お勉強419:ステロイドと免疫チェックポイント阻害薬
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2811138
(OPENです)
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療を受けている患者
ではしばしば(というか頻繁に)免疫関連有害事象(irAE)
が起き、結構な割合で全身性にステロイドの投与が
必要となる。これに限らずしばしば背景疾患でも
ステロイド投与があるわけだが、ステロイド投与は
当然抗腫瘍免疫も落とす。
→全身ステロイド投与(特にその時期)と
ICIの効果を調べてみました、という論文
いわゆる退役軍人のデータを使用。
2010年1月1日から2021年12月31日の間にがんに対して
ICIを受けていた退役軍人20163人というメガコホート
患者を
・ステロイドを投与されなかった患者
・irAEのために全身性ステロイドを投与された患者
→ステロイドを使った後にICIを再投与したかでさらに分類
・irAEに関連しない理由でステロイドを投与された患者
でまず分ける。
ICIは抗 PD-1/PD-L1/CTLA-4 抗体
(単剤使用か、PD-1+CTLA-4の複合免疫療法のようだ)
化学療法併用は入っていないよう
そのほかのステロイド使用は、ベースライン使用、
緩和または予防のため、irAEに関連しないものとした。
(投与形態は問わない)
その他のステロイド使用パターンはすべてirAEのためとした。
プライマリーエンドポイントは全生存期間。
(ICI開始からラストフォローまで)
ICI開始後5年間追跡。
Kaplan-Meier生存解析を行い、
有意性を判定するためにペアワイズログランク検定
リスクはCox比例ハザード回帰を用いてモデル化
ICI治療中に全身性ステロイドを投与されたのは12221人
投与されなかったのは7942人
irAEと診断された(と思われる)患者は、
そうでない患者と比較して全生存期間(OS)が有意に改善。
・OS中央値[IQR]
17.4[6.6~48.5]ヵ月 vs 10.5[3.5~36.8]ヵ月
aHR:0.84;95%CI、0.81~0.84 P < 0.001)
irAEの種類では皮膚関連が一番生存が長く、
逆に肝関連のものは短かった
irAEに対するステロイドの全身投与を受けた患者では、
irAEに関連しない理由でステロイドを投与された患者、
ステロイド治療を受けなかった患者と比較して、
生存期間の有意な改善が見られた
OS中央値[IQR]、
21.3[9.3~58.2]ヵ月
vs 13.6[5.5~33.7]ヵ月
vs 15.8[4.9~未到達]ヵ月
P<0.001
しかしirAEのためにステロイドを投与された患者において、
早期にステロイドを使用した患者
(ICI開始後2ヵ月未満と定義)は、
ICI治療を継続したにもかかわらず、
ステロイドを2か月後以降にirAEに対して
使用した患者と比較して生存期間が相対的に減少。
(2か月より後にステロイドを使っていて、ICIを再開した群が
一番生存が長く、逆に2か月以内にステロイドを使って
ICIを再開できなかった群が一番予後が短い
残り二つはほぼ同等。下記参照)
二か月以内にステロイドvs.二か月以降にステロイドで、
ICI中止例のOSの中央値[IQR]
4. 4[1.9~19.5]ヵ月
vs 16.0[8.0~42.2]ヵ月
ICI継続例のOS中央値[IQR]
16.0[7.1~未到達]ヵ月
vs 29.2[16.5~53.5]ヵ月
irAEに対するステロイド全身投与は、
非ステロイド投与やirAEに関連しない理由によるステロイド投与と
比較して、生存率の有意な改善と関連。
※COPDの増悪などにステロイドを使っても
ICI後の予後には関係しない、という報告もあり、
今回非irAEにステロイドを使って予後が悪くなったのは
脳転移などに緩和的にステロイドを使った
症例が入っていたからでは?と筆者らは推測している
irAE管理のためのステロイド全身投与は、
生存率の悪化とは関連しなかったが、
ステロイド投与のタイミングが重要。
ICI治療開始後2ヵ月以上の投与はその後の
ICIの継続または中止にかかわらず、OS良好
特にICI再開できると予後が良い。