お勉強424:オリゴメタ理論は乳がんでは成立しない?
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)01857-3/fulltext
いわゆる「oligoprogressive」腫瘍に対する
SBRTの効果を見た、という研究
オープンラベルのphaseII試験。
組み入れ患者は
・非小細胞肺がん
・乳がん
この二癌腫で大きく結果が違った、というのが要旨
1次以降の全身療法を受けた後に
PET-CTまたはCTで進行性病変が5個以下である
患者を「oligoprogressive」と定義。
SBRTの多施設第2相非盲検ランダム化比較試験を行った。
(いわゆるoligoprogressionに対する治療として
局所治療の有効性を前向きに見た初めての試験とのこと)
生物学的根拠としては
「効かなくなったところはクローナルエボリューションの結果で
そこが、引き続くメタの原因となりうる。
効いているところはそういった要素がないので
SBRTで効かなくなったクローンを叩いて
効いている薬は続行していこう」
という感じのよう。(前立腺ではかなりこの説が言われている)
標準治療群(standard-of-care群)と
SBRT+標準治療群(SBRT群)の間で
1:1の無作為化
SBRTは基本27–30Gy/3Fr(52%) 30–50Gy/5Fr(19%)
再照射となる症例は基本エンロール不可。
大きさは基本4cm以下と。
SBRT群で111か所のoligoprogressionを治療
多かった順で
・脊椎以外の骨転移
・肺転移
・リンパ節
・脊椎
・肝臓
・乳房
・副腎
層別化因子としては
・進行性転移部位の数(1 vs. 2-5)
・受容体またはドライバー遺伝子変化の状態
・原発部位
・以前に受けた全身療法の種類(ICIが入るか、入らないか)
プライマリーエンドポイントは12ヵ月までの無増悪生存期間。
疾患部位別サブグループ解析は事前に規定。
ITT解析
OS/SBRTの毒性/QOLも調べているよう
サブ解析としてcfDNAの変化も見ている
(方法のところを読んだが、よく分からない…)
2019年1月1日から2021年7月31日に
106例の患者を
標準治療群(n=51、乳がん患者23例、NSCLC患者28例)
SBRT+標準治療群(n=55、乳がん患者24例、NSCLC患者31例)
に無作為に割り付け。
基本は最初は8週後、以降3か月おきで画像フォローのよう
基本的に1年フォローで終わりの予定だったよう。
(各群数例同意撤回があり、その場合はSDでフォロー終了
という形にしたらしい)
乳がん患者47人のうち16人(34%)がトリプルネガティブ
乳がん患者では10人(21%)が免疫療法を受けていた
NSCLC患者59人のうち51人(86%)がドライバー変異なし
NSCLC患者では47人(80%)が免疫療法を受けていた
転移が見つかってからoligoprogressionまでの期間は
乳がん29か月、NSCLC18か月
転位の個数は1個 1割 2ー5個4割 5個以上5割
といった感じ
事前に計画された中間解析で主要評価項目が達成し
登録終了。
追跡期間中央値は、
標準治療群で11.6ヵ月、
SBRT群で12.1ヵ月。
無増悪生存期間中央値は、
標準治療群3.2ヵ月(95%信頼区間2.0-4.5)
SBRT群7.2ヵ月(同4.5-10.0)
(ハザード比[HR]0.53、95%信頼区間0.35-0.81;p=0.0035)
無増悪生存期間中央値は、
SBRT群のNSCLC患者の方が
標準治療群のNSCLC患者よりも高かった
(10.0ヵ月[7.2-未到達] vs 2.2ヵ月[95%CI 2.0-4.5])
HR; 0.41、95%CI 0.22-0.75;p=0.0039
一方、乳がん患者では差は認められなかった
(4.4ヵ月[2.5-8.7] vs 4-2ヵ月[1.8-5.5])
HR;0.78、95%CI 0.43-1.43;p=0.43。
ホルモンレセプターごとに調べても差なし
111か所のSBRT部のうち55%が進行
SBRTするかしないかは関係なく
乳がんはターゲット病変外に
進行病変が出てくることが多いよう(61%)
(NSCLCではSBRTしない群では14%とそうでもないよう
というか、SBRTをしないoligoprogression部位が進行する)
cfDNAもほぼ同様の動きで
乳がんはSBRTしてもcfDNAは全体としては
低下ないが、NSCLCは下がっている
OSに関しては全体でも、癌腫ごとでも差はなし
※パワー不足な点と標準治療群もサルベージで半分以上
SBRTを受けている点を筆者らも指摘している
が、PFSが伸びるだけでもメリットはあるとも主張
(毒性の強い治療を受けるまでの時間など)
G2以上の有害事象は、
標準治療群では21例(41%)
SBRT群では34例(62%)
SBRT群では、独自のG2として
胃腸逆流症、
疼痛増悪、
放射線肺炎、
腕神経叢障害、
血球減少
等が9例(16%)に認められた。
QOLは両群で差なし
転移性NSCLC患者のoligoprogressionは
SBRT+標準治療で効果的に治療でき、
標準治療のみと比較して無増悪生存期間が4倍以上延長。
一方、乳癌患者には有益性は認められなかった。
ここに出てきた乳がんオリゴメタの試験と一致。
癌腫ごとにいわゆるoligoprogression/oligometaの
考え方が通用するものと、そうでないものがあることを示唆した重要な結果