お勉強102:喉頭がんレビュー③
<T3患者>
☆腫瘍学転機について
T3喉頭癌の外科的治療法と非外科的治療法については
様々なものがある。
これらを比較した一例として、
1999年から2007年までのSEERデータを用いた
調整済みリスクモデルでは、
III-IVB期喉頭がんと診断された65歳以上の患者で(n = 759)
CRT先行と比較して、喉頭摘出術先行の方が
優れた全生存期間を示した。
しかし、T4腫瘍を除外すると有意差はなくなった
また、SEERでは化学療法の詳細
(例えば、併用または逐次など)はデータがない。
その後、米国のNational Cancer Databaseコホート
でのT3 N0喉頭がんに対する
手術先行と放射線療法の比較が発表された。
未調整および調整後の5年全生存率は同等であった
(調整後:手術先行53%、放射線治療54%、p=0.41)
選択された一次治療法よりも、
年齢の上昇、併存疾患の存在、保険の種類、
70Gy未満の放射線量、
通常分割ではない放射線治療が生存率の低下と関連していた。
近年、予定線量を完遂した患者を手術群と比較すること
により、同一条件のの分析を行った。
単変量解析では優位性があったが
多変量解析では有意性が失われた。
同様に、N0またはN+のサブグループにおいて、
治療法ごとに比較しても生存の有益性は示されなかった。
しかしT3N0腫瘍と比較してT3N+腫瘍の5年全生存期間が
悪いことが示された。
過去20年以内に治療を受けた患者の
小規模な後方視的解析はいくつかあるが、
同様の結果である。
病期別(T3 vs. T4)や治療法別に
(喉頭全摘+アジュバントRTvs.CRT先行)
生存期間を比較したところ、
どちらの場合も差は認められなかった。
しかし、現実としてT3腫瘍の大部分はCRTで、
T4腫瘍の大部分は喉頭全摘術とアジュバントRTで治療された。
一部のT3声門がんでは喉頭部分切除術が適応であるが
他の治療法との比較の報告は乏しい。また、
この進行度に対する経口腔的ロボット手術については、
今日まで十分なデータがない。
☆喉頭温存と機能的転機について
過去20年以内に治療を受けたT3喉頭がん患者のみを対象に、
外科的治療後と非外科的治療後の喉頭-咽頭機能を比較した
研究は知られていない。
ある研究ではCRTで治療したT3腫瘍の40%で
2年後の喉頭-食道機能障害のない生存率が示された。
CRTを受けた患者の12%は、
治療後2年目にfeeding tube依存性であった。
喉頭の温存および機能に関して、この研究では、
(N=25)化学放射線療法後2年の時点で
喉頭切除なしの生存率が44%、
気管切開なしの生存率が52%であったと報告している 。
生存者のうち、24%が照射後2年後に気管切開術
を受けなければならなかった。
全コホート(T3が74%、T4が26%)では、
化学放射線療法後の全喉頭温存率は79%であった。
別の小規模コホート(N= 18)では、
2年後の臓器温存率が43%であったことが報告されている
これらの研究ではごく少数の患者が
喉頭部分切除術で治療されたが、
これらの率は両論文には記載されていない。
喉頭への放射線治療後の誤嚥は最も重要な問題の一つである。
MDアンダーソンの後方視的研究では、(N=40)
照射後の患者でのバリウム嚥下結果が報告されている。
患者の大多数は局所進行喉頭がんであった
(T3 60%/T4 15%)。
患者の84%が誤嚥しており
44%が症状なく誤嚥していた。
症状のない誤嚥は、治療後1年降に多くみられた。
68%の患者が治療前に嚥下障害を報告していた。
22週の観察期間中央値で、
最終的に48%の患者がfeeding tubeを抜去した。
無病群ではfeeding tube 抜去率は72%であった。
※個人的には進行期の喉頭がんにおいて
嚥下機能に関しては、症例を選ばないと
喉頭温存手術>>CRTの可能性はとても高いと思う
喉頭温存手術の発声機能についてはよく存じあげないが
CRT後の患者さんでは、それなりの発声機能はある印象である
<T4患者>
腫瘍学転機について
喉頭温存療法と比較して、手術後のアジュバント治療
を選択することによって
多くの研究が全生存率が良好であることを示している。
T4喉頭がんでは、生存というより
どちらかというと喉頭全摘出術によって低下する
QOLにたいしての問題が論議となっている
(前向きにnumber-needed-to-treatでの議論)
腫瘍学的転帰に関しては米国国立癌データベースの分析
(N=616)でT4a喉頭癌と診断された約3分の2が
CRTで治療されていた。全生存期間中央値は
61か月(手術t→アジュバント治療)
vs.
39ヵ月(CRT先行)
(p<0.001)
であった。
データベースの研究では、
他のアウトカムについては報告されていない。
しかし、患者と治療背景の特徴は重要である。
進行したリンパ節転移の患者や声門上の患者の方が
喉頭全摘出術を受ける可能性が低かった。
同様に、より多くの患者が
症例数が多い施設では、
少ない施設よりも手術先行が多い結果であった。
症例数の多寡だけでなく、
いわゆるアカデミックな施設と一般病院では、
成績が大きく異なっていた
ほかの観点では
所得が高いこと、特権的な民族的背景、
より良い患者の社会文化的、経済的地位が高い人は
手術を受ける傾向があった。
推測ではあるが、症例数の少ない/一般病院では、
頭頸部がん患者は頭頚部治療に長けた専門的な
放射線治療医の診療を受けていない可能性がある
リンパ節転移の有無に関しては、Nの状態に関係なく
T4a患者の全体で、一次手術がCRT先行よりも
全生存期間の点で優位であった。
アメリカのナショナルデータベースをもとにした
研究ではT4a患者における3つの治療法、つまり
喉頭全摘出術による一次手術と補助放射線療法(TLE+RT)
CRT先行(CRT)
多剤のインダクションケモ→CRT(IC+CRT)
を潜在的な交絡変数を調整した後比較すると
CRTの結果ははIC+CRT・TLE+RTと比較して
全生存期間が劣っていた。
しかし、TLE+RTはIC+CRTと比べて全生存の
改善は認められなかった。
さらに手術後にアジュバントRTを行わなかった患者
を含めるとCRTに対するTLE+RTの生存優位性が失われた。
RTOG91-11試験で使用された‘high volume‘T4aは、
軟骨を貫通している喉頭癌または舌根部にで1cm以上進展
であった。
この問題を容積学的な観点から調査した、
近年の小規模な(CRT:n = 48、喉頭全摘術:n = 14)
後方視研究では腫瘍の体積が≥ 15cm3以上というのが
CRTを行った場合局所-領域制御、全生存が、
喉頭全摘術と比較して悪かった。
また、手術先行後に補助治療を行った場合には、
T4N+とT4N0で予後が変わらないことがわかった。
一部の「初期の」選択されたT4喉頭癌では、
openでの部分切除や/経口的ロボットでの喉頭全摘術
が行われているが、これらとCRTの腫瘍学転機を
比較した研究はない。
☆喉頭温存と機能的転帰
喉頭温存と機能的状態をT4aに限って調べた研究は
規模が非常に限られており、後方視的なものだけである
ある研究によるとCRT(n = 10)後の
2年臓器温存率は17%であった。
また、n=9の報告で2年間の喉頭食道機能障害のない生存期間
は33%という報告もある。
別の研究では、N=66のコホートで
RTもしくはCRTで
2年気管切開依存率は55%、
3年喉頭切除術なし生存率は67%であった。