お勉強250:膵癌術前放射線治療

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405630821000392

膵臓がんは難治で周術期治療が重視されている。
upfront手術であるとR1手術は40~60%であり
(海外ではインクから1㎜ marginをR0とするグループも あり、
   日本でいうR0も含まれている)
膵癌死亡した症例の解剖でいうと、30%程度が局所再発している。

さらに術後補助療法の有用性を示した
ESPAC-4/PRODIGE 24では1/4~1/2の 初期再発が局所のみの再発、
という報告もある。

→さらなる手術前の局所治療の有用性があるのでは?  
というテーマのなかで、膵癌の新たな放射線治療(主にSRT)
との組み合わせについてつらつらと書かれている。

<以下概略>
術後治療はPSの低下、術後早期再発、患者拒否などから
できないことも多く、
術前化学(放射線)療法が 早期の遠隔転移の制御、
早期再発例のセレクションなどの利点から
行われることが増えてきており、
実際R/BR膵癌のメタアナリシスで 術前治療群の方が手術に至った症例は
少ないものの、OSの改善がみられている
(日本のPrep-02/JSAP-05試験は論文発表がまだのためか、
 触れられていないが 日本では術前のGEM+S-1が即手術より
 OSを改善させることが既に報告されており、
 ガイドラインでも推奨している)

では、化学療法だけで十分かというと 後方視的解析では
BR/LA膵癌に対して ケモにRTを加えることで生存が改善したという
近年の報告がある。
大規模な後方視的解析で、
TNT((C)RT+インテンシブケモ)を LAPCに行った場合、

CA19-9の反応
6コース以上のインテンシブケモ
組織学的反応

が独立した生存の予後因子であった。 (特に組織学的反応)

放射線的には過去の方法では分割照射が必要であり 5-6週の間、
強力な化学療法ができず、不十分な成績しか出せなかった。
IMRT/MRIガイド下治療でdose paintingでOARを避けることで
腫瘍線量を増加させつつ、
治療回数を5~15回程度にすることも可能になりつつある。

SRTに関していうと、BEDを上げていくことで生存を改善させる報告がある。 手術後の再発形式から腹腔動脈、SMAの根部を含め、
手術できるのであれば、所属リンパ節領域も含めた方がいい。
一施設のデータだが、5FrのSRTでENIを省いたところ 照射野外再発が増えたというデータがある。

インダクションケモ→SBRTのTNTでの報告では
pCRが10%程度あるという報告が複数報告されている。

ケモを加えないSRTとケモを加えたRTのどちらがいいのかも
良く分かっていない。
CRTにする場合はいわゆる中度寡分割照射が適当であろう。

予防照射も肝動脈やSMVやPVまで広げるかも今後の課題である。
放射線と手術のタイミングについては色々な意見がある。
直腸がんと同様に、時間を空けた方がpCR率が上がるのか、
時間を空けることによって周術期合併症は増えないのか など
臨床試験が進んでいる。

膵癌のTNT⇒surgeryをする場合、
評価として (特に臨床試験の場合) まずは審査腹腔鏡をするのが重要
画像的に陰性でも、25%ぐらい播種は潜んでいるといわれている。
手術前に重要なチェックポイントとしては

・進行がないこと
・CA19-9の反応があること
・PSが保たれていること
・合併症
は重要だが、
画像的に縮小しているかどうかは切除率には影響してこない
集学的なチームでの切除可能性を検討すべきである。

筆者たちのハイライトとしては
・5~15FrのSRTは十分耐えられる治療である
・膵癌に対してSRTを行うのならば領域リンパ節を含むべきである
・SRTをすることで、インテンシブなケモを遅らせずにできる
・SRT後に「ブリッジングセラピー」としてケモをすることで
 時間を稼ぎ、R0を減らし、OSの改善が得られる可能性はある

<個人的感想>
・SRTと書いてあるが、hypofractionのdose paintingをした治療のことを
 指している、ととった方が良い内容
・いわゆる「絶対コンバージョン無理」ではない場合
 個人的には手術も頭に入れてRTを行うべきであり
 ENIというか、手術で完全に包み込んで取れない部分は
 照射のパワーを使う、というニュアンスには賛成。
 CHAまで入れるかは? SMVやPVは入れている。
・個人的には一回線量を上げるのと
 増感効果を加味したケモを多めにかませるのがいいのかの
 バランスは興味ある
・勤務している施設では一回大線量ではないが、
 CRT後数カ月たってから
 手術してもらった症例はあるが、特に問題はなかったと
 外科の先生は言っていた
・術前のCTやMRIはレセクタビリティーの あてには
 「全くならない」
 というのが個人的な経験を  踏まえた雑感である。

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