お勉強427:頭頚部がんに予防照射は必要ない??
頭頚部がんの放射線予防照射を省こう
という試み。
通常、頭頚部がんの放射線治療では
良くオカルトの転移がある部分に予防照射を行うのが
通例である(手術からの経験知として行う場所が決まっている)
通常40-50Gy/20Fr相当を照射するわけだが、
今回はAIも使って「明らかに転移LN」「LN転移かもしれないところ」
のみに照射を行い、領域再発が`0%`であったという
放射線治療医にとっては衝撃の結果。
頭頚部がんとはいっても
・喉頭がん
・中咽頭がん
・下咽頭がん
に限った報告
声門癌cT1-2N0は除外
基本的にCT/MRI/PETを撮影/撮像する
ステージが浅ければ放射線単独での治療(加速照射なども含め)
が行われているよう
原発巣の(GTVp)は身体診察、画像で決定
原発巣のCTV(CTVp)はGTVpに5~8㎜マージン設定
(骨などの構造物は除外)
リンパ節のGTV(GTVn)は短径10㎜以上(Level IIは1.5cm以上)
内部造影効果なし、SUV3以上などの条件で決定。
一般的な予防照射はなし。
プロトコルで、‘suspicious or potentially suspicious‘
リンパ節として下記のリンパ節を設定。
・なんらかの方向で17㎜以上のもの場合
・FDG取り込みが内頸静脈血より大きかった場合(視認上)
・結節が丸みを帯びているか境界が不規則であった場合
・サイズに限らずルビエールLNが認められた場合
・下咽頭原発にレベルVI確認された場合
はsuspicious LNに含む
potential suspiciousリンパ節は
・罹患リンパ節と同じLevelにあるが
他の基準を満たさないあるいは不均一な増強で
罹患リンパ節と同Levelまたは隣接するLevelにある場合、
これらの結節の扱いは医師の裁量に委ねられたが、
実際にはほとんど含まれていたと。
少なくとも2スライス(厚さ3mm)にわたり、
これらの基準のいずれにも当てはまらない非浸潤性リンパ節は
別々にコンツールし、PETとCTからモデリングされたAIベースで
悪性の可能性が50%以上と評価されたリンパ節はすべて疑わしいと
ラベル付けされ、治療された。
AIで判定されたものは基本的に治療を行ったが、
Level Ib以外のLN陰性の場合は、
Level Ibは放射線腫瘍医の判断で治療された。
CTVp・GTVからPTVへのマージンは5mm。
疑わしいリンパ節および疑わしい可能性のあるリンパ節のPTVは、
OARに隣接する場合は1mmに縮小。
原発巣と転移巣のGTVから作成したPTVには70Gy/35Fr
CTVpのPTVは35分割で63Gy/35Fr
疑わしいリンパ節および疑わしい可能性のあるリンパ節のPTVは、
66.5Gy/35Fr
治療はVMATでおこなった
評価としては治療後11~14週でPET-CT
CT評価は6,12, 18, 24, 36 か月後。
PROや飲み込みの指標のMDADIとかも図っている
https://eatspeakthink.com/wp-content/uploads/2018/08/MDADI.pdf
通常の照射(と今までされてきた群)と線量比較などをしている
患者年齢中央値は62歳 白人男性が主。
p16陽性中咽頭がんが6割程度あり、結果解釈に注意
(4割程度はタバコもなしの予後良好群と)
併用薬剤はCDDPが主
生存者の観察期間中央値33.4か月で
(放射線終了後31.6か月)で2年の
OS91% PFS 82%
中咽頭は2年OS/PFS 96%/90%
喉頭・下咽頭はOS/PFS 79%/63%
4割の予後良好中咽頭がんは
2年OS/PFSは100%/92%
局所領域再発・局所再発(原発の再増大)
領域再発(リンパ節領域再発)・転移再発(鎖骨より下)はそれぞれ
11%/9%/3%/6%
中咽頭では
6%/4%/2%/9%
中咽頭予後良好群は
4%/4%/0%/4%
下咽頭・喉頭は
21%/21%/5%/0%
2件リンパ節再発があり、
一例は治療を行ったリンパ節が
局所再発とともに増大
もう一つは遠隔転移とともに
照射野外リンパ節が増大
よって、照射野外リンパ節単独再発はなし
非常に当たり前だが、OARの線量はこの方法では
非常に低くなり、皮膚のG2副作用は1割、G3以上はなし
PEGは作っている人はいるが、再発しなかった例では全例抜去。
MDADIスコアも2年でほぼ治療前と同等、もしくは良くなっている。
(discussionでは今までの試みの中で圧倒的に素晴らしい
結果であると主張)
筆者らはENI単独領域再発はなかったし、
あったとしても手術のサルベージが容易にできるメリット
(そのあとの照射も)を上げている。
ENIを省くことによってのメリットとして
ENIして咽頭収縮筋を落としたstudyより
このENIを省く試みのほうが、ずっと咽頭収縮筋を
守れたとも主張。
当然だが、耳下腺線量も低い(ENIする陽子線治療よりも!)
予防線量や総線量を減らすよりも、OARの線量を下げれた
とも主張。
AIを治療方針にに前向きに使ったという点でも
画期的であると述べている。
どこまで、この結果に貢献したかは
疑問符が付くが、AIの陰性的中率は高かったようなので
(陽性的中率は低かったと)それが効いたのでは?とも述べている
免疫療法を追加で受ける際に
ENIを省くことによるメリットに関しても主張
(これは個人的にも注目している点)
今までのCRT→ICIがうまくいかなかったのは
生物学的実験でマウスでドレナージリンパ節照射すると
ICIの効きが悪くなったという論文を引用して、
ENIを省くことでこうした問題を解決できるとしている。
限界として対象疾患がそもそも予後良好であったのでは?
とかAIの外的妥当性は?とも言っているが、
AIに解剖学的情報や、原発巣との関連をinputすることで
将来的にはAI baseのオートコンツールができる未来も指摘している。
・予防照射を省いても成績は大きく低下しなかったこと
・AIを使用した(今回は限定的だが)コンツール
・QOLなどの圧倒的改善
など読みどころたっぷりの論文でした。