
Vol.19|保護犬としてやってきたチロルとの日々。2代目を迎え入れて、さらに愛が深まっている実感。
天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。
飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。
ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。
大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。
vol.14は、チワワのチロルくんのお話をお届けします。
犬種:チワワ/男の子
享年:16歳
語り手:C.Wさん
保護犬としてやってきたチロル。まるでずっと一緒に暮らしてきたみたいだった。

チロルくんと出会った時のことを教えてください。
保護猫のボランティアをしている友人の繋がりでうちに来ました。家を建てたときに、犬を飼いたいなと思って声をかけていたんです。
「チワワがいるよ」と教えてもらった時、「チワワは可愛いと思えないな……」と思っていましたが、とりあえず連れてきてもらってから決めようと思いました。チロルは、どなたかがお金を払ってペットショップから迎え入れたものの、1ヶ月くらいで育児放棄されてしまったそうです。
チロルが家に来た瞬間、うちの子にしようってすぐに決めました。すごく可愛くて、自分から私や子どもたちに抱っこされに来たりもして。
チロルがまだ8ヶ月くらいの時だったので、夜鳴きがあまりにもひどかったり、相性が悪かったりした時のことを考えて、お試し期間を1週間作ってもらいました。ですが、結局一回も夜鳴きをすることはありませんでした。
まるで、ずっとうちにいたような感じだったので、そのまま引き取ることにしました。
お家に来てからはどんな性格でしたか?
最初に、私がしっかりトイレのしつけをしました。怒ることもあったので、私にはビクビクしていましたね(笑)子どもたちが逃げ場になっていて、チロルのなかの好きランキングは、1位が娘、2位が息子、3位が私でした。
チロルを迎えた時、娘がちょうど受験期だったんですけど、勉強中は引き出しの中にくるっと丸くなって寝て、付き添ってくれていました。息子とは走り回って遊んでいましたね。
ご飯もすごく好きでした。自分のご飯をもらっても、私たちがご飯を食べている横にきて「欲しい欲しい!」と言って、貰った後でゆっくり自分のペットフードを食べているような子でした。ペットフードは誰にも取られないと知っているので。
家族みんなパンが好きだったこともあり、チロルもパン好きになりました。病院の先生にはダメと言われていましたが、食パンの耳などをあげてしまっていましたね。
だけど、ダメって言わないで、あげてよかったなと思っています。
野菜も好きでした。キャベツをスーパーで買ってきて、冷蔵庫の前に置いていた時がありました。マイバッグに入っているから大丈夫だろうと思っていたのですが、気がついたらすごい量を食べていたんです。残骸が残っていてびっくりしたのと同時に、「楽しかったんだろうな」と受け入れました
家族のことが大好きで、誰かにくっついて過ごす毎日。
食べること以外に好きなことはありましたか?
小さいぬいぐるみや、カバンにつけるマスコットを投げて欲しいとよく持ってきていました。投げるとばーっと走って、また持ってくる。腕にトントンと催促するようにぬいぐるみを置いてくるのが可愛かったです。
散歩は、うちに来た当初、朝の5時半くらいと夕方の2回行っていました。私が4時半に起きてお弁当を作っていたのですが、それに併せて一緒に起きて散歩に行く形で。
ですが、ある時「なんでこんなに早起きしていかなきゃいけないんだ?」って思ったみたいなんです(笑)チロルの方が起きて来なくなりました。子供達と一緒に寝ているところを起こしに行っても、知らん顔されるようになって、夕方の散歩だけになりましたね。
チロルは一度、中型犬に噛まれたことがあり、そこから犬が嫌いになりました。散歩で、すごく遠くに犬がいただけで、コースをきゅっと変えるんですよ。最後のお散歩までずっと犬は嫌いで、ドッグランに行っても人間と一緒にいましたね。
ご家族のことが大好きだったんですよね。
いつも誰かにくっついていました。子どもたちが独立してから、私と二人になった時は私の布団で一緒に寝ていました。
孫が生まれた時も、退院して帰ってくると挨拶をしていましたね。孫たちもまったく怖がらなくて、一緒に保育園ごっこをしていたりもしたんです。園児役になって、ぬいぐるみと一緒に輪になって座っていて。そんな風に一緒に過ごしていました。
いつもの散歩コースを散歩して、一緒に寝る。毎日のルーティンを最後にもう一度。

