【第606回】続報!クレカ表現規制失われゆくネット空間の自由⁈/SNSネット規制(2024/12/4) #山田太郎のさんちゃんねる #表現の自由 【文字起こし】
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発言者:
(山田さん) 山田太郎 参議院議員
(小山さん) 小山紘一 政策秘書・弁護士
今日の内容
(山田さん)
山田太郎のさんちゃんねるです。本日は第606回ということで「続報!クレジットカード表現規制と失われゆくネット空間の自由」というテーマでお届けします。また、SNSを含めたネット規制についても詳しくお伝えしたいと思っています。
クレジットカード問題の続報があります。VISAの日本法人とのコミュニケーションで得た回答が届きましたので、その内容をしっかりお伝えします。さらに、オーストラリアで16歳未満のSNS利用が禁止になるという衝撃的なニュースがありました。その背景を含めて解説していきたいと思います。
それに加え、韓国やアメリカ、フランス、イギリスといった他国でのSNS規制についても触れます。これらの国々では、規制がかなり進んでおり、日本も決して他人事ではありません。この点について、表現規制という観点から考察を深めていきたいと思います。
続報:クレジットカード問題
(山田さん)
私たちがVISAの本社(VISAワールドワイド)を訪問した後、日本法人の社長が「アダルト拒否はブランドを守るため」という主旨の発言を記者会見で行ったという報道がありました。この発言について、VISA本社にも確認を取っていますので、その真意をこれから説明したいと思います。
まず、確認に入る前に、日本法人の社長がどのような発言をしたのか、おさらいしておきます。
(山田さん)
VISAは「合法で正当な取引には可能な限り使用可能にする」という方針を持っているとされています。これはアメリカで私たちが聞いた内容と一致しています。
しかし、一方で次のような発言もありました。「時にはブランドを守るために、使えなくすることが必要になる」と。これが議論を呼ぶ発言となったわけです。
さらに、「グローバルとローカルの方針が絡み合い、非常に複雑な判断が求められる」とした上で、「誠実さや完全性を維持することが重要であり、これを今後も続けていく。一連の決定は一時的なものではない」とのコメントも出されました。
こうした内容がネット上でも大きな話題となり、騒動に発展しました。本件について、私たちの事務所ではVISAワールドワイドジャパンに問い合わせを行い、12月2日に確認が取れた内容をお伝えしていきます。
(山田さん)
VISAジャパンから米国のVISA本社へのやり取りに関する報告ですが、「山田議員」と表記されていた箇所がありましたが、これは「山田太郎、私」に訂正されています。また、VISA本社からの回答には、変更や追加はありませんでした。
次に、報道された社長のコメントについてですが、「アクワイアラー(加盟店契約会社)や決済代行会社などの現場の判断でそのような場合があることを承知している」との内容でした。
これだけでは非常に分かりにくい点がありますが、要するに、VISAジャパンが独自に方針を決定したというわけではなく、VISA全体として、現場でさまざまな判断が行われる可能性がある、という趣旨の発言に過ぎません。「そうするとか、そうしている」という断定的な話ではないということです。
つまり、VISA本社(米国)としても、VISAワールドワイドジャパンとしても、私自身がVISA本社から得た情報と齟齬はなく、公式見解は以下の通りということになります。
VISAは取引について合法・違法の法的判断を行うが、合法であるコンテンツに関しては価値判断を行わない。
アダルトコンテンツに関しても、年齢に関するルールが守られており、児童ポルノではなく、合意のもとで提供されている場合、問題ない。
VISAの規約は基準を示すものであり、具体的な判断は現場で行われる。
今回の社長の発言は、「現場でブランドを守るために、そのような判断をする場合があるかもしれない」という趣旨であり、VISA本社が特定のキーワードを含むコンテンツの取り扱いを禁止する指示を出したことはない、という点も明言されています。
VISAワールドワイドジャパンの方々からも、VISA本社で議論された内容を把握したうえで社長の会見に立ち会ったとされており、ここに齟齬はないとのことです。こういった回答を得たわけですが、小山さん、この点についてどうお考えでしょうか?
