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vol.5|お母さんになりたいと思って迎えたからこそ、心の整理は難しい

天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。

飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。

ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。

大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。

vol.5となる今回は、ゴールデンレトリバーのぐりちゃんのお話をお届けします。

犬種:ゴールデンレトリバー/女の子
享年:9歳
語り手:H.Oさん


人は大好きだけど、他のわんちゃんや子どもはちょっぴり怖いぐりちゃん

ぐりちゃんとの出会いについて教えてください

私が戌年生まれで元々犬が好きだったので、犬と暮らすことは、実は小さい頃からの憧れだったんです。ですが、いつかお別れが来ることや、お世話の難しさを理由に両親からは一緒に暮らすことが難しいと言われていました。大人になって自分で責任が持てるような年齢になった時、やっぱりわんちゃんと一緒に暮らしたいと思ってあちこちのペットショップに行ったんです。

飼い始めたきっかけは一目惚れだったという声はよく聞きますが、私もそうでした。他のゴールデンレトリバーもいる中で、私の中でこの子だと思ったのがぐりでした。親バカという言葉の通り、うちの子が一番可愛いとずっと思っているんです。

どんな性格の子でしたか?

人が大好きな子でした。私の友達やお客さんが家に来ると自分から寄っていって、触って〜ってしていました。

特に大人が大好きで、子どもは苦手。怖がりなので、他の犬や猫などの動物も苦手だったんです。散歩に行って他のわんちゃんに出会うと、向こうは寄ってきてくれるけど、ぐりはビクビクして逃げてしまっていました。一度、他のわんちゃんに噛まれたことがあるんです。それで余計に動物が怖くなったんだと思います。

それからはなるべく、他の犬のお散歩時間と被らないようにお散歩に行っていました。なるべく接触しないように気を使っていましたね。

あまり活動的な子ではなくて、おとなしい子だったんです。家の中でおもちゃを噛むのが好きだったり、お気に入りの毛布の上でごろんって寝転ぶのが好きだったり。いつも一緒に部屋で一緒にテレビを見たり、ご飯を食べるときも、自分は人間のご飯は食べれないってわかっていながらも、ずっと見ていたり……。ただ茹でたサツマイモが大好きだったので、それはあげてましたね。

お風呂も大好きで、庭でシャワーをかけてあげるときもありました。川に連れて行ったこともありますが、その時も泳いでいました。そんなにたくさん連れて行っていたわけではないのに、泳がせてみたら泳ぎました(笑)持って生まれた力だったんですかね。

「お母さんになりたい」そう思って迎えたからこそ、出来るだけ自分でやりたかった

いたずらに困ることはありましたか?

子犬の時は目を離すと、開けてほしくないところを全部開けて行ったり、壁紙やカーテンを破られたりもしました(笑)勝手に袋を開けて食べ物を食べようとしたりもして、小さい頃はかなりいたずら好きでしたね。ただ、大きくなってからはいたずらをしなくなりました。やっぱ人間と一緒なんでしょうかね?

ただ、しつけに関してはものすごく楽だったんです。スクールに任せる方や、幼稚園に通わせる方も多い中で、私たちは全部自分でやりました。小さい頃は手を焼いていたけど、どんどんいろんなことを覚えていってくれました。

私自身がいろんなことを自分でやりたいタイプだったので、いろんなことを子どもを育てるつもりでやりたかったのかもしれないと今は思います。というのも、結婚してから最初は子どもがいなかったんです。ずっとお母さんになりたかったんですが、なかなか子どもに恵まれなかった。じゃあ、わんちゃんをお迎えしようかと決めたので、だからこそ色々やってあげたかったんだろうと思います。

娘さんが生まれて、ぐりちゃんの様子はいかがでしたか?

娘が産まれる時、ぐりと娘の関係を含めていろんな心配をしたんです。実際に娘を連れて退院した時のことをよく覚えています。ぐりに娘の顔を見せたとき、すごく不思議そうな顔をしているなと感じました。

うまく言えませんが、ぐりは自分がこの家の子どもだと思ってきた中で、突然小さい子が来て、この人たちがすごく大事にしているんだなと思っているような。ぐりからみた娘が、人間に見えていたのか、子犬のように見えていたのか今でもわかりません。なんとなく、子犬のようにみていたんじゃないかと思っています。

娘が歩けるようになってから、娘がぐりの背中の上に乗ったりもしていました。そんなこと犬は嫌がるはずですが、ぐりは娘を背中に乗せて歩いていたんですよね。写真を撮っておけば良かった!と思っています(笑)

娘がぐりと過ごしたのは4歳くらいまでですが、娘は記憶として残っていると話していました。

信頼できるお寺さんで 家族とのお別れ

最期、看取った時のことを教えてください。

亡くなった原因は、おそらく心臓の病気だと思います。病院ではなくて、自宅の玄関で亡くなりました。それまでだんだんご飯の食べっぷりが悪くなり、もちろん散歩もほとんど行けなくなり、一日の大半を床で過ごすことが多くなっていました。

病院から帰ってきた時、もう本当に歩くのがしんどそうでした。また病院に連れて行ったり、車に乗せたり下ろしたりを考えると、玄関の近くに居てもらうのが1番いいかなと思って、夏だったのもあり、そのまま玄関で寝転んでいたんです。

お医者さんにも色々言われてたので、覚悟はしていたんですけど、本当に動かなくなってしまった時はなんとも言えない気持ちになりました。

私と義理の母親がいる時でした。病院に電話をして先生に来ていただいて、息を引き取ったことには間違いないと言われたので、病院が提携するお寺へ連絡しました。

どんな風にお別れの時を過ごしましたか?

