
vol.21|2年という短い年月。一生懸命生きる姿を見せてくれた愛犬との日々。
天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。
飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。
ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。
大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。
vol.21となる今回は、保護犬あずきちゃんのお話をお届けします。
犬種:雑種/女の子
享年:2歳
語り手:T.Sさん
偶然行われていた譲渡会での出会い。いつの間にか先住犬よりも立場が上になっていたあずきちゃん。

あずきちゃんと出会った時のことを教えてください
ホームセンターに買い物に行った時に、たまたまやっていた譲渡会で出会いました。その時のあずきは生まれたばかりで、「子犬!」って感じだったことを覚えています。
譲渡会の方に、上下の顎が揃っていない先天性の病気を持っている、と説明を受けました。だから犬を飼った経験のある人に引き取ってもらいたいと言われたんですよね。
その話を聞いて、「こうした障がいを持っているとなかなか引き取り手が見つからないんじゃないか?」と思いました。「見つからない可能性があるのであれば、犬を飼った経験のある自分が引き取ろう」と思って、決意して迎え入れています。
あずきちゃんはどんな子でしたか?
かなり気分屋でしたね(笑)ちょっと甘やかしすぎたせいなのか、「私が一番!」って思っていそうだったんです。気が向かなければ散歩には行かないし、行ったと思ったら次は帰りたがらなかったり。
あとは、僕と妻が毎晩一緒にお酒を飲んでいると、必ず二人の間に入ってくるのを見て、僕たちのことがすごく好きなんだなと思っていました。他のわんちゃんや人に対しては少し怖がっていた様子もあったので、「家族だけなんだ」と思えるのも可愛かったです。
引き取った時、すでに先住犬が居たそうですね。

すでにパグを飼っていました。あずきは2番目に家に来たのにも関わらず、私の方が立場が上だと言わんばかりの態度だったんです(笑)
来た当初はそこまででしたが、1、2ヶ月も経たないうちにケージも布団も、パグから全部奪ってしまいましたし。パグが優しすぎたということもあるのかもしれません。
ただ、そんな様子を見て、慣れてくれてよかったなと安心はしました。
病気との向き合い方を決断するということ。

病気が見つかり、手術も行ったと伺いました。
うちに来て1年くらい経ってから、病気が発覚しました。元々の噛み合わせの問題だけではなく、歯並びが極端に悪い状態になってしまったり、本来生える場所じゃないところから歯が生えてしまったりするような病気でした。
そこを切って歯を削り取るような手術を一回しました。ですが、完治はせず、また同じような状態になってしまいました。お医者さんには、「治すためにはまた手術が必要だけど、これ以上の全身麻酔に耐えられないのかもしれない」と伝えられたんです。
1回目の手術後から走ったり運動したりすることがなくなっていたので、自分たちとしても「そうだろうな」と思っていましたね。
治療について、ご家族とどんなお話しをされたんでしょうか?
手術をしてしまうとその後、起きない可能性がある、動けなくなることもあると聞いて、その場で手術をしないことを決めました。
骨や骨格の異常なので、手術をしない選択をすればそんなに長く生きられないこともわかっていました。
ですが、無理に手術をせずに寿命を全うさせてあげようと判断したんです。その分、残された時間で一緒に旅行に行ったり、遊びに行ったりしようと思いました。
最期の時について、聞かせてください。
だんだん体力的に弱っていく様子もありましたが、手術をしないと決めてから半年以上は普通の日常生活を送れていました。
ただ、ご飯を食べれなくなり、「もうやばいな」と思ってからが亡くなるまで3,4日ほどでしたね。自分たちが家にいたとしても「もう何もできないんだな」という思いもあり、普通に仕事に行っていて、帰ってきた時に亡くなっていました。
一生懸命生きた過去を大切にするという、別れとの向き合い方。

火葬までの間はどのように過ごされましたか?
基本的に「火葬などは早めにやった方がいいな」と思っていたので、住んでいる場所の近くでペット火葬を検索して、翌日には火葬車に来ていただきました。
それまでは保冷剤の上に寝かせて、妻と一緒に最後の挨拶をしました。
お骨は、今も家にあります。どこかに納骨するような発想は、特にありませんでした。子どもがあずきと一緒に居た時期もあったので、見える場所にあった方がいいかなとも思っているんです。
悲しみとはどう向きあわれてきましたか?
「あずきは一生懸命頑張ったんだ」と思うことで向き合ってきたんだと思います。
障がいを持って生まれてきたことは引き取る前からわかっていたことですし、1回目の病気が発症してからは病気に対して覚悟もしていました。
でも、2年ほどと短い時間ではありましたが、「本人は一生懸命、最後まで頑張った。そのことを理解しよう。そうやって整理しよう」と思ってなんとか向き合ってきましたね。
今、愛犬と一緒に過ごされている方に伝えたいことがあれば教えてください。
わんちゃんに対しては、感謝の気持ちしかありません。仕事が大変な時、育児や家事が大変な時、犬だけは感情がフラットで安定していることに助けられてきました。そんな姿に毎日一緒に居てくれてよかったなと思っています。
それもあって、今飼っている子とはできるだけちゃんと会話をするようにしています。親バカかもしれませんが、こちらが話していることがわかっているような、伝わっている感があるんですよね。
なので、いっぱい話しかけるのがいいのかなと思います。

〈おわりに〉
2年という長くはない時間ではあったものの、先住犬のパグちゃんを含めご家族に引き取っていただけたことで、あずきちゃんが過ごした時間はすごく愛で溢れていたんだろうなと感じました。これまでの虹の橋こうさてんでも、病気が見つかった時の向き合い方についてはお伺いしてきましたが、やっぱり難しい決断だなと思います。わんちゃん自身で決めることはできず、私たち飼い主で決めるしかない。100%納得のいく答えがもしかするとないのかもしれませんが、その子を第一に考えて寄り添っていくことが大切なんだと感じました。また、そうした決断が迫っている時、虹の橋こうさてんのインタビュー記事が何か一つの心の支えや情報源になることができれば幸いです。
インタビューにご協力いただきありがとうございました。
(聞き手:西澤七海/ライター)
\インタビューにご協力いただける方を探しています/