(小山さん)
VISAワールドワイドジャパンの見解として、「ブランドを守るために利用を制限する」という話についてですが、具体的に「誰が」「どのブランドを」という主語が曖昧な部分があります。
ブランドというのはVISA全体を指していると考えられます。山田さんのおっしゃる通り、国際ブランドとしてのVISAやアクワイアラー、決済代行会社などを含む総称としての「VISA」という意味でしょう。
その上で、「アクワイアラーや決済代行会社が自分たちのブランドを守るために使えなくする判断を下す場合がある」という回答である、という認識です。
(山田さん)
昨日、参議院議員会館の講堂で「クレジットカード会社による表現規制・金融検閲問題を考える」という緊急集会が開催されました。私も報告者として招かれ、発表を行いました。
(山田さん)
詳細についてはTwitterなどにも書きましたのでここでは省略しますが、今回のポイントの一つとして注目したのが「誰がこの問題の責任を負っているのか」という点です。
(山田さん)
国際ブランド、アクワイアラー、イシュアー、加盟店、利用者といった構造において、国際ブランド(VISA本社およびVISAジャパン)は「自分たちにはそのような問題はない」との立場を取っています。それでは問題はアクワイアラーにあるのか。さらに、その下には一括決済業者や決済代行会社があり、この構造は非常に複雑です。
(山田さん)
ここで分かってきたことの一つとして、「一度ダメになったものが、決済代行会社を変更することで再び利用可能になるケースが多い」という事実があります。
たとえば、以前は利用できなかったが、時間を置いて再び使えるようになったケースの多くは、決済代行会社が変更された結果とされています。ただし、海外の決済代行会社を利用する場合、手数料が国内の1~2%に対して数%と高くなることがあり、これが新たな課題となっています。
また、現物の商品については問題なく利用できる場合が多いことから、そのコンテンツ自体に問題があるわけではないと推測されます。さらに、大手加盟店が同様のコンテンツを取り扱っている場合でも取引が成立することがあり、競争力の有無が影響している可能性も考えられます。
これらの点から、国際ブランドの規約がすべての規制を定めているわけではないことが明らかになってきました。
昨日の集会では、アメリカのジャック・ラーナ教授も参加しており、興味深い話がありました。同教授によれば、児童ポルノなど基本的に違法とされるものに対する取り締まりは行われているものの、日本のような非実在の漫画やアニメに関しては、アメリカでは大きな問題として議論されることはほとんどないそうです。
ポルノハブに関連した問題を含め、アメリカでは児童ポルノに対する規制が非常に厳しい一方で、キーワードによって取引が禁止されるといった事例はほとんど聞かれないとのことでした。
こうした話を踏まえると、日本特有の課題が浮かび上がってきたように思います。今後、この問題の構造をさらに明確にしていく必要があると感じています。
(小山さん)
アメリカのケースについてですが、日本の児童ポルノ禁止法(児ポ法)とは異なり、一部の州では創作表現も児童ポルノとして扱われる可能性があるとされています。
ただし、言葉狩りのような規制は見受けられない、というのがジャック・ラーナ教授の見解です。また、VISAが裁判に巻き込まれたケースでは、13歳の合意のない性的な行為を含む画像がポルノハブに投稿されたことが問題視されていました。
このような事例とは異なり、創作表現がアメリカのVISAやMastercardによって厳しく規制されているわけではない、という点が明確に示されました。この点からも、日本特有の問題である可能性が高いですが、現時点でその原因がどこにあるのかはまだ不明です。
(山田さん)
国際ブランド、アクワイアラー、加盟店、一括決済代行業者などの間で、実際にどのようなやり取りが行われているのか、我々にも完全には把握しきれない部分があります。
2019年以降、多くの加盟店や関係者から情報提供や相談を受けていますが、「他の取引もあるので、これ以上は勘弁してほしい」「実名は避けてほしい」という制約があるため、調査には限界があります。
私たちは政治家として、事象をもとに立法府としての対策を検討する立場ですが、こうした調査は本来、メディアが主導して行うべきだと考えます。