家族みんなでお別れをして、次の日に毛布に包んで連れて行きました。

そこのお寺は、わんちゃんなどの動物の火葬やお葬式もしてくれるし、普通に人間のお葬式もしているようなお寺なんです。人間のお墓とは別に、ペット専用のお墓や火葬場があるところで、珍しいと思います。

病院の紹介だったのでそこを知ることができましたが、あの子がもし突然死とかだったらどうしてたのかなと思うと、やっぱり市に電話していたり、病院を探したりとか、どう動けば良かったかわからないですね。
本当に人間と同じようにお見送りができたかなと思っています。お墓は、人間みたいに1人1人ではないですが、ちゃんと納骨をしてあるんです。

家にお骨を連れて帰る選択もできたのかもしれないと思っています。ですが、本当に人間と同じように焼かれた後、骨を拾って、壺の中に入れられるだけ入れた時、お寺の方にぐりちゃんのお骨は大切にここでお預かりしますって言っていただいたんです。それを聞いて、そうするのがいいんだろうなと思ってお願いすることにしました。

心の整理の付け方は100人100通り

心の整理はどのようにされていったと感じていますか?

お別れしてからの気持ちの整理の仕方については、すごく難しい質問で。インタビューを引き受けることになって、色々と過去のことを振り返っていましたが、実は気持ちの整理のところだけが空白なんです。

新しい子をお迎えすることで気持ちの整理がついたとか、そういう方もいらっしゃると思ったりもしますが、未だに他のわんちゃんを可愛いと思うことはあっても、一緒に暮らすとなると、あの子以上の子に出会えてないと思っているんです。

ただ、私の場合は娘がいたので、娘を一生懸命育てることで少しずつ、ということはあるかもしれません。ぐりが使ってたものとか、ご飯を食べていた容器とかは、ずっと捨てられなかったんです。夫の仕事の都合で引っ越しすることになって、その時に義実家に残して、今も物置に入れてもらっています。

日が経つにつれて、何年も経つにつれて、少しずつっていう感じが私の場合は1番正解なのかなと思います。

犬を飼うことよりも、お母さんになりたかったのがきっかけで、ぐりを迎えています。だから、自分の子どもを亡くしたような感覚なのかもしれないです。

心の整理の付け方は、人それぞれなんだろうと思います。100人いたら、100通りの答えがあるんだろうな。でも、私1人じゃなくて、ぐりの話をできる人がたくさん周りにいたのは、心が沈みすぎずに済んでありがたかったかなと思ってます。

もっとこうしておくべきだったと思うことや、欲しかったサービスはありますか?

この先、私は多分わんちゃんと一緒に暮らすことはないと思います。だからこそ、もっと写真やビデオを撮っておけば良かったと思っています。デジカメの時代だったので、パソコンに取り込んでいたんだけど、パソコンのスペックが変わるごとにうまくデータを移行できなかったりとかして……。プリントしておくべきだったんですよね。

入院する必要がある場合に、家族が一緒に過ごせるような病院があればいいなと思います。ぐりが行っていた病院は、わんちゃんや猫ちゃんがケージの中に個室状態でいる病院でした。ぐりは犬や猫が苦手だったから、家族が誰か1人一緒に泊まってあげることができる病院があればいいなと思います。

最後に今、愛犬との時間を過ごされている方へメッセージをお願いします

犬はすごく賢いし、こちらの思ってることや話しかけたこと、いろんなことを聞いて理解できてると思うんです。ただ、わんちゃんからは言葉が返ってこないですよね。話ができたらどんなにいいかなってすごく思っていましたが、答えは返ってこないけど、絶対聞いてくれてると思うので、いっぱい話しかけてあげてほしいと思います。

やっぱり残念だけど、いつか必ずお別れは来ます。だから、子どもを育てるように、一緒に暮らしてあげてほしいです。

〈おわりに〉

犬を飼いたかったというよりも、お母さんになりたかったのかもしれないと話されていたことが印象的でした。娘さんが生まれてからも、ぐりちゃんへの愛が半分になるわけではなく、本当にたくさん愛を注いで一緒に時間を過ごされてきたんだなと感じています。インタビュー後に連絡した際も「話し足りないくらいのエピソードがある」と教えてくださり、私まで愛情の深さと大事に思っている気持ちに心が温まりました。この度はインタビューにご協力いただきありがとうございました。

(聞き手:西澤七海/ライター)

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