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vol.17|わんちゃんにも終活があれば。初めての看取りで感じた、情報収集の難しさ。

天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。

飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。

ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。

大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。

vol.17となる今回は、ゴールデンレトリーバーのゆうじろうくんのお話をお届けします。

犬種:ゴールデンレトリーバー/男の子
享年:6歳
語り手:N.Oさん


とにかく大人しくて賢い。血統書を見て納得しました。

ゆうじろうくんと出会った時のことを教えてください

元々ゴールデンレトリーバーを飼っていたんです。その子が亡くなってから1、2年経った時に、父親と行ったホームセンターで出会ったのがゆうじろうでした。売れ残ってしまっていて、ペットショップのゲージがいっぱいになるくらいの大きさでした。

料金もだいぶ下がって最終の売り出しになっているのをみて、家族と「これもご縁だな」と話して連れて帰ることにしました。

大型犬を飼っていると、サイズ的に人間がもう一人いるような感覚でした。なので、先代犬を無くしてから余計に小型犬よりも大きい子に目がいってしまって……。そんな背景もあり、すぐにお金を握りしめて迎えに行きました。

出会った時の印象で、覚えていることはありますか?

とにかくおとなしい子でした。それまでわんちゃんに対しては、はしゃいで走り回るイメージを持っていました。ですが、ゆうじろうはおとなしくて、自由に動けるようにしてもゲージから出てこないようなタイプ。

そして、すごくお利口な犬でした。後から知ったんですが、「警察犬きなこ」の兄弟犬だったんですよね。血統書を見た時に、きなこと繋がっていることに気がついて、おとなしくて賢い血筋だったんだと腑に落ちました(笑)

なので、しつけで困ることもほぼありませんでした。大きくなってお迎えしたけど、トイレも含めて何も手がかかりませんでした。先代はすごく手がかかる子だったので、こんなにも違うんだなと驚きました。

この子だったらセラピードッグみたいな仕事もできたんじゃないかな、と思っています。自分にそういう知識があったらよかったな。

ゆうじろうくんが好きだったことを教えてください。

人の近くで寝ているのが本当に好きな子でした。勝手口のところで寝ていたり、母が料理をしているキッチンの足元で寝ていたり。もっと動けば良いのにって思っていました(笑)

人が座ったら横に座る、人が動けば後ろを付いてくる。そんな姿を見ると、やっぱり可愛かったです。

あとはお散歩も、ご飯もめちゃくちゃ好きでした。なんでも大好きで、人がご飯を食べている時は、おこぼれをもらえるのをずっと待っていたりもしました。

ご飯を食べなくなったことで気づいた病気。なるべく辛くないようにしたいという家族の思い。

亡くなった原因は病気だったとお伺いしました。

癌で亡くなりました。ある日、いきなりご飯を食べなくなったんです。「わんちゃんがご飯を食べないって相当だよな」と思って病院に連れて行き、血液検査をしてもらうと、すぐに癌だとわかりました。

「ご飯を食べなくなっているということは、それだけ進行が進んでいるんだろうな」とは思っていましたが、どうにか癌を取りきれないかと考えていたんです。大きな動物病院でも検査をしてもらいましたが、いろんなところに転移していることがわかりました。

家族全員が医療関係者ということもあり、病気に対して理解があったので、延命ではなく、痛みや苦しみを取り除いてあげる方針で話し合いました。ご飯に漢方を混ぜてみる方法を試したり、点滴に通ったりもしました。

もっと長く生きてほしいと思う一方で、現実にはどんどん弱くなっていくことが見えたので、気持ちが追いつきませんでした。心のダメージは相当大きかったです。

最期はご家族のみなさんでお見送りしたのでしょうか?

大学生になって家を出ていた私を含めて、みんなが揃っている深夜に亡くなりました。

亡くなる日の朝、今まで聞いたことがないようなすごい声で鳴いていたんです。医療者として人間でそういう痛みが出たら、一般的に今日明日が山場と考えるので、犬でも同じだろうなと覚悟していました。

仕事と介護との兼ね合いに悩んだ日々。今なら利用したい、ペットの介護施設。

火葬までの間はどのように過ごされましたか?

