お勉強117:心臓ネタ×2
https://www.redjournal.org/article/S0360-3016(21)00174-7/fulltext
放射線治療による様々な晩期有害事象は
線維化の影響がある、という話は割と有名だが、
病理的には証明されていても、
画像では「?」と思っていたのだが…
心臓の造影MRIでは心筋の繊維化を測定する
ことができる、というのは割とメジャーらしい
造影T1の遅延が昔のスタンダードだったがさらに
最近はもっと早期に見れるECVというのが
あるみたいで、それでRT後の心臓の繊維化を
見てみました、という話。
https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/ziosoft/seminarreport/190801
↑が参考になる。
心臓のCTでも可能になっているらしい
というわけで、食道がん術前照射41.4Gy/23Frをおこなった
群と、術前照射せず手術だけ行った群とで
心臓の繊維化をより鋭敏に示すECVで比較
いわゆる心筋シンチのbull`s eye viewみたいに
左室壁を区分分けして、コンツールして
(大変そう)心臓の繊維化を見ている。
結果は非常にクリアでいわゆる高線量域
(心基部、中隔、後壁)がガッツリ繊維化が
強いという結果。
しかも線量と繊維化の程度はリニアーな
関係性がありそう。
治療前のデータがないとか、
ケモラジあり群となし群でベースラインが
違うとか、Nが少ないとかいろいろ
リミテーションはありますが、
少なくとも線量依存性に心筋に
悪い影響が出る、
(ECVは心臓の合併症の予測になるとのこと)
というのをクリアーに示しているとても
優れた研究とおもいます。
画像診断の最前線と
放射線治療の最前線、臨床の最前線の
コラボが大事なんだなぁと感心。
この結果を見ると、やはり41.4Gyでこれなのに
60Gyは?しかも2GyFr! とか
陽子線、やっぱりええんちゃうん? とか
思ってしまいます。
不整脈を止めるのにSBRT,ってのは
逆にこれを使っているんやろうな。
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/article-abstract/2773837
こちらはNSCLCの根治で心臓をかなり細かく
コンパートメント(冠動脈おのおの、左室、左房など)
でコンツールし、それぞれの線量を
実際の心血管のイベントの有無で比べてみました。
という論文
カットオフはROC曲線から出しているようです。
LADのV15>10% が結構効いていて、
とくに心血管既往の「ない」患者では、
心血管有害事象と全死亡の独立した推定因子であったよう。
一方左室V15Gy>1%は、心血管既往のある患者で
予後の推定因子であったと。
放射線治療医としてはなぜLADが影響しやすいのかが「?」
(不整脈とかは右冠動脈の方が関連しそうやし)
今までは心臓のMean doseとか
心臓全体のデータが一般的な
指標であったわけですが、
コンパートメントごとの
コンツールから色々いうのが今後のはやりに
なるんでしょうね…
肺線量と心臓線量と腫瘍線量と
それぞれのバランスは今後、難しいところですね…
あと、だから手術だ!
というのは危険で、手術した場合と
マッチングをしっかりして
(特に既往のある場合とない場合のリスクは逆と思う)
それぞれのメリット、デメリットを加味すべきですね。