ある新聞社から取材を受けた際、「取材先や状況の詳細を教えてほしい」と求められましたが、立場が逆だと感じました。本来ならば、メディアが記者のネットワークを活用して多くの情報を集め、それを提供していただけるはずです。我々としても協力は惜しみませんが、現時点ではまだ不明瞭な部分が多いのが実情です。
(山田さん)
さらに、クレジットカード関連の業者について言えば、272社ものアクワイアラーや決済代行会社が存在しており、その関係性や仕組みを解明するのは非常に困難です。これも問題の複雑さを増している要因の一つだと思います。
さて、詳細な説明はこの辺りにしておき、次に諸外国の状況について見ていきたいと思います。今後の対策を講じるためにも、他国での事例を参考にしながら、どんどん手を打っていく必要があると考えています。
クレジットカードに関する諸外国の法制度
(山田さん)
各国の状況を示す表ですが、縦軸にはアクワイアラー、決済代行、加盟店、国際ブランドを取り上げ、横軸には各国を配置して見ていただけるようになっています。
まず、アクワイアラーに関しては、銀行とノンバンクの役割が記載されています。特に注目すべきは、諸外国ではクレジットカード会社が基本的に銀行に付随しているという点ですね。
(小山さん)
そうですね。日本や韓国を除くほとんどの国では、アクワイアラー業務を行っているのは銀行であり、これは諸外国における常識とされています。
(山田さん)
その点からも、日本の規制を考えるうえで重要なのは、金融制度の一部として、銀行規制の枠組みに組み込むべきだということです。諸外国の例を見ても明らかです。EU、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカを比較していただければ分かると思いますが、これらの国々ではすべて何らかの規制が存在しています。一方、日本では割賦販売法に基づく登録制にとどまっています。
(小山さん)
他国では認可制や免許制が一般的です。たとえば、EUからイギリスにかけて、ノンバンクのアクワイアラーにも認可制または免許制が適用されています。アメリカは規制がないとされていますが、実際には提携銀行が必要とされるため、銀行を通じて一定の規制が及んでいます。
(山田さん)
さらに、決済代行事業者の一部には規制が課されています。また、国際ブランドについても、イギリスやアメリカでは規制がある一方で、日本にはそのような規制がありません。このように、日本の制度は諸外国と比較して規制が緩いという特徴があります。
(小山さん)
ただし、この表は少し古い資料を基に作成しているため、現在では一部状況が変わっている可能性もあります。
(山田さん)
いずれにしても、日本の規制は非常に緩く、その影響が大きいということだと思います。法体系の整理をしてもらいましたので、小山さん、簡単に説明してもらえますか。
(小山さん)
ポイントは「銀行系」か「銀行以外(ノンバンク)」かで規制が分かれる点です。アメリカやEUでは、以下のような規制が適用されています。
銀行系の規制
アメリカやEUでは、決済規制は銀行業務の一部として位置付けられています。たとえば、銀行法や金融サービス法、民法典、決済サービス監督法、通貨金融法典などで規制されています。
ノンバンク系の規制
ノンバンク業務においては、消費者信用に関連する規制が中心です。アメリカでは貸付真実法や消費者信用保護法が適用され、EUでは「消費者信用指令」に基づいて規制が行われています。これに基づき、イギリス(EU離脱前)は消費者信用法、ドイツは決済サービス監督法、フランスは消費法典で規制しています。
このように、銀行かノンバンクかという区分が、アメリカやEUの法体系において非常に重要な要素となっています。
(山田さん)
さらに、業務内容もさまざまで、たとえば口座管理、資金移動、支払い手段、電子マネーやプリペイドカードの発行、預金・融資といった幅広い業務があります。それらがどのように組み合わさっているかが重要です。
(小山さん)
この法体系の中で特に重要なのが、銀行、電子マネー事業者、決済サービス事業者に関する規制です。EUの「決済サービス指令」では、免許制が導入されており、これらの事業者に対して非常に厳しい規制が課されています。
(山田さん)
免許、認可、登録といった制度の違いも大きいですよね。
(小山さん)
免許や認可は非常に厳しい規制が特徴です。たとえば、原則として禁止されている行為を特定の条件のもとで許可する仕組みであり、条件付きで許可を得ることが可能です。ただし、状況次第では免許や認可が取り消される場合もあります。
