お勉強283:W&Wも完璧ではない、という話
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30825973/
当サイト、たぶん日本で一番W&Wを取り上げている
サイトと勝手に自負しているのですが、
W&Wはいい治療法ですが、まだまだ課題がある治療です。
今回は排便機能に関しての論文。
前提条件として手術を加えるか、加えないかの比較の
CRT→TME vs.W&Wについては報告があり
手術を加えることで、
身体的・認知的機能、身体的・情緒的役割、
グローバルヘルスステータスが良好で、
排便、排尿、性機能が良好であることは示されていました。
※https://links.lww.com/DCR/A395でサマリーのビデオがみれます
ただ、この論文でも示されているのだが
W&Wでも機能は低下します。。
排便機能のスコアリングシステムは色々なものがあり、
それらを使って術前にCRTを行いW&Wを選んで
最低2年観察した33人を対象とした報告です。
https://www.coloproctology.gr.jp/uploads/files/journal/benshikkin_guideline2017.pdf
こちらの32~36ページを読んでから読むとさらに理解が深まります。
線量は50.4Gy/28Fr 3D-CRTとIMRTが混じっているよう。
ケモはゼローダ併用。病変は尾側までそれほど追っていない印象。
肛門括約筋と直腸のコンツールは独特なので興味があれば原文を。
(図があります)
今回は割と長期の影響を見るため、
2年以上CRTからたっている患者(中央値38ヶ月)が対象。
23/33が下部直腸症例(歯状線から5㎝以内)
最終的に
「33.3%がmajor LARSを起こしている!」
という現実
(36%はno LARSではあるが…)
1週間に一回以上、液状便が漏れるという人も10%ぐらいいます。
LARSスコアの中央値、23.4 ± 11.3
Vaizeuスコアの中央値 4.3 ± 4.1
で、一番多いのは短時間の頻回便、切迫感のようです。
OARを見てみると、優位ではありませんでしたが
肛門括約筋群への線量が増加すると悪くなる傾向であったようです。
Discussionにおいては(CRT+)TME群では2/3ぐらいがmajorのLARSを
起こしているようで、それに比べればマシとはいえ
W&Wも万能では無いようです。
https://link.springer.com/article/10.1007/s00520-021-06326-2
によれば、括約筋温存手術では半分ぐらいmajorのLARSを起こし、
Long courseの術前RT,TME,吻合部リークなどが
リスクの増加とかかわっていたとあります。
(CRTなしでの日本の手術ではどうなのか、気になるところです)
我々はあまり実感してませんが、筆者らは
文献上前立腺がんの患者さんも排便障害を
半分ぐらい起こしていると言っています。
(3D-CRTの論文が多いと思いますが)
PROにして調べてみたら、案外いろんな人が
排便障害を呈しているのかもしれません。
しかしながら、治療の前段階のLARSは測っておらず
「そもそもあった直腸がんによる障害」
を反映している部分もあり、全部が全部放射線による
障害とも言えないとも言っています。
しかし、括約筋に対して線量を入れない、というのは
直腸がんのCRTとしては不十分な印象もあるのですが、
どうなんでしょうか…
こういった観点からは
案外短期のRT単独の方が主流に
なってくる可能性も否定できません。