「54日間、水が出ない」をどう伝えるか。
SDGsの目標6に「安全な水とトイレを世界中に」をどう教えるか、というものがある。本当に重要な課題で、この文言を目にする度思い出すのが、自分の体験だ。
1,54日間、水が出ない。
以前、JICA海外協力隊として、ホンジュラス共和国で2年間活動させてもらった。中南米は、毎日が真夏で、日々の生活が厳しかったが、困ったのは水だった。
部屋の蛇口から54日水が出ない日があったからだ。2、3日なら、ボトルの水でしのぐ。でも、こんなに続くと、笑うしかなかった。蛇口から水が出ないのが日常になった。
2,水使用の優先順位を決める
水は生活する上では必要不可欠で、飲まなければ健康的な体も保てないし、料理やトイレ、洗濯もできない。タンクの水から、大体、1日バケツ1杯、10リットル位の水をとって過ごしていた。でも、これらは、日本と違って飲み水出ないので、生活用水でしかない。でも、それすら、54日間でない。
そこで、まず、水使用の優先順位を決めた。
① 飲み水=ボトルウォーターがいいが、でも、とても高い。ジュースやコーラ、ビールの方が安いので、歯磨きでも、ジュースうがいで、よしとした。
② 料理の水=食材を洗うのも消毒した水でないと行けないので、煮沸したり、塩素を入れた水で食材を洗ったりしてから、大切に使った。缶詰も役立った。
③ 掃除・洗濯=普段なら、水道水だけど、出ないので、川の水を使う。辛いのは洗濯で、乾いても匂いがきつい。周りのみんなも川の水で洗濯しているので匂うのでセーフ。
④ 風呂・シャワー=できるだけ我慢していたけど、自分で自分が匂うのが分かるので、そうなるとバケツにいっぱい水を用意して、髪を洗い、体を拭いてさっぱりさせていた。
⑤トイレ=用を足すと流したけいけれど、その水がないので、料理や歯磨き等の排水をためて時々流した。でも、部屋に漂ってくる匂いは尋常ではなかった。
3,水がある生活の有難さと違和感
水のない生活は、本当に苦しかった。蛇口から水が出てきたときは声を上げて喜んだ。蛇口から、木の葉が出てきたときは、どうなっているの、と突っ込みたくなったけど、出てくれるだけで有難かった。水があると体も心も洗われる。
「生きるために必要なのは水だ」そう確信した2年間だった。そして、帰国し現場に戻ったとき感じたことは、まさに、「湯水のように」水を使う日本の生活への違和感だった。
3,どう教えるのか、ヒントは、SDGs目標6
そんな経験をした私は、本当に身にしみて、水の大切さを痛感している。でも、子どもたちの自分の体験を話しても、押しつけになってしまい、水の大切さは自分事にはならない。どうすればいいのか。
世界中には、十分な水が得られず苦しい思いをしている人々がいるのも事実。SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられている。これらのことも絡ませながら取り組んでみた。
①世界の現状を一緒に調べる。=日本との違いを知り、いかに日本が恵まれているかに気づくことができた。安全な水があれば、病気を防ぐことができることも分かった。
②安全水の作り方を知る。=浄水場の働きを知り、多くの人の努力と工夫によって、届けられていることを理解できた。
③水組みの疑似体験をする。=バケツにスーパーボールを入れて、頭の上にのせ、運んでみる。水を運ぶことの大変さに気づくことができた。
④安全な水をこれからも手に入れるために必要なことを考えた。=水の節約方法、水資源の保護、水の使い分けなど、たくさんのアイデアを見つけ、発信することができた。
4,伝え続けていくべき「水」の大切さと工夫の仕方
水の大切さを実感できたのは、海外での2年間があったからだと思う。「水」の大切さに気づいた自分にできることは、それをどう、授業で伝えていくかだと思った。外から見ることで、事実を俯瞰し、全体像が見えてくることも多い。
日本でも、地震や水害、台風等で、断水となる状況は、今後も度々起こると考えられる。そんなとき、このような学びがあれば、落ち着いて行動できる。そのためにもしっかりとした学びを行っていくことが大事だと感じている。
大賀重樹