お勉強329:オリゴメタとSABR 第三回
連載第3回
オリゴ転移とSABRに関するレビュー
1:オリゴ転移の決まった転移数のカットオフはない
2:小規模だがほとんどのRCTが局所治療の利益を示している
3:SABRはエビデンスが最も高い局所治療である
4:SABRで「治る」かもしれない、
5:SABRは通常副作用は許容できる範囲である
6:SABRは費用対効果が高い
7:すべての病変を治療するのが望ましい
8:全身療法とのタイミングや必要性は分かっていない
9:アブスコパル効果に期待するな
10:革新的な臨床試験の立案が望まれる
今回は5~7
5:SABRは通常副作用は許容できる範囲である。
ただし重篤な有害事象が無いというわけではない
SABER-COMET試験ではG2以上の有害事象が29%に出て、
関連が否定できない3例の死亡が出た。
しかし、一般的な他の大規模試験では
もっと低い有害事象が報告されている
SABR-5ではG2以上は18.6%、G3以上は5%以下だった
(5部位まで照射を許容しているのに!)
リアルワールドデータとして脳以外の
オリゴメタにたいしてSABRを行った
UKのNHSのデータでは1422人の患者で
G3以上の主な有害事象は疲労(2%)で
G4以上の主な有害事象は肝酵素上昇(0.6%)
治療関連のG5は見られなかった。
21の前向き試験を統合したメタ解析では
急性期のG3以上の有害事象は
ランダム効果モデルで1.2% 晩期のG3以上の
有害事象は1.7%と推察された。
こういった事実はSABRが比較的リスクの低い
治療であることをサポートするデータである
QOLに関してもSABR-COMET試験で調べられており
QOLの悪化は見られていない。
SABR-COMET、STOMP、前向きの前立腺がんの
トライアルのメタ解析では
HRQOLは12ヶ月の時点でSABRの有無で変わらなかった。
(どちらの群も12ヶ月の時点でわずかに低下していた)
まとめると、SABRはおおむね耐用内の治療で
QOLにも影響しない。
(※近年一回大線量での有害事象の閾値が
だいぶん分かってきて副作用が減っているというのもある)
6:SABRは費用対効果が高い
(主にUKの評価で語られているが、一般論としても通じると思う)
SABRの経済的な負担に対しても考慮が必要である
StageIVになると薬物治療も放射線治療もおおむね
コストが高くなる。
QALYやICER(incremental cost-effectiveness ratio)
などで費用対効果は語られることが多い
歴史的にはには$50000のQALY,近年では$100000の
QALYが払う価値のあるコストとされている。
いくつかの研究でオリゴメタに対するSABRは
費用対効果が高いと示されている。9つの
システマティックレビューでSABRの費用対効果
が評価されている。
うち5つが肺、肝臓、前立腺を対象とし、
残りの4つは様々な組織型を対象としている
一つの試験を除きQALYは$28000~55000となり
十分費用対効果があると思われた。
QALYの中央値で費用対効果として
$50000のQALYを満たす確率は61%
$100000のQALYを満たす確率は78%であった。
このような研究成果からオリゴメタに対するSABRは
費用対効果が高いアプローチであると推察される
QuらはSABER-COMETのデータから試験の97%の患者が
$100000のQALYをクリアすると示した。
SABRをたくさんの部位に行うとより費用対効果が
高いということがsensitivity analysesからモデル化されている
SABRは他のアブレーションなどのモダリティーと
比べて費用対効果が高いことも示されている
例えば肝臓がんのオリゴメタに対してRFAや手術に比べて
最も費用対効果が高いことが示されている
より長期のフォロー、III相試験が必要ではある。
加えて免疫療法などの併用の治療の費用も
オリゴメタに対する費用対効果に含めていくことが必要となる
7:すべての病変を治療するのが望ましい
オリゴメタに対する戦略として
できるだけ積極的に全病変を治療することが
より効果が高いことを示すエビデンスが出てきている。
ORIOLE試験ではHSPCに対してSABRか
経過観察かを行った試験である。
この試験でPSMA-PETで見つかった
全ての病変をablationした群が
PFS(NRvs.11.8ヶ月)もよく、
遠隔転移なし生存も良かった(29ヶ月vs.6ヶ月)
さらに401人の様々な組織型の1~5個の転移に対し
SABRを行ったレトロ解析では
全ての病変に対してablationを行った方が
OS(HR0.8)もPFS(HR0.6)も良かった。
これは metachronous(異時) でも synchronous(同時)
でも同様の傾向が見られた
全ての転移を照射することで新たな転移が
出てくるリスクを抑えることが出てくることを
抑えることができる。さらにすべての腫瘍負荷を
減らすことで他剤(免疫療法など)との
相乗効果が得られえるかもしれない。
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