サイズが大きいものは当然もっとリスクが高い
→手術しないと腋窩リンパ節状態が不明なので、
適切な術後補助療法が選択されないというリスクはある。
放射線治療が全乳房照射になる、というのが
この論文では言われていたが、APBIは個人的には
そこまでメリットがあるのか??と思っているので
そこは関係ないかなぁ、と。
(一応ガイドラインでは、N-でT1はAPBIが推奨のよう)
一応この試験は5Frは入っていないよう。
3D/IMRT両方入っている。
特にハイタンジェントにしたわけでもないよう。
CDK4/6iの対象が拾えなくなる、というのは一理あるが。
(だが、この試験の対象群のような人は上乗せは少ないだろう、とも)
廓清しないこともメリットは明らかで
・傷が入らない
・リンパ浮腫のリスクが減る
・腕の可動域制限などの問題が無くなる
・腋窩の違和感などもなくなる。
(実際この試験のQOL解析でそういうデータは出ているそう)
このeditorial的には閉経後で、ER+/Her2 -で
cT1、G1/2が生検で疑われて、URでN-ならば
まずは腋窩を触らない、というのは妥当では?というような論調
病理で大きかったり、G3だったり、リンパ管侵襲があって
リンパ節状態を(補助療法の有無のために)調べるのに
センチネルリンパ生検したら?というような感じ
(その時点でどうやって
センチネルリンパ節生検を技術的にするのかは?)