お勉強336:前立腺がん術後サルベージ治療、まとめ
前立腺がんの救済放射線療法
(いわゆるsalvage RT)に関する記事
線量、照射野、ホルモン療法併用するか
等のまとめ的記事(@2023二月)
・Salvage前のPSA値が重要であること
・ハイリスクの前立腺がんでRPすると
およそ半分以上が再発する(PSA再発)
・RP後に再発した場合一般的に
根治を目指すのであればSalvage RTが必要
※次世代画像診断について
・PETが徐々に広まりつつあるが、
特にSalvageRTにおいては線量、照射野を
決定するうえで有益と分かっている。
・EMPIRE-1試験では18F-fluciclovinePET
を治療計画に使う事で
3年イベントフリー生存が63%⇒75.5%に
なることがしめされた。
おそらくだが、34%の患者がPET所見で
骨盤リンパ節を照射者に含むようになったり
またその逆でサイズ的には陽性でも
PETで陰性と判断して照射野を縮めたり
ということが行われたからと考えられる
・この試験では毒性の増加は見られず
治療が適切に調節されて
バランスが取れたからだと想定されている。
・さらに感度の高いPSMA-PETが
SalvageRTに入ってくることでさらなる
利益があると想定されている
・PSMA SRT試験が期待されている
※骨盤照射について
・RP後のSalvageRTにおいて骨盤照射の
意義を評価したⅢ相試験は一つのみである
・NRG/RTOG-0534(SUPPORT試験)は
3armの試験で、ホルモン療法の上乗せと
骨盤照射をさらに上乗せするのを
検証した試験である。
・SalvageRTにホルモン療法を加えるかは
他に3試験で検証されているが、
この試験では骨盤照射が意味があるか
検証した点が独自である
・結果として前立腺床だけでなく
骨盤照射を加えることで
5年進行割合が低下した
・しかし遠隔転移発生率やOSといった
もっと重要な転機は改善されなかった。
ただ、毒性の明らかな上昇も見られなかった
・この試験の筆者らはPSA中央値0.35で骨盤照射の
有用性が層別化できたとしている
・ただし、かなりの人数でRP時にリンパ節郭清が
されていないこと、PETなどの画像診断は
使われていないことなどから
この試験の結果で骨盤照射をするかを
一義的に決めるのは難しい。
※線量分割
・従来のFrサイズでの線量増加については
64Gyvs.70Gy(ホルモン療法なし)
のランダム化比較試験SAKK-09/10が行われた
・観察期間中央値6.2年で両者の
bPFSは差が無く、G2以上の有害事象が
増えるという結果であった(20%vs7.3%)
・Peking試験でも同様に66Gyと72Gyの比較で
4年フォローで差は出なかった。
ただし、有害事象には差が無かった
・現状通常のFrで線量増加することには
あまり意義がなさそうである
・一方の方向性としてFrサイズを変える
という試験が走っている
NRG-GU003では通常のFrの放射線治療と
やや寡分割の25Frとを比較する
(62.5 Gy /25Fr 一日2.5Gy)
試験である。プライマリーエンドポイントは
2年時点でのQOLである
・MRIを使ったSBRTも照射方法として
模索されている
※ホルモン療法の追加は?
・サルベージでもホルモン療法の適応や期間に
ついてはさまざまな意見がある
・4つのⅢ相ランダム化試験でSalvageRTに
ホルモン療法を加えるメリットがあるとされている
・NRG/RTOG-9601では760名をランダムに
SalvageRTにビカルタミド2年を足すか足さないか
検証した。PSAの中央値は0.6ng/mlであった。
13年のフォローで12年OS(76.3% vs 71.3%)
遠隔転移(14.5% vs 23%)、
前立腺癌死(5.8% vs 13.4%)を減らせると報告した。
・しかしながら追加解析を行ったところ
すべての患者で利益があったわけではなかった
・約85%の患者でPSA<1.5ng/mlで
これらの患者では有効性が見られず
逆にこれよりPSAが高かった患者では
大きな利益が得られていた。
・PSAを連続変数として解析すると
ホルモン療法のメリットが明らかであり
PSA<0.7ng/mlでは上記のエンドポイントは
すべて利益がなかった
・逆に2年のビカルタミドで2~3倍も
心臓・神経のイベントが増加した
・PSA<0.7ng/mlでは2倍の他病死が見られた
・GETUG-AFU-16試験では743人の患者を
RTのみと6カ月のゴセリンを加えるかの
試験であった。
・患者のPSA中央値は0.3ng/mlで
いわゆる早期の時点でのサルベージを受けた。
・2ng/mlまでの患者も入っていた
・112ヶ月の長期フォローでホルモン療法群で
生化学的再発、臨床的再発が改善した
・この試験はOSの改善を目指していたが
改善は見られなかった。総じて
NRG/RTOGー9601の結果と同様であった。
・より最近のものとして
(骨盤照射の有無について語った試験でもある)
NRG/RTOG-0534(SPPORT試験)がある。
・この試験もPSAに関するエンドポイントが
プライマリーエンドぽいんとであり、
予測された通り、生化学的再発が改善されたが
OSや遠隔転移までの期間は変わらなかった
PSA別の解析は行われていない
・もっとも最近のものとしてRADICALS-HDという
人数も最も多い試験がある
・この試験はホルモン療法の期間を分けて
3つのランダム化比較試験となっている
ホルモン療法の期間なし、6ヶ月
ホルモン療法の期間六カ月、2年
ホルモン療法の期間なし、6ヶ月、2年
を比較する試験である
・期待されたように、なしvs.6ヶ月は
リスクの低い患者が登録されていた。
・OSや遠隔転移までの期間はなしvs.6ヶ月では
見られなかったがなし、6ヶ月、2年でもみられなかった
・しかしながら6ヶ月と2年の比較で
10年の遠隔転移までの期間が改善した
・さらに今までの試験のメタアナリシスでは
遠隔転移までの期間が6ヶ月のホルモン療法で
ホルモン療法をしなかったRTのみの群より
HR0.82で改善がみられた
※ゲノム解析での分類
・ゲノムレベルでの分類でPSAが低い段階での
ホルモン療法の優位性が分かるかもしれない
・Decipher Prostate Cancer Testは
NRG/RTOG-9601の760人のデータから作られた
・このスコアは遠隔転移、OS,前立腺がん死を
予測する独立した因子である
PSA<0.7ng/mlの場合でもスコアでホルモン療法の
SalvageRTへの上乗せを場合分けできる
・SAKK-09/10のデータ(線量増加試験)でも
このスコアは低いと再発率が低く、遠隔転移も
減っていた
・このスコアでADTの強度なども調節できるかもしれない
・NRG-GU0006では現在進行中の試験で
6ヶ月のアパルタミドがプラセボに比べ
PAM50のLuminalBにおいて優位か調べられている
※まとめ・結論
様々なランダム試験の結果、SalvageRTの
前立腺がんへの有用性は確立されている。、
骨盤照射の有用性・ある程度の期間のホルモン治療療法
が示されている(のか?)
今後の課題としてはゲノム分類・より進んだ画像診断
が期待される。
当院では全骨盤→前立腺床Boost
ホルモンはPSA高ければ、6ヶ月ほど先行
という感じです