お勉強197:心臓関係大ネタ(Hodgkinリンパ腫

Hodgkinリンパ腫は本当に照射が必要か?
という事については様々な議論がある

放射線治療の有益性に関する
エビデンスは今回紹介するRAPID試験だけでなく
EORTC/LYSA/FIL H10試験およびGHSG H16試験で報告されている。

ただし、PFSは3~5年間のRTの価値を示しているが、、
放射線治療の効果を総合的に評価するには、
後期毒性を考慮する必要がある、というのは重要であるのは間違いない。

初期疾患制御の改善が証明されていることと、5~10年を超えて発生し、
長期的な健康と生存を損なう可能性のある
放射線治療の毒性とのバランスを考慮する必要がある

HL生存者の中で、単一臓器の放射線治療に関連した
死亡原因の第一位は、歴史的に心臓死であった。
IFRTでは、心臓の線量はマントル照射に比べて低いが、
IFRTで個々の心臓部分が受ける線量の詳細な説明は発表されておらず、
RCTコホートにおける結果としての心血管リスクの予測もなされていない。

そこで、今回はRAPID試験でのIFRTを受けたHL患者が受けた
心血管放射線量を定量化し、(可能であればCTSから)
それを用いて放射線関連CVDの絶対的リスクを予測した

RAPID試験は、2003-2010 年に行われた試験で
対象患者の年齢は中央値 34 歳。
早期Hodgkinリンパ腫を対象としたRCTで、
ABVDを3サイクル投与した後、PETスキャンで
metabolic CRが得られた場合に、
放射線治療を省略できるかどうかを検証する試験。
(PET+の場合はIFRTをする)

結果としては。
無作為に割り付けられたすべての患者を考慮すると、
3年間の無増悪生存期間(PFS)は両群間で差がなかったが
(NFT(照射なし群) 90.8% vs IFRT 94.6%、P = 0.16)。

割り付けられた治療を受けた患者のみを考慮すると、
放射線治療の有益性は有意であった
(NFT 90.8%対97.1%、6.3%の絶対的減少、P = 0.02)

という結果だった。


30年の心血管系死亡を
心臓全体・左室・弁・総頚動脈の線量
アントラサイクリンの量から
イギリスの一般の人よりどのくらい脳梗塞や心臓疾患が増えるか予想。

PET陰性の患者の心臓線量の中央値は4Gy
縦隔外0.3Gy :ほとんどの人が1Gy以下
縦隔浸潤ありで7.8Gy:かなり幅がある(0.8-24Gy)
亜部位別には肺動脈弁と洞房結節が高かった。
総頚動脈の線量中央値は20Gy(片側か両側かで大分差がある)

PET(-)症例でIFRTを受けた心血管の予想死亡率は5.02%
一般集団の予測値は3.52%で
アントラサイクリン化学療法による絶対的過剰リスク0.94%
IFRTによるさらに0.56%が加わった。
IFRTによる絶対過剰リスクは、
虚血性心疾患(0.36%)と脳卒中(0.14%)が主な原因であった。

個々の患者の放射線関連リスクを考慮すると、
予測される30年間の絶対過剰リスクの中央値は0.26%であった。
(虚血性心疾患、梗塞、そのほか心疾患、弁疾患の順で多い)
個人差は0.01%~6.79%。15%の患者ではリスクが1%超
線量依存性が明らかに認められる

IFRT療法を受けたPET(-)の心血管有害事象の個人の
(死亡しないものも含める)
30年予測リスクは平均35.8%(range7.7%~86.8%)
その内訳は、一般人口からの予測リスクが22.9%、
アントラサイクリン系化学療法による絶対的過剰リスクが6.7%、
IFRTによる絶対的過剰リスクがさらに6.2%。

IFRTによる絶対過剰リスクは、
虚血性心疾患(3.28%)と脳卒中(2.31%)が主

ただ、中央値より線量が低い患者では(特にヘミネックなどの場合)
メリット>デメリットで、十分価値があるだろうとのこと。
欧米で多い縦隔のHodgkinリンパ腫はまだ検討の余地あり。

今後の展開としては
・プロトンや深吸気照射などでさらに線量は下げられるだろう
・アントラサイクリンは放射線治療と相乗して
 心臓有害事象を増やす。場合によってはRTより寄与度が高い
・再発した場合のケモや移植などのことも考えると
 今回のRTの推定リスクは過大評価かもしれない

ただ、時代は免疫チェックポイントで
ABVDやRTの時代は終わりを告げつつあるのかもしれません
ブレンキシマブベドチンの天下はホントにわずかな間かも

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