火葬場から段ボールをいただいたので、中に布団を敷いてゆうじろうを寝かせて、好きだったものやお花も入れて、いつも居た場所に置いていました。

先代のわんちゃんの時から、お寺で供養していただくことは家族の意見として一致していました。そう決めていたこともあり、段取りでつまずくことはありませんでした。

火葬をしてもらったあとは、お寺でお骨を預かってもらっています。お家に置いておくと、見ている側としては悲しくなってしまう気もしていて。それよりは、いつも手入れして綺麗にしてもらえて、他のわんちゃんと一緒にいられる方が良いのかなと思って選択しました。

看取りについて用意しておいてよかったことや、反対に難しく思ったことはありますか?

こうしてあげればよかったと思うことはありませんが、仕事については困りました。みんな仕事をしていたので、どうしても家を空けないといけない時間ができてしまって。その時間はやっぱり心配だったので、そこはきつかったと思います。

最後は特に歩けなくなり、オムツをした状態で寝たきりでしたし、心配も大きかったんです。「犬が寝たきりなので仕事を休みます」とはなかなか言いづらくて。一人にしておく時間があったことが、少しだけ心残りですね。

最近になって、家の近くにペットホテルができました。そこで介護の一時預かりや、看取りも一緒にできるそうなんです。病院に入れてしまうとゲージの中で寝ているだけになってしまうので、「それは違う」と思って家で面倒をみようと決めていましたが、その当時にそういった施設があれば、入れてあげられたのになと思います。

3代目の愛犬が少しずつ埋めてくれた心の穴。

悲しみとはどう向きあわれてきましたか?

やっぱりすぐには死を受け入れられませんでした。

その空いた穴を埋めてくれたのは、新しいわんちゃんだったんです。とはいっても、新しい子をお迎えすることは亡くなった子に悪いという気持ちもあり、「すぐには飼わない」と家族で話していました。ですが、たまたま買い物に行った時に売れ残っているわんちゃんがいたんです。ゆうじろうの時と同じで、「ご縁だね」と連れて帰ることにしました。

すぐに飼うのは前の子達に悪いと思っていましたが、経験してみてそんなに悪いことではないかなと思いました。わんちゃんを大事にしてくれる家がその子にとってもできるし、後ろめたいことではないと。元気のない家族を見ているのも辛かったので、新しい子を迎え入れて元気になれるならいいんじゃないかと思うようになりました。

新しい子を迎え入れて、ご家族の心境は変わりましたか?

最初は、いい子だったゆうじろうとやんちゃな今の子を比べてロスになっていました。性格の差に圧倒されることもあり、だいぶ悩んだんです。

ただ、家に帰った時に、迎え入れてくれる子がいない悲しさがなくなってよかったなと思います。

大事にしてあげたいという思いがあれば、きっと愛犬は幸せだと思う。

愛犬の見取りに関して、当時は知らなかったけれど今使いたいサービスや、あったらいいなと思うサービスはありますか?

先代のわんちゃんは突然亡くなってしまったので、ゆうじろうが初めての看取りでした。なので、病気から看取りまで、どういう順番で何が必要になるのかが全くわからない状況で。病気になって、看取るところまでをどう辿っていくかを知ることができれば、心の準備ができたんじゃないかと思ったんです。

まとまっているところがあるわけではなかったので、当時はInstagramを見ていました。いろんなケースがあると思いますが、そのケースを知ることができれば飼い主として心のゆとりができると思います。

人間でいう「終活」のような考える機会と、色んな情報を見れる場所があれば、もっと悔いのない看取りになったかもしれません。

今、愛犬と一緒に過ごされている方に伝えたいことがあれば教えてください。

大事にしたいという気持ちがあれば、それだけで十分だと思います。責任感を持って「色々やってあげないと」という気持ちが大きすぎると、しんどくなってしまうし。

大事にしたいという気持ちがあればわんちゃんは幸せだと思うので、そこまで気張らずに一緒に生活してもらえたらと思います。

〈おわりに〉

わんちゃんの「終活」という言葉が、どこの家庭にも広まれば良いのになと思いました。人に対してはだんだんと浸透してきている言葉ですが、わんちゃんに対してはあまり言われていません。ですが、やっぱり人と同じでいつか亡くなってしまいます。病気になった時、治療をどうするのか、最期はどんな風に看取ってあげたいのか。なかなか元気なうちに考えることは難しいですが、家族でお話しするタイミングがあれば良いのかもしれません。この度はインタビューにご協力いただきありがとうございました。

(聞き手:西澤七海/ライター)

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