一方、登録制は中間的な規制に当たります。特定の基準を満たしているかどうかを審査し、公に証明する形で事業が許可されます。登録制の場合、免許や認可のように「特別な許可を得る」わけではなく、あくまで基準をクリアすれば事業が許可される仕組みです。
日本の決済関連法制
(小山さん)
この図は少し分かりにくいかもしれませんが、
為替取引 は銀行法
資金移動業 は資金決済法
プリペイドカード(前払いの決済) も資金決済法
後払い(包括信用購入斡旋) は割賦販売法
という形で規制されています。これらの目的は、「利用者の保護」や「取引秩序の維持」、さらには「信用保護」です。
特に銀行の場合、事業者の倒産リスクを考慮し、最低資本金20億円や自己資本比率規制、業務範囲規制などが設けられています。
一方で、資金移動業では全額保全が義務付けられており、プリペイドカードについては半額の保全供託が求められます。
これに対し、割賦販売法では資本金または出資額が2000万円以上と定められており、信用保護の観点から規制が比較的緩やかになっているように思われます。
(山田さん)
その一方で、横断的な決済に関する法律、いわゆる「決済横断法制」という議論も進められていますね。経産省でも長らく議論されていると聞いています。
(山田さん)
クレジットカードは後払い、デビットカードは即時払い、プリペイドカードは前払いと、利用者にとってはどれも決済手段であることに変わりありません。しかし、仕組みや規制が異なるため、利用者がどの方式を選ぶかで対応が大きく変わります。
(小山さん)
決済横断法制の議論は、平成30年(2018年)の安倍政権時代に始まりました。未来投資会議では、フィンテック事業者の参入が話題となり、「これまでの規制は業態に応じた画一的な規制であり、規模やリスクに基づく柔軟な対応が難しい」という問題点が指摘されました。
その結果、「分野横断的でリスクに応じた法規制が必要ではないか」という考え方が浮上しました。
世界的にはクレジット業務は銀行が行うものとされており、「クレジットカード業界」という独立した業界が存在しないという認識が一般的です。一方、日本では決済分野の法制度が分散しているため、グローバルな視点で見ると非常に残念な状況と言えます。
実際、「バンキングとクレジットが分かれているのは日本と韓国ぐらいではないか」という意見もあります。決済のグローバル化やデジタル化が進む中で、日本の決済横断法制は早急に、しかし慎重に進める必要があると感じています。
(山田さん)
今回のケースを含めて、クレジットカードの規律をどのように作っていくべきか議論しても良いのではないかと思います。論点がいろいろありますね。
(小山さん)
論点は大きく2つあります。
(小山さん)
1つ目は、決済法制を横断化する場合の意義と効果です。何のために横断化を進めるのかという点です。
新規参入がしやすくなる。
消費者トラブルが集約される。
事業者にもメリットがある。
行政にとっても業務の統合や知識の集約により、制度運営が効率化する。
といった利点が挙げられます。
(小山さん)
2つ目は、EUやシンガポールでは決済法制の横断化が進んでいる一方で、日本には各決済法制ごとの特有の制度や文化があります。その中で、横断化をどのように進めるべきか、という点です。
日本には日本独自の法律文化があるため、例えば以下のようなアプローチが考えられます。
関係する各法を維持したまま、それをまとめるための基本的な指針を作成する。
各法体系を統合し、1つの法体系にまとめる。
こうした方法を検討すべきではないでしょうか。
(山田さん)
法律が異なり、担当省庁も異なるため、この統合は非常に難しいですね。ただ、ポストペイ、即時払い、プリペイドを1つにまとめ、銀行法に基づく形で規制を統一するのが世界の常識だと思います。カードも銀行業務の一部として扱われるのが自然な流れでしょう。
(山田さん)
さらに、昨日の集会でも説明しましたが、クレジットカードの規制は以下のような観点から議論されています。
優越的地位の濫用ではないかという懸念。
プラットフォーム規制やインフラ規制の一環としての位置付け。
金融規制の一部としてのデジタル通貨やデジタル決済。
(山田さん)
これらは、現金以上に広がる決済手段の規律として必要な視点です。また、消費者保護の観点からも、公平に利用できる環境を整える必要があります。
国会議員や立法府の人間には、「すぐにこれをやれ」「問題を解決しろ」と言われがちですが、法治国家では法律や制度の枠組みが整備されていなければ、手をつけることはできません。
