お勉強356:膀胱温存療法
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(23)00170-5/fulltext
いわゆる膀胱全摘vs.膀胱温存療法(TUR/CTx/RTXの三者併用療法)の比較
ランダム化比較試験は他領域と同様ポシャってしまうので
cT2-T4「N0」の筋層浸潤がんに対して両者を行ったものを
プロペンシティーマッチングして解析しました、という論文。
いわゆる普通のPSMとIPTWでのプロペンシティーマッチング、
両方している
因子としては
・年齢
・性別
・CIS
・TStage
・PS
・BMI
・水腎症(なしor片側)
・ネオアジュバント/アジュバント化学療法
・喫煙歴
を考慮したとこのこと
3施設のレトロ解析
(どちらの治療も可能と判断された患者がcandidate)
(2施設で手術、2施設で膀胱温存療法)
条件としては
・7cm以下の単発病変
・水腎症なし(変則は許容のよう)
・広範囲のCISなし
・膀胱機能は十分にある
といった膀胱温存療法に適した患者群
プライマリーエンドポイントは転移なし生存
セカンダリーエンドポイントはOS/がん特異的生存/DFS
PSM後では
・年齢は71歳ぐらい
・1/4が女性
・T2が9割
・水腎症が1割程度
・ネオアジュバント・アジュバントケモは5割程度
という群となった
中央観察期間4年半程度で5年の遠隔転移なし生存は74%vs75%で
有意差なし。IPTWでも同様
5年がん特異的生存、DFSも同様
サバイバルカーブでも同様
OSに関しては膀胱温存療法のほうがやや有利
施設ごとに生存差はなし。
ネオアジュバントした群だけの感度分析でも結果に差はなし
ネオアジュバント・アジュバントケモは膀胱温存群の予後には
影響しなかったよう(ただ、ネオアジュバントのほうが予後良い傾向)
膀胱温存群で2割で筋層非浸潤再発
1割で浸潤再発。すべて3年以内に発生
8%で骨盤内再発(骨盤内再発は膀胱全摘群で少ない傾向)
サルベージ膀胱全摘は1割程度
サルベージをした人と、しなかった人で予後に大きな差はなし
(きちんとサルベージすればよい、という考え方)
同様の画像診断で
手術した群でpT3-4は44% 1/4がN+
周術期死亡は2.5%
筆者らの結論としては手術適応であっても
膀胱温存療法の提示は必要で、SDMしましょうとのこと
以下個人的感想
・筆者らも述べているが、PSM後のOSで膀胱全摘群が
予後が悪かったのは周術期の死亡や合併症によるものが
考えられる。ロボット膀胱全摘が主流になってきて
この辺りは変わってきているはずなので、OSで負ける、というのは
なくなってきているだろう
・今研究されているICIも含めた4者併用や、
日本のいくつかの施設で行われている部分切除を含めた4者併用療法は
今後さらに膀胱温存療法の予後を改善させてくれると個人的には思っている
・今回の論文のようなcT2-earlyT3
(この論文ではMRIステージングは必須でなかったよう)
の膀胱温存療法はもっと試みられてもよいと思う
・泌尿器腫瘍学会などでも特集されて思ったのは
「フォローアップが難しい」ということらしい
慣れている施設と慣れていない施設で大きく差があるよう。
尿のtDNAとかを測れるようになったら(なってきているらしいが)
膀胱温存は一気に広がる可能性があると期待している
なんにせよ、膀胱温存療法はもうすこし一部の施設だけではなく
広げていく余地はあると思っています
(とくによい対象患者には治療選択肢として
挙げるぐらいが推奨されるべきかと)