見出し画像

バスケット部で指導した女の子がいる。今、21歳になって、今年4月に就職した。学生時代から地元中学校のバスケット部コーチになった子だった。自分が小学校の時に教えた競技に末永く携わってくれる子がいる。これほどうれしいことはない。
さらにうれしいことがある。審判としても活動を始めたことだ。私も審判として活動しているため、一緒に高校の練習試合に審判をしに行くことも多い。まだまだ上を目指してともに切磋琢磨できることは、この上なく幸せなことである。

先日、この子から相談があった。指導上で困っていることがあるという。長くなってしまったラインのメッセージからも、悩む思いが伝わってきた。何とかしてあげたい、と思うのはこれまでも、そしてこれからも一緒なのか、すぐに電話をかけて話した。50分ほどの電話。私も同じことで悩んだことがあるので、共感して聞くことができた。彼女も話して気持ちが落ち着いてきたことが、声の感じで伝わってきた。これだけでよかったと思った。

悩みの話も終わり、最近の仕事中のエピソードを聞くことができた。いつも世話になっている先輩の女性から、
「どうしてそんなに若いのに、礼儀が正しいの?」
と言われたらしい。そして、
「小学校の時の先生にしつけられました」
と答えたという。本当にそう思っている、ということを、電話の向こうで彼女は伝えてくれた。

バスケット部で指導した子や担任した子で大人になっている子たち。その子たちと酒を飲みながら、
「教えられたことで、何が残っている?」
と聞くと、全員、
「挨拶と礼儀」
と返ってくる。他にもたくさん教えたことがあるが、決まって、
「小学校の時のことで、あまりよくわからない」
と言われる。叱られた話やこんなことをした、という思い出話で盛り上がるのだが、今に生きている指導事項となると、だいたい「挨拶と礼儀」である。ちょっとうれしい反面、結構悲しい思いだ。他にも、こだわって教えてきたことはあるのに…。小学校の先生なんてそんなものか…とあきらめた。

しかし、「挨拶と礼儀」が資質・能力になって、彼女が職場でうまくやっていけている一つの理由になっているのであれば、やはりこれほどうれしいことはない。胸を張って「挨拶と礼儀」をこれからも粘り強く教えていこう。

                             三浦健太朗

いいなと思ったら応援しよう!