現在の日本では割賦販売法に基づく規制しかなく、経産省が担当している状況です。この前提では、立法府として議論する余地が限られていると感じます。そのため、まずはこの課題をしっかり整理し、法的な基盤を固めないと、新たな規律を作るのは難しいでしょう。
(小山さん)
昨日と今日で経産省の担当者とも意見交換を行いました。各国、例えばアメリカやEUについては、銀行系かノンバンク系かで規制が異なるというお話をしましたが、日本でも銀行系のアクワイアラーは存在します。
かつては認められていませんでしたが、現在は可能になっています。一方で、ノンバンク系のアクワイアラーも存在します。ただし、法律については、日本では銀行系もノンバンク系もすべて割賦販売法に基づいています。
そのため、クレジットカード業務を行っている場合でも、金融庁がその業務に監督権限を及ぼすことはない、という整理が現状です。この点も踏まえ、先ほど山田さんが言及された「金融規制の一環としての対応」を検討していく必要があると思います。
オーストラリア:16歳未満のSNS利用禁止
(山田さん)
次に、オーストラリアの「16歳未満のSNS利用禁止」に関するニュースについて考えてみたいと思います。これは非常に大きなニュースで、インターネット空間の自由が失われるという観点でも注目すべき話題です。
オーストラリア議会では、16歳未満の子どもがSNSを利用することを禁止する法律が可決されました。これはかなり衝撃的ですね。
(小山さん)
各国にも似たような法律や制度があるのは承知していますが、今回の法律で特に注目すべき点は、違反した場合、SNS事業者に最大4950万オーストラリアドル(約50億円)の罰金が課されるという点です。
(山田さん)
この法律については、「事業者だけに罰則がある」という点が指摘されています。例えば、親が子どもにSNSを使わせた場合や、子ども自身が勝手に利用した場合でも、事業者に50億円の罰金が科されるというのは、事業者にとってかなりのリスクです。
(小山さん)
年齢確認をどう行うかも、大きな課題になると思います。この法律は、かなり物議を醸していますね。
(山田さん)
もう1つ指摘されている点として、今回YouTubeはこの法律の対象外とされています。その理由は、YouTubeには教育コンテンツが含まれており、実務上の運用が難しいからだと言われています。
しかし、実際には多くの子どもたちがYouTubeを利用していることを考えると、「本当にこれで良いのか?」という疑問も残りますね。
(小山さん)
オーストラリアのSNS規制について、背景には子どもたちがSNSにのめり込むことで日常生活や心の健康に悪影響が及ぶ懸念があります。また、悪質なイジメや性被害に遭うケースが相次いでいることも指摘されています。
ただ、ネット依存と悪質なイジメや性被害は全く異なる文脈の問題であり、対処法も異なるはずです。
(山田さん)
その通りでして、これらは別々の原因と現象によるものです。それを「手段のせい」にしてしまい、問題の根本を見誤っているように感じます。
この点、ゲーム依存症の議論と似ている部分がありますね。韓国では「ゲームシャットダウン法」が導入されましたが、それが何を引き起こしたかを検証することで、オーストラリアの規制がもたらす未来像をある程度予測できるのではないかと思います。
(山田さん)
シドニーでもこの法案については意見が分かれているようです。たとえば、「制限は必要」と考える子どもがいる一方で、「SNSで連絡を取れなくなるのは困る」「政府が規制をしても抜け道はあるから無意味だ」といった反対意見もあるようです。
(山田さん)
背景には国民の77%がこの法案に賛成しているという報道もあります。特に、悪質なイジメや性被害、自殺に追い込まれるケースに対する懸念が広がっています。
(山田さん)
また、SNSにのめり込むことを問題視する保護者を中心に、規制を求める署名活動が行われました。さらに、SNS運営会社への不信感や、暴力的・過激なコンテンツに対する削除要請が高まっています。適切な対応をしない場合には罰金を科すべきという声もあり、こうした要望を受けて規制が導入されました。
(山田さん)
その一方で、MetaなどSNS事業者からは懸念の声が上がっています。たとえば、この規制では「アプリ提供者が個人情報や生体データを収集することが求められる可能性がある」と指摘されています。
