お勉強502:直腸温存療法の危険性
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.24.00405
わたしは直腸がんのTNT→NOM(手術をしない直腸がんの治療)
日本でももっとやろうよ派であるわけだが、
NOMの危険性についても大事、というわけで
NOM信者に対する教訓的論文
直腸癌の治療において、術前の
TNTやCRTの後cCRになった患者で手術をしない
watch and wait(WW)/non operative managiment(NOM)
が時代の最先端ではあるが、一方で経過観察中に
ある一定数(試験にもよるが約25ー30%)は局所再発(LR)が起こる。
(今回のLRの定義は原発巣・直腸周囲や側方リンパ節)
それによって、遠隔転移(DM)のリスクが高まる可能性
についてはいろいろ議論があるわけだが、
今回、WWアプローチを取って局所再発した患者と、
手術して腫瘍細胞がほぼ残存していなかった患者
(near PCR:nPCR)とでDMリスクを比較した、という研究。
2つの国際的なデータベースから収集したデータを用いて、
cCRを達成した患者の中で、術前療法後に(ほとんどCRT)
WWで管理され、LRした群と
(ほとんどアジュバントは受けていないよう)、
再評価時にTME手術で管理されたnPCR群のDMリスクを比較。
3年間のDM非発症率がプライマリーエンドポイント
DMに関連するリスク因子の特定がセカンダリーエンドポイント
LRを起こした群は、TMEした群に比べ
・若い
・肛門から遠い
・cN+患者が多い
・ypT3-4が優位に多い
LRサルベージ群では15%臓器温存
(おそらく局所切除)
WW中に局所再発があった群では、
再発後のDM発症率が22.8%、nPCR群は10.2%
有意差あり。
WW後の局所再発は、ypT3-4、ypN+とともに
手術後の最終病理ステージに関わらず
DMリスクの上昇に寄与する独立したリスク因子
手術後の生存で
(即手術群はそこから、LR群はサルベージ手術から)
ステージごとに診てもLR群のほうが成績は悪い
WWアプローチを取ることで局所再発が発生した患者は、
即TME手術を受けたnPCR患者と比べて遠隔転移のリスクが高い
という結論。
LRはDMの発症に大きく関連している?。
「治療決定から3年間のフォローアップ」が
行われているのもポイント
(LRはほとんど2年以内に起こる)
LRが生じた場合、遠隔転移が多発することが示され、
WWを採用する際には、微小残存病変の存在や
残って出てきた細胞の悪性度が高く、
転移の可能性が高いのでは?
と考察している。
TNT時代のデータはほとんどなく、
術前化学療法の追加で、遠隔転移が減る可能性や
ctDNAやより高度なMRIの使い方で
局所制御の予測因子が出てきてこういった傾向が
変わってくるのか、注目です。
とりあえずNOMはまだまだ課題が一杯です…