お勉強489:全肝照射論文publish!

https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(24)00438-8/abstract

全肝照射のランダム化比較試験

の論文化。

背景として
・HCCやメタの肝臓の痛みで年間100万人が全世界で苦しんでいる
・HCCなどの場合もともとの肝機能が悪いのも問題

カナダで行われた他施設共同ランダム化比較試験
標準治療に耐性を持つ肝細胞がん・肝転移の患者が対象
・全肝照射と支持療法群
・支持療法単独群
1対1で無作為に割り付け

対象は18歳以上で、肝臓の痛みがある患者
PS=0-3 余命予想3か月以上
肝臓の状態は
・50%以上の肝臓が侵されている
・10個以上の転移
・10cm以上の病変
・血管浸潤
・多発病変で一個以上6cm
    がランダム化前3か月以内の画像診断で認められている

TAE患者や以前に肝臓にRT歴がある患者、
他の抗癌治療を予定している患者は除外。

患者は放射線療法群と支持療法群に無作為に割り付けられ、
治療の効果評価者は割り付けに対して盲検化
割付因子は肝臓癌か肝メタか。

放射線治療は8Gy/1Fr 
照射1~2時間前に8mgのオンダセロトンと4mgのデキサメサゾン
CTVは全肝とは限らないが、痛みを生じている部分は含む
PTVマージンはやや大きめの1~2.5cm
基本的には`simple radiotherapy`が推奨されたと。

支持療法としては
・鎮痛薬(オピオイド・非オピオイド)
・ステロイド
等を行っていたよう
プライマリーエンド評価の1か月を過ぎたら
RTへのクロスオーバーありだったよう。
最低3ヵ月はフォローをする方針
1か月の評価までは化学療法・免疫療法・TKIはしない
その後はOK(3か月までの時点でやったかはフォロー)

痛みに関してはBPI質問票、というのを使ったらしい

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/8/53_596/_pdf

https://rehabilikunblog.com/pain_hyouka/

参照

QOLの評価はFACT-hepという肝胆膵特有のFACTをつかっている
みたいです。(高い方がQOL高いと)


でダウンロードできるので、興味のある方は一読を

プライマリーエンドポイントは患者報告の
1か月後の痛み(BPIで評価)

副次エンドポイントとしては
・1/3か月でBPIのスコアが2点以上改善した割合
・モルヒネ換算でオピオイドを25%以上減少した割合
・1/3ヵ月でBPIのスコアが2点以上悪化した割合
・QOL
・G2以上の有害事象
・3か月以上の生存者


66人の患者
33人ずつ割付。年齢中央値は65歳 37人が男性
65%が肝メタ、残りがHCC

全体的に全肝照射群のほうがPSは良いような感じ。
childスコアはA・Bがほとんど

最初の診断から割付までの期間の中央値は19.1ヵ月
観察期間中央値は3.2ヵ月
支持療法群では55%、介入群では73%が
一か月後の評価が可能だった。

支持療法のみ群の1/3が結果的に全肝照射を
受けるクロスオーバーあり。

評価可能群のうち一番悪い時の痛みの程度の改善が
放射線療法と支持療法を受けた患者の67%
支持療法のみのは22%
(有意差あり)

ただ、平均の痛みなどは有意差はついていない
3か月の時点ではクロスオーバーありのせいか
全体的に差はない
(そもそも両群でN=21と少ないのも影響しているだろう)
QOLなども全肝照射で優位な傾向だが、
Nが少なくて有意差までは至っていない

モルヒネ換算でのオピオイド使用量の
中央値は、全肝照射群で低下、支持療法のみでは増加
ただ、25%の減量、というエンドポイントでは差なし

OSもHR0.56(95%CI 0.3‐1.05)で
全肝照射群が良好
(肝細胞癌>肝転移と。)

G2以上のの有害事象は全肝照射がやや多め
(有意差はない)
G3-4 の有害事象として腹痛・腹水
G5はなし

筆者らの考察と、私の感想

・Nが少ないのでパワー不足の項目が多いが
 全体的に全肝照射群のほうが
 様々な項目で上に来ている、
 今までの2相試験でもほぼ同等の効果が
 示されており、 全肝照射は緩和照射の中でも
 効果が高い、と言ってもいいと思う

・肝臓がんが中~低所得国で流行っているのも
 あり、高価な薬が手に入りにくい中で
 全肝照射は安く、広く世界で提供できる
 治療であろうと筆者らは考察。

・筆者らはOSの改善に関しては
 有意差はなかったものの
 無症状の骨転移・腹腔神経叢のSBRT
 などでOSの改善傾向がある例なども挙げて
 「緩和照射」は「疼痛コントロール」以上の
 ポテンシャルがあると言っている

・私的に推測するに「痛みを取る」+抗腫瘍効果で
 患者さんの活動度が上がるのが結果的に
 OSにつながってくる要素なのではなかろうかと
 思っている。

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