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狂犬病は撲滅できた。子宮頸がんは撲滅できるか。

 三年前、私は子宮を摘出した。気づいたときには遅く、私の子宮頚部は自壊して崩れ、臭気を放っていた。ぼろりと零れたカリフラワー状の白屑をこの手で受け止め、浴室の排水溝に捨てた。それが育ったがんの一部だと気づいたのは一年経ってからだ。
 CCRTを受けた。切除できる段階を超えた者が受ける、抗がん剤と放射線を同時にやる方法だ。半年後に私は幸運にも小さくなったがんを切除することができた。

 主治医の元に今も通っている。リンパ浮腫などの後遺症もある。様々な不調を訴えると先生は寂しそうに笑う。命が助かったことが奇跡なのだ。だが、あの治療の中で私は一度死に、子を宿せない体として生まれ変わった。

「小学校6年~高校1年の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ」

 HPVワクチン接種のリーフレットが婦人科待合室に置かれている。

「がんってたばこでなるんでしょ?」
「オトナがなるものだから私は関係ない」
 と思っていませんか?

 これを持ち帰る人がどれくらいいるだろう。その疑問を証明するように、スタンドに収まったリーフレットの束は少しも乱れていない。

 実はウイルスの感染がきっかけでおこる〝がん〟もあります。その1つが子宮けいがんです。HPVは女性の多くが〝一生に一度は感染する〟といわれます。感染しても殆どの人ではウイルスが自然に消えますが、一部の人でがんになってしまうことがあります。

 こんな遠回しで通じるのだろうか。
『セックスするとまずウィルスに感染します。その後がんになるかならないかは体調と運次第です。』
 これくらい書けばいい。性教育を学校でやるなら男女ともに教えるべきだ。実際にそういう国はある。セックスには命に係わるリスクがある。女子だけに教えても問題は解決しない。子宮頸がんは、唯一根絶が可能ながん。ワクチンで抑えきれるところは狂犬病予防に似ている。

 一生処女でいれば感染しない。乱暴だけど話は早い。性行為と子宮頸がんの因果関係が広まらない。コンドームは避妊のため? 違う。最も恐ろしいのは感染症。でもHPVに関しては粘膜が直接触れなくても感染する。ゴムをつけていても予防効果がないと知ったときは本当に驚いた。そして絶望した。

 再感染が怖い。だからもう一生セックスしないと決めた。二度と人と触れ合わない。そんな怯えと怖れに染まった。

 防げるものであれば防いでほしい。それが心と体の一部を失った私からの願いです。

ありがとうございます!!!!!!がんばります!!!