お勉強365:NSCLCオリゴ病変ネタ

肺がんオリゴメタに対しての日経メディカルの記事。
貯金していた肺がんオリゴメタの記事と、それを踏まえての私見。

https://www.thegreenjournal.com/article/S0167-8140(23)00219-0/fulltext

EGFR-TKIとSBRTを加えた戦略の論文

上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)は、
EGFR変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して
大きな治療効果を発揮するのはご存じの通り。
しかし多くの場合耐性獲得により、EGFR変異を有するNSCLC患者に対する
EGFR-TKIの生存利益は大きく制限される

定位放射線治療(SBRT)+EGFR-TKIの有効性と安全性を評価する試験

前向きランダムII相試験。
中国武漢の4つの異なる病院のstudy。
組織学的にEGFR感受性変異(19delもしくはL858R)を有する
(co-mutationもそれぞれ10%ぐらい)
NSCLCステージIV(オリゴメタ)

ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ
(オシメルチニブはこの時期は中国で未承認??)
のファーストラインを受け、
3カ月後に病勢安定または部分奏効を達成した患者が対象
(ほとんどの病変はこのあたりで縮小のピークなので
 この時期にしたとの記載あり)

SBRTとEGFR-TKIを併用する群とEGFR-TKI単独治療を受ける群に
ランダムに割り当てられた(1:1)。
併用群では、異なる腫瘍部位に30~50Gy/5Frで照射。
胸部は造影4DCT CTV=GTV ITVに3㎜でPTV
(照射部位はいわゆる主治医任せらしく、どういう基準で
 照射対象が選ばれたかは不明…)
原発のみ43.3%
転移のみ16.7%
両方 40%との記載あり
※放射線治療中もTKIは継続(肺に照射でも):ここはオシメルチニブ使うときは要注意か。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、
副次的評価項目は全生存期間(OS)および安全性。

結果
2018/5/4から2019/12/20に、
74人の患者がスクリーニング、そのうち62人の患者が登録
この類の試験にありがちなslow accrualで両群31人で解析
SBRT+EGFR-TKI群にランダム化された
1名の患者が治療中にSBRTを拒否、
結局SBRT追加群30名とTKIのみ群31人とでPFSなどは比較

フォローアップ中央値は29.4カ月
EGFR-TKI群とSBRT併用群のPFS中央値は
9.0カ月対17.6カ月(HR=0.52、95%CI 0.31-0.89、P=0.016)
OS中央値は23.2カ月対33.6カ月(HR, 0.53 95%CI 0.30-0.95; P = 0.026)
PFSは原発のみ照射群が一番良かった。
(おそらくかなりバイアスがかかっている。
 遠隔転移がTKIで消えている群ととるべきか)
転移のみ、転移と原発療法はPFSに差なし
グレード3以上の毒性は両群ともに観察されず、
グレード2の有害事象は
EGFR-TKI+SBRT群では50%
EGFR-TKI群では45.2%
ほとんどTKIの有害事象(肝酵素上昇、皮疹、下痢など)の印象

筆者らの結論としてはSBRTの追加により、
EGFR-TKIに対する獲得抵抗性の発現が有意に遅延し、
患者のPFSおよびOSが延長された。という結論

照射部位決定のプロセスが非常に謎なので
何とも言えないが、病変があるところにしか
当てないだろうから、TKI完全に効かないところにSBRTすると
予後が改善する、ととるべきか。

https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/219083

PD-1/PD-L1で残ったOligo-residual disease(ORD) を
局所療法(ほとんどSBRTか)行ってみました。
こちらは非小細胞肺がんが対象

ICIで6か月以上落ち着いていた人が対象。
ORDは3臓器5個以内の広がりと定義
それ以上ならmultiple residual disease (MRD)と定義
ORDはICI開始前からあり、最初に進行した部分に行う
OSとPFSがエンドポイント

318人もエントリー
ORDは38.4%MRDは61.6% とうぜんORDのほうがOS長い
ORDが出てきた人のICIのベストレスポンスは4M
50%以上の初期病変進行が最初からあった残存病変であり
局所療法のrationaleとして考えられる
ORDのうち1/3ていどが局所療法を受け、
局所療法を受けた人のほうがPFSもOSも長かった。
局所療法がPFS/OSの独立した因子
というわけで、もぐらたたきと言われようとSBRT攻撃は有効か?

私見


・いろいろ意見はあるが、局所治療をオリゴ病変に行うことで
 利益がある患者群は明らかに存在する
・選別するなら、やはり個数、ということになるのだろうが、
 以前記事で(お勉強327~330)も扱ったが
 カットオフ値を決めるのは不可能
・いろいろ試験はあるが、前立腺がんとNSCLCはかなり
 結果がいいような雰囲気を出している。
・個人的には今のfirst line は全突込み時代、
 よく聞くfirst lineが再発して
 (それがde novoだろうとなかろうと)
 再発箇所が1~2個であれば、そこを
 局所治療していくのは、今後の主力となる治療と思う
 というのも、second lineになった瞬間
 かなり負けゲームの様相が出てくるからである
 「ほかの病変は抑えられているが、
  抑えられないクローンがちょっとある」
 という状態なら、そのクローンをSBRTなり、手術でとるなりして
 first lineの治療を続けていく、ということでPFSは
 確実に伸びるであろうし、
 それが案外一番あるシュチュエーションと思っている。
・副腎転移(特に左側)はSBRT難しい。
 可能であれば、手術してほしいところ。
 右側は解剖次第。

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