お勉強491:局所進行直腸がんのASCOガイドライン
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.24.01160
局所進行直腸がんのASCOガイドライン
NOMマニアとしては抑えておきたい
2013年から2023年までのランダム化比較試験や
系統的レビューに基づいて推奨事項を作成と
まとめ
・まずはMRIでの評価
・MSIーH以外は
※高リスク因子を持つ患者(遠隔でも局所でも)
※下部直腸に腫瘍がある患者
はTNT推奨
・ハイリスク群でない場合は
ケモ→反応に応じてCRT、RT/CRTのみも選択肢としてあり。
・TNTを受ける患者は、放射線治療後に化学療法を行うことが推奨
一応long-courseのCRTをどちらかというと好ましいとしているが
ショートコースも状況によっては選択肢として有用
・NOMはTMEの代わりとしてcCR患者とは相談
・MSI-H患者は免疫療法がすすめられる
★評価
1.1 まずはMSIとMMRの状態を調べる
1.2 手術法や、導入療法の必要性を決める
リスクファクターの評価のために
high resolutionのMRIを撮影する
1.3 構造化されたMRI報告書を作成する
※肛門縁からの距離
※括約筋との関係
※骨盤リンパ節
※EMVIやCRMの評価
★MSIーH以外の局所進行直腸がんで
TNTは従来のCRTと比較して予後を改善するか?
2.1 局所進行直腸がんで下部直腸がん
もしくは下記の局所・遠隔転移リスクを持つものは
TNTを行うべき
※T4
※EMVIやtumor deposits
※CRMがとれなさそう
※括約筋との関係
追加事項
・N因子の病期分類の正確性には限界がある
ゆえに放射線学的なN因子のみで
TNTを行うかなどの判定は行わないことを推奨
・TNTを行う患者集団は予後因子によって定義される。
一方で、特定のサブグループ解析でのRCTデータはない
したがって医師と患者は治療の利益と害について
患者の意向やMRIの所見をもとに話し合うべき
★局所進行がんだが、リスクの低い患者に
FOLFOXを行い、反応に応じてCRTというのは薦められるか?
2.2 中部から上部直腸がんでPROSPECT試験の適応
参考
つまりT3N0-1で肛門括約筋温存手術の適応で
CRMが充分にとれる場合は上記の戦略は許容される。
※あくまで反応が悪ければCRTのバックアップが必要
追加事項
・粘膜外浸潤5㎜以下だとそもそも早期がん
・TNTじゃなくてCRTやショートコースのRTもあり
・もちろんTNTもNOM狙うならオプション
毒性(時間・コスト・晩期有害事象)も考えて選択を。
★TNTを行う際、CRT/RTとケモの順序は?
3.1 CRT/RTを先にするのを薦める
追記事項
・OPRA試験ではCRTかケモかどちらが先か検討された
DFSでは差が出なかったが、TMEなし生存は
CRT先行が上。
・遠隔転移のリスクが高くFOLFOXILIなどの3剤併用とかで強力に
ケモしたい場合はコンプライアンスのことも考えて
ケモ先行も一考。ただし3剤の臨床試験は年齢や合併症で
患者選択をしたものなので注意
・CRT開始が何らかの事情で遅れる場合はケモ先行もオプション
★ネオアジュバントセッティングでlong course CRTか
short course RTか?
4.1 RTを含めるネオアジュバントの場合CRTの方をすすめる
追記事項
・RAPID試験でケモに加えてshort courseのRTを加え
TNTすると従来のCRTのみよりも遠隔転移や
病気に伴う治療失敗は減ったにもかかわらず
局所制御が悪化した。(TNT群10%・CRT群6%)
・short course RTも重要なオプションプランで
患者の状況に応じて選択するべきだが、
RAPID試験のようなハイリスク患者や
NOMを考えている場合はCRTが良いと思われる
・CAO/ARO/AIO-18.1でランダム化のTNTの試験
(short course RTとCRTを比較する)
が行われており、最終的な結論が出るだろう。
★NOMはcCR患者に初期治療として進められるか?
5.1 NOMはTMEの代替療法としてcCRになった場合は
患者と相談すべきである
追記事項
・CRTを含まず。術前ケモだけでcCRになった患者の
NOMについてはデータがない
・機能予後、手術リスク、経過観察の必要性
永久ストマの可能性の減少については説明が必要
・肛門に近い腫瘍では、NOMは好まれる傾向がある
・OPRA試験では
※直腸診・内視鏡 最初の2年は4か月ごと
残りの3年は6か月ごと
※MRI 最初の2年は6か月ごと
残りの3年は1年ごと
で経過観察が行われていた
・最終的にcCRを判定し、NOMの適応を決めるのは
時期としてTNT後8±4週 であるべきである
・NOMの適応としてOPRA試験の条件に加えて
「潰瘍がない」を含むべきである
※直腸診・内視鏡 腫瘍を触れず、残存がなく
発赤調の潰瘍や瘢痕がない
※MRI 繊維組織の残存のみ・DWI高信号なし~少し
リンパ節転移疑いなし、治療後の浮腫は許容
◎上の2つ両方満たすことが条件
・生検は必ずしもcCR確定に必要ない、
というかしないのをすすめている
★MSI-HやdMMR直腸がんはTNTや他の治療より免疫療法が薦められるか?
6.1 これらの患者には免疫療法が薦められる
追記事項
・2~4の推奨はこれらの患者でない場合、
免疫療法禁忌の場合の話である。
・一般的にdMMR腫瘍はCRT感受性だが、5-FU製剤は効きにくい
詳細がもっと知りたい方は原文を…