ちしお

14才
下着を汚す血を待ちわびた
一足早く大人になった少女たちが
心底、羨ましかった

20才
不安定な周期に悩まされた
子どもができない体質かもしれない…
動悸が早まった
心臓から流れ出た血
勢いよく巡った感覚は鮮明

28才
検査薬を使った

33才
あの人に別れを告げた
引きちぎられる痛み
情けない血潮

37才
それまでの不順をあざ笑うかのように
本領を発揮し始めた
前兆の頭痛から始まり、
のたうち回る苦しみ
血、知、地、値、乳、ち…
いたい、いたいのだ

40才
血のような夕焼け
神社の木陰にいたお腹が大きくなった猫を見た
どこで諦めるのだろう？
声が聞こえ始めた
いつ、産まないことを決断するのだろう…と
決断。相手がいるいないの問題ではない。
わたし自身の下す、決断。

48才
律儀にもやってくる新月のあたりの儀式
痛むことが恐ろしくて
薬が増える
わたしの体から
とめどなく流れ出る血潮
もはや産むことのない女の体
どう受け止めたらいいのかと
どす黒い塊を嘲笑する

あんなに待ちわびた
ちしお
こんな未来が待っていた
ちしお
泣くでもなく
笑うでもなく
ひたひたと
したたる
わたしのちしお