年齢確認や親の承認を必要とする場合、どのように実行していくのかといった課題も未解決です。単に「禁止する」というだけでは実効性が不透明であり、法整備が必要だという意見もあります。
世界各国の子どものSNS利用規制
(山田さん)
この問題はオーストラリアだけではありません。フランスでは、15歳未満の子どもが保護者の同意なしにSNSを利用することを制限する法律が制定されています。
(山田さん)
アメリカの一部の州や北欧諸国でも、同様に保護者の同意を必要とする規制が導入されています。つまり、オーストラリアのケースは決して孤立したものではなく、世界的な傾向の一部であると言えます。
(山田さん)
SNS規制に関する議論は世界中で活発に行われています。しかし、一方で国連の「子どもの権利条約」に基づく表現の自由や情報を得る権利を妨げるものとして批判する意見もあります。
私もその通りだと思います。この点については、子どもの権利条約や、それに基づいて日本で制定された「こども基本法」でどのように定められているのか、後ほど詳しく触れていきたいと思います。
一方で、EUでは未成年を対象にした閲覧やターゲティング広告の禁止、イギリスではインターネット上の有害情報から子どもを守るための法律制定、アルゴリズムの規制など、さまざまな動きが進んでいます。
(山田さん)
ユニセフはこのような規制について懸念を示しています。SNS禁止によって子どもたちが隠された規制のないオンライン空間に追いやられるだけでなく、子どもたちの幸福に必要な情報や機会にアクセスできなくなる可能性があると指摘しています。これはユニセフのオーストラリア担当者の見解でもあります。
(山田さん)
また、日本の専門家からも、規制によって子どもが必要な情報を手に入れられなくなったり、自ら意見を表明できなくなったり、インターネット上の「居場所」を奪われることへの懸念が示されています。
この「居場所」問題は、日本において孤立や孤独の議論の文脈でも頻繁に取り上げられてきた重要な課題です。もしSNSが16歳未満で使用禁止となれば、この問題がさらに深刻化する恐れがあります。
子どもの権利条約
(山田さん)
特に、子どもの権利条約について触れる必要があると思います。この条約には、子どもが自らの意見を述べ、それを尊重される権利が含まれています。これは条約の「4つの基本原則」の1つであり、たとえば12条では以下のように定められています。
意見を形成する能力を有する子どもは、自らに影響を及ぼすすべての事項について自由に意見を表明する権利を持つ。
この意見表明は、国内法に準じた方法で司法上や行政上の手続きにおいて尊重されるべきである。
(山田さん)
オーストラリアは1990年という早い段階でこの条約を批准しています。しかし、今回の規制が子どもたちに直接影響を及ぼす問題であるにもかかわらず、当事者である子どもたちの意見を十分に聞いたのかどうか、疑問が残ります。
さらに、この法律制定に際して条約12条を遵守したかについても検証が必要です。国連が提供する世界的な枠組みの中で、このような規制が子どもの権利を十分に考慮したものかどうか、きちんと見直されるべきだと考えます。
(小山さん)
国連の「子どもの権利条約」に基づく子どもの表現の自由や情報を得る権利についてですが、先ほど山田さんが触れた12条に続き、13条でもこれらの権利が明確に規定されています。
この13条は、表現の自由と知る権利を保障するものであり、SNS上で自由に表現することや情報を得ることを保護しています。しかし、オーストラリアの今回の規制は、この権利に制限を課すものです。
もっとも、13条には例外規定があるため、その範囲内に該当するかどうかという点も重要になりますが、原則として保障されている権利に対する制限制約を行ったという点で議論を呼んでいます。
(山田さん)
日本でも同様の問題が議論される可能性がありますが、2022年に施行された「こども基本法」が大きな意義を持っています。この基本法は、国連の子どもの権利条約を受けて制定されたもので、私もこの法律の作成に深く関わりました。
(山田さん)
たとえば、基本理念の3つ目、「年齢や発達の過程に応じて、子どもが自分に直接関係する事項について意見を表明し、多様な社会活動に参加する機会が確保される」と定められています。
また4つ目では、「年齢や発達の程度に応じて意見が尊重されるべきである」とされています。
(山田さん)