だんだん目が見えなくなっていったとお伺いしました
だんだん目の瞳孔が開かなくなって、真っ黒な目になっていきました。ゴミ箱にぶつかったのを見て、「もう見えてないね」ってみんなで話していて。
もう歳だからしょうがないな、とは思いました。でも、3歳くらいの時に外耳炎になった他は、大きな病気にかかりませんでした。チワワは心臓を悪くする子が多いそうですが、一度だけ「雑音が聞こえるかも?」ということがあった以外には、特に何もなかったんです。
歳を取ってからは、病院の先生に「検査に出した方が良い」と言われることもありましたが、チロルに負担をかけたくないのでやらないようにしていました。それは、家族で話して決めました。
その後、物音に反応しなくなったことで耳が聞こえなくなったんだろうなと思いました。でも、家の中はわかっているようで、階段も登っていましたね。
亡くなった日のことを教えてください。
亡くなる前日、玄関の土間のところに下りて、普段なら上がることができるのに、上れなくなってしまっていました。すごく弱っているように見えたので、病院に連れていきました。
その時、先生から「今更何をして欲しいの?」って言われたんです。動物病院の先生としていろんなわんちゃんを見てきているので、もうこれで終わりだと思ったのかもしれませんが、ありえないと思いました。今まで検診などをしないと決めてきたことに対して、何か言われているのかな?と思ったのですが、とりあえず薬だけ貰って帰ってきました。
病院から帰ってきて、ご飯とお薬をあげて。次の日の朝、一緒に寝ている時に痙攣を起こして、そのまま亡くなりました。
先生の一言もあって、「私が悪かったのかな。検診を受けないと決めなければもっと生きたのかな。」と思ってしまいます。
お子さんやお孫さんとも最期のお別れの時間を過ごされたのでしょうか?
娘は近くに住んでいるので、すぐに家に来ました。息子も仕事が休みになったタイミングに。
お家で抱っこしたり、いつもの散歩コースを抱っこして散歩したりして過ごしました。夜は、知り合いにもらったドライアイスの上に寝かせて、枕元で一緒に寝ていました。
冬だったということもあって、3日間くらいは一緒に過ごしたと思います。なぜかわかりませんが、まったく硬直することがなくて、抱っこするとふにゃっとなってしまう感じ。ずっとふわふわで、本当は死んでいないんじゃないかと思ってしまうくらいでしたが、ずっと置いておくわけにはいかないと火葬車を呼んで火葬しました。
いろんな葬儀の選択肢があった中で、火葬車を選んだのは、お骨が手元に戻ってきて欲しかったからです。遺骨はまだ家にあって、「私が死んだ時に一緒のお墓に入れて欲しい」と家族に話しています。子どもたちは「チロルは、怒られてばっかりだったからお母さんと一緒に入りたくないかもよ」って言いますけど(笑)
最期の時間の過ごし方で、もっとこうした方が良かったと思っていることはありますか?
最期の方になると、チロルが何度も夜に起きていました。自分も眠いので、「ほら寝るよ」と布団に無理やり入れたりしていましたが、もう少し何がしたかったのか聞いてあげたり、起きてあげたりすれば良かったなと思います。
夜だけではなく、仕事が忙しくて帰りが遅くなっていたことに対しても思います。どうしてそんなに残業していたんだろうって。もし定時で帰っていたら、夕方6時からはずっと一緒に居られたと思うと、定時で帰る日を増やしておけば良かったなという後悔はあります。
新しい子をお迎えして考えた、ロスとの向き合い方。

インタビューの依頼をした時、まだロス中だとお話しされていました。
チロルが亡くなった次の日、仕事に行っても仕事にならないほど、会社に着いた途端にボロボロ涙が止まりませんでした。人に会うたびに泣いてたら、「もう仕事はいいから」ってみんなに言われて早退したんです。
そんな私の姿を見て、息子が写真が勝手に流れるフォトスタンドを買ってくれました。テレビの下に置いてあって、チロルの写真が全部入っています。朝の7時になると点いて夜の11時になると消えるんですけど、今でも写真に向かって朝のおはようと夜のおやすみを伝えています。
今は、次の子が家に来ました。やっぱり保護犬が気になるなと思って見ていて。「チワワはチロルが一番だし、比べてしまうからダメ」って子供に言われていて、結局、2ヶ月のシーズーが来ました。孫がやだって言ったら受け入れないつもりでしたが、その孫が離さなかったので決めました。
老犬と一緒に暮らすことに慣れていたので、わんぱくで大変です(笑)会社に行っても、「すごく疲れてるね」って言われます。
今飼っているわんこにも、チロルの写真を見せているんです。チロルを飼っている時は多頭飼いはないって思っていましたが、今となると、ちょっと重なっても良かったのかなと思います。チロルがどんな反応を示したのか見てみたかったな。
新しい犬を迎え入れることにはハードルがありましたが、迎えたことによってやっぱり一番はチロルだなと思えています。今の子も可愛いんですけどね。チロルへの愛は変わらないと思えることで、忘れないでいられる。単純に、誰もいないっていうことが辛かったので、新たに迎えたシーズーとのお散歩やお風呂、ご飯のような日常の忙しさがロスから抜けられるきっかけにもなっているかなと思いますね。
今、愛犬と一緒に過ごしている人にメッセージをお願いします。
甘やかしてもいいから、とことん一緒にいることをおすすめします。好きなものを食べてもらったからと言って寿命が縮まることはないと思っていますし、お手とかの芸をしなくてもいい。
夜寝る時、一緒に寝ていて良かったなとも思っています。全部一緒の生活を送ってきて良かった。
あとは、やっぱり自分の子が1番の存在だと思えることが大切なんだと思います。
あとがき
わんちゃんにとっての幸せはなんだろうと考えて、やっぱり家族と一緒に過ごすことなんじゃないかなと思うインタビューになりました。最期の時を迎えると、もっと一緒にいるためにできたことはないのか、何かしてあげられたら良かったと後悔を感じられる方はきっと多いと思いますし、私自身もそうでした。ですが、こうしてお話を聞いていると、きっとわんちゃん達はたくさんの愛情を感じて、幸せだったんだろうと感じます。この度は、インタビューにご協力いただきありがとうございました。
(聞き手:西澤七海/ライター)
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