お勉強428:JCOG0802/WJOG4607の副次解析;pure solidのほうが部分切除が良い?

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38184010/


JCOG0802/WJOG4607の副次的解析

上記試験については下記参照


二次がん死 部分切除>葉切除
肺がん再発 葉切除>部分切除
というところが議論をよんだところ

今回のサブ解析は
「どのような群で縮小手術>葉切除なのか」
ということに主点を置いて

胸部薄切CTにおける病変の
最大径/consolidationの最大径>0.5(CTR>0.5)
が受け入れ基準だったが、
※そのほかの基準は上記記事参考のこと
pure solid (つまりこの値が1の人)
を調べてみましたということのよう。
(一般的にこの群が予後不良なのが一つの理由)

1106人の試験患者中553人(50%)がpure solidで
このpost-hoc補足解析の対象となった。

274人(50%)が肺葉切除術
279人(50%)が区域切除術→18人が葉切に

全体の10%でリンパ節転移が見つかった
(プロトコールではこの群は
 術後療法を受ける予定となっている)

年齢中央値は67歳(IQR 61-73)
63%が男性

追跡期間中央値7.3年、

5年全生存率は
葉切除後よりも区域切除後の方が有意に高かった
葉切除群86.1%[95%CI 81.4-89.7]、死亡55例
区域切除群92.4%[88.6-95.0]、死亡38例
HR:0.64[95%CI 0.41-0.97];log-rank検定 p=0.033

5年無再発生存率は両群間で同等
81.7%[95%CI 76.5-85.8]、34イベント
vs
82.0%[76.9-86.0]、52イベント
HR:1.01[95%CI 0.72-1.42];p=0.94。

肺がんによる死亡は、
葉切除後274例中20例(7%)、
区域切除後279例中19例(7%)
その他の原因による死亡は
葉切除後35例(13%)
区域切除術後19例(7%)

局所領域再発は区域切除後の方が高かった
(21例[8%]対45例[16%]、p=0.0021)
※マージン再発と、縦隔リンパ節転移が多い)

サブグループ解析では、
70歳以上の患者のサブグループでは、
葉切除後より区域切除術後の方が5年全生存率が良好。

葉切除77.1%[95%信頼区間68.2-83.8]
区域切除85.6%[77.5-90.9];p=0.013

男性患者においても良好
80.5%[73.7-85.7] vs 92.1%[87.0-95.2];p=0.0085

70歳未満のサブグループでは、
葉切除後の5年無再発生存率が区域切除後よりも良好であった
(全生存は有意差なし)
葉切除87.4%[95%信頼区間81.2-91.7]
区域切除84.4%[77.9-89.1];p=0.049

女性でも似たような結果

結論としては
pure solidでも区域切除のほうがOS有利
むしろpartial solidのほうが差がなかったとのこと

論文の結論としては葉切と区域切除を
年齢や性別で使い分けよう、という結論

以下私見
フォレストプロットを見ると
non-Sqは局所領域的には葉切が良いよう。
年齢が若い、女性、非喫煙者など予後のよさそうな人は
局所領域再発的には葉切有意。
ただ、OSとなるとどのような群でも明らかに
葉切に寄っている群はない。

論文のlimitationで「まだ」5年 打ち切り多い
としているが、
特に70歳以上(「日本の」70歳である)とか男性
での区域切除のOSでの優位性はちょっと覆せないぐらい
はっきりとついている。

肺を残すことでの呼吸機能の温存はあまり差がなかったらしいが
肺を残すことで次の癌への対応能力がそこまで変わるのだろうか?
個人的には、その可能性は否定できないと思っている。
(肺が腫瘍免疫で大事なことをやっている可能性は否定できない)

放射線治療医としてはSBRTにこの結果をどう外挿するのか、
というところが今後の問題となってくるだろうが、
いま改めてランダム化比較試験が行われているようだし、
たとえ「日本の」高齢者であっても必ずしも手術にこだわる
(区域切除でいいじゃないか、という意見は甘んじて受け入れるが)
必要性は本当はそれほどないのではないだろうか。
ここ10年で早期肺がんの治療は大きく変わってくるかもしれない


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