愛する人のための誕生日の食卓(オーダーメイド出張料理)
突然の電話
金木犀の香りが街から消えかけようとして、秋の深まりを感じるある日の晩、数年ぶりに友人から「明日の夕方って空いてる?」「明日出張料理の仕事を頼みたいのだけど・・・。」
?!
前日の晩のオーダーってどういうことなんだろう。
もうメニュー考える時間も、素材を買う時間も、仕込みの時間もない・・・。
僕「ちょっと電話してご事情、お伺いしていいかな?」
友人「むしろお願い。」
むしろお願い?!ますます謎は深まるばかり。
お話をお伺いするに、次の日は彼女さんの誕生日だったのだが、おそらく彼のことだから考えすぎてディナーのお店が決まらず、揉めに揉めて、色々と瀬戸際だったらしい。(すごい人なんですが、こういうところあります(笑))
次々と送られてくる彼女さんの個人情報(笑)彼女さんのプロフィール写真、過去旅行に行った際に彼女さんがレストランで選んだメニュー、・・・etc
わかったよ、分かりましたよ!
愛が駄々漏れで、こっちが恥ずかしくなってくるわ!!!
普段は前日、夜のオーダーなんてほんと(物理的に)無理なのですが😅
ひと肌脱いだるワンと自転車を走らせ閉店間際の御用達食品店へ猛ダッシュ。
コンセプト「ごめんなさい。愛してる。」
ひとしきり、いただいた写真を見て、自分の中から湧いてくるものを内省。
空間設計もメニューも「彼の愛が伝わり、ただ出会えたことを祝福する」表現を意識。僕はただ、それをフィルターとして形にするための媒介。お会いしたことのない彼女さんと彼との間に流れているであろう空気感に周波数を合わせる。「ごめんなさい。愛してる。」そして、かつ、記念日の食卓であるということ。言葉にすると形を変えてしまう、言語化されない繊細なコンセプト。
メニュー
コース料理形式(6品)
①シャインマスカットとマスカルポーネチーズの白和え
⑥洋梨と金木犀(デザート)
夜の深まりと原点。
彼女さんがいらしてからサプライズの誕生日プレゼントにはじまり、ジャズの流れる中、3人の笑い声と愛のあるエピソードの数々を肴に夜は深まり・・・。
友人と彼女さんは今まで以上に絆を感じてくださっていたご様子でした。
自分も料理を出し終わって、お二人の空気を感じて、ふと自分自身に戻りながら、そういえば、こういう日に出会いたくて自分は料理を続けているのだった。シェフの先輩方もそうだったし、その一瞬のために研鑽している。
自分が大切と思える人たちが心から喜んでくれる時間、その中にいたい。
そういう自分自身にも改めて出逢わせてくれる食卓でした。子供のような自分がキラキラこれが嬉しいんだと言ってくれるようなこと。
それって、とっても大事なことだと思うんです。
日常に埋もれて、なかなかその声を聴くことは難しいかもしれないけれど。
次の日。「おかげさまで、大袈裟でなく一生で一番感動した誕生日になりました。」とメッセージ。
本当に安堵しました。友人から電話がかかってきたときは何事かと思いました(笑)何よりです。お二人の一日一日を大切に過ごせますように。
クライアント様、各位へお願いです。
当方、前日のオーダーは受けつけておりません(笑)
お客様の想いに丁寧に応えて当日の特別な「一席」を一緒に創り上げたいという想いで「オーダーメイド」という形をとらせていただいております。
でもこの急さも含めてオーダーメイドなのだと言われたら何も言えません。
基本的に平和を愛するセンシティブな人間なので、いじめないでね^^