お勉強275:エンハーツ、ついに教科書を書き換える。‘Her2-low‘という分類登場

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2203690
https://dailynews.ascopubs.org/do/10.1200/ADN.22.201047/full/

今回のASCO,一番の注目演題かつ、異例の
プレナリーセッションでスタンディングオベーション
まきおこったという”DESTINY-Breast04 ”試験。

日本発のTrastuzumab deruxtecan(以下商品名エンハーツ)
が既治療のHer2-low(後述)がんで、対照群よりPFSやOSはどうか
というIII相試験。
既治療群はほとんどが3ライン以上の治療を受け。
ホルモン陽性はCDK4/6阻害薬を7割受けていて、
何らかのケモを100%近く受けている
対照群は標準治療の何らかのケモ単剤の治療
(エリブリンが一番多かった)

Her2-lowというのは従来のHer2ポジティブに対して
Her2-lowということで、
要するに今までは
IHC Her2 3+ もしくは Her2 2+ かつFISH + 
がHer2ポジティブとされていたわけである.
これは理由があって,これら以外の群では
従来のHer2療法では有効性が示されなかったからである。

しかし、エンハーツのI/II相試験でこれらに入らない
IHC Her2 1+や Her2 2+ でも FISH -
という’Her2-low’な群でもエンハーツは効くのでは?、
と期待されてこれらの群でⅢ相試験が組まれたわけである。

結果はASCOの記事を参照されるといいが
(論文よりこちらの図の方が見やすい)
エンハーツの勝利。(HR0.5ぐらいだから乳がんの試験としては圧勝)

このまさしく結果は衝撃的で
”Her2-low”という新たな治療カテゴリー分類
作ってしまうという、教科書を文字通り書き換える試験である。
(およそ4割から5割の再発乳がんの患者の治療が書き換わる計算と)

https://twitter.com/IlanaSchlam/status/1534149465841582084

これが、現在地ということだが、おそらくここ数年で
術前や術後療法、維持療法にも入ってくるだろうと
予想されるので、このアルゴリズムもすぐ変わってくるだろう。

ホルモン陰性(ようするに以前はTNとして扱われていた群)
でも結果はポジティブ。

TNに今まで入っていたホルモンレセプターネガティブ兼Her2-lowは
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2028485
この試験でTN既治療乳がんで圧倒的な結果を示した
同じくADC薬 sacituzumab govitecan との使い分けが難しそうですね、
とディスカッションであり。
(作用点は違うので、交叉耐性は?くっついている薬は近いが…)

もちろんよその腫瘍種でもほうっておかれるはずがなく
今回のASCOでは
https://dailynews.ascopubs.org/do/10.1200/ADN.22.201048/full/
胆道がんでの発表があり、これも結構promissing
(Her2 positiveほどではないが、Her2-lowでも効いている症例はある)

https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04482309
という試験が走っていて
・胆道がん ・膀胱がん ・子宮頸がん ・子宮体がん
・卵巣がん ・膵がん ・希少がん
という対象でエンハーツが試されているようである。

副作用としては意外と血球減照や嘔気があるのはやはり抗がん剤が
くっついているからか。
以前から言われている間質性肺炎に関しては
大分対応方法が整備されてきているが、やはりG5の方はいる。

時代がまさに変わった、そんな試験でした。
エンハーツはまだまだ未来を切り開いていく可能性が高いです。

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