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ぼくは走った
友達との待ち合わせの時間がせまっている

間に合わせるためには、17時52分の電車に何としても乗らなくてはならない
走った走った

途中から、ぜんそくで喉がヒューヒューなった
走れなくなった
しばらく歩いた
どうせ間に合わないだろう
それでも歩いた
あと2分
こ線橋てっぺんから、駅へつながる階段が見えた

もうすぐで着きそうだ

ぜんそくも落ち着いた
間に合わせる
走った
走った


駅からつながる階段から上がってきた人が見えた
そう思ったら、電車が駅から出てくるのが見えた
あと一歩のところだった
間に合わなかった

がっかりした

友達を待たせることになる


こ線橋の階段に座った
そこから、きれいなものが見えた

見えたのは、大きな夕焼けだった

走っていたから、この美しさには気づかなかった


乗り遅れても、いいことがあるかもしれない
友達に、「遅刻する」とlineした
そしたら、友達も遅刻する、と返事が来た
次の電車の時刻でちょうどよかった
ああよかった

次の電車に乗ったら、
女子高生がおばあさんに席をゆずっていた
自分がゆずろうという気もなかったことは恥ずかしかったが
とても良いものが見えた
ちょっと心が温かくなった

遅れてよかったこともある
急がなくてもよかったことがある
人生回り道もよいかもしれない

                        三浦健太朗

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