無言の間の圧力
数年前から様々な「間」に興味がある。
絵画の中にある空白の「間」、音楽の中の無音による「間」など。
人の喋り方にも「間」が含まれている。
以前にお世話になっている実業家の方とそのスタッフの方達と一緒に旅行に行った時のこと。実業家の方は複数の会社を経営して大きなイベントの企画運営などもやっている才能ある方なので、一緒に過ごしていればいろいろと学べるのではと思っていた。
実業家の方の運転する車で移動中、詳細は忘れてしまったが、その晩泊まるホテルへの到着時間が遅くなるのでお願いしてあった夕食をキャンセルするとか何とかの理由で、彼のスタッフの女性がホテルに電話した。
その際のホテル側の態度があまり良くなく、一度電話を切った。
実業家の方が「今度は僕が電話するから」と言い、少し後に再度彼が電話した。
ホテル側の声は聞こえなかったが、こちらの要望を伝えてから先方がそれは受け入れられないみたいなことを伝えたらしい。すると彼は「それはひどいな〜」と穏やかに答えてからしばらくだまった。
無言の間、、、、、、、。
間に耐えられなかったホテル側が再び喋り出すと彼は頷いて「ああ、わかりました。ありがとうございます!」と言い、こちらの要望を聞き入れてもらうことに成功した。
彼の喋り方は決して声を荒げることなく穏やかだったが「無言の間」に強い圧力を感じた。
会話の中に間ができると、どうしても埋めたくなってしゃべってしまうことがある。ホテル側のスタッフは間に耐えられなくなって思わず譲歩の言葉が口をついて出てしまったのだ。
後から彼に「あの間はわざと作ったんですか?」と聞いたらその通りだと答えた。でもいつもあの手法が通用する訳ではないと言った。あの時はホテル側のスタッフが交渉に弱い人だったのだろう。
「間」を使った交渉術だ。
僕はなるほど〜と感心した。
誰でも人生の中で交渉が必要な時がある。こちらの要望をどうしても聞き入れてもらわないと困る時がいつか来たら、
秘技!無言の「間」
を使ってみよう。