15歳や14歳の子どもであれば、SNSについて十分に理解し、自ら意見を述べる能力があると考えられます。したがって、政策はこうした意見を尊重して作られるべきです。
(山田さん)
青少年健全育成条例が各自治体で議論される際にも、こども基本法が背景として存在していることを忘れてはなりません。
この法律の第11条では、「国および地方公共団体は、子ども政策を策定・実施する際に、当事者である子どもやその養育者、関係者の意見を反映させるための措置を講じる」ことが求められています。
これは、立法府や司法府、地方自治体、教育委員会、さらには学校の校則にも影響を与える可能性があります。
このように、日本では子ども基本法が子どもの権利を法的に担保しており、その実現に向けて具体的な手続きを定めています。一方、オーストラリアでも「子どもの権利条約」を批准している以上、同様に子どもたちの意見を尊重しなければならないはずです。
特に重要なのは、こども家庭庁がこの基本法に基づいて子どもの意見を反映する政策の説明を行っていることです。子どもの声を聞き、その意見を政策に取り入れることが、持続可能で公平な社会を築くうえで欠かせない要素だと思います。
もう1つ問題として指摘されているのが、Metaからも指摘があった「子どもの年齢確認方法」です。これは非常に難しい課題だと思います。年齢確認は民間業者に委託して、さまざまな形で検証することになるようですが、これが現実的にどれほど可能かという問題があります。
(小山さん)
年齢確認方法について、委託を受けた業者がいくつかコメントしていました。その中には「顔や手の動きから年齢を判定する」という方法があるそうです。顔で判定するのは理解できますが、「手の動き」というのは一体どういう基準なのか疑問です。
また、「身分証明書やメールの履歴などから年齢を確認する」という方法も挙げられています。これに対しては「通信の秘密はどうなるのか」「検閲にあたるのではないか」という批判も出ています。
さらに問題なのは、子どもの年齢を確認するためには、結局のところ大人も含めて全員の年齢を確認しなければならないという点です。
(山田さん)
相手が大人なのか子どもなのか分からない場合、全員を対象に確認せざるを得ないということです。つまり、子どもではないことを確認するというプロセス自体が、大人を含めた全員の確認作業につながってしまいます。
(小山さん)
こうなると、子どものSNS規制を目的としているはずが、大人も含めてSNSの自由な利用が制限される結果になります。
仮に、子どもだけを対象にした年齢確認スキームがあれば理想的ですが、現実的には全員確認が避けられないでしょう。その場合、表現の自由や知る権利、通信の秘密などが大幅に制約されることになります。
具体的な法律の内容は変わる可能性もありますが、少なくとも現在提案されている方法では、人権的な観点から問題が多いと感じます。
(山田さん)
次に、アメリカでの未成年のSNS利用規制についてです。州ごとに規制の動きが広がっており、かなりの数の州でこうした議論が進んでいます。
(小山さん)
現在、41の州とワシントンD.C.がMetaを提訴しているという状況です。未成年のSNS利用規制の動きにおいて、その背景にはSNS依存が引き起こすうつ病など、メンタルヘルスへの悪影響が挙げられています。これが立法の根拠とされています。
しかし、SNS事業者側はこの規制に対し従順ではありません。彼らは「表現の自由を保障する米国憲法に反する」と主張して反発しています。この主張をめぐり、裁判所もSNS業界の言い分を認める判断を下しているケースが出ています。
(小山さん)
南部のアーカンソー州では2022年4月に18歳未満を対象に、親の同意がなければアカウントを開設できないという法律が成立しました。しかし、この法律は2022年9月1日の施行直前、ネット団体「ネットチョイス」による憲法違反の訴えが認められ、裁判所が仮差し止め命令を出しました。結果として、この法律の施行は差し止められています。
また、オハイオ州でも2022年7月に16歳未満を対象とした同様の規制が含まれる2024~2025年度予算が成立しました。しかし、この規制も施行直前に憲法違反を主張する訴訟が認められ、裁判所が仮差し止め命令を出しています。
アメリカでは憲法が州法に優越するため、憲法違反と判断された州法は差し止められることになります。裁判所の判断はまだ仮のもので、最終的に憲法違反かどうかは今後慎重に審議されることになると思いますが、現状では憲法の力が強く働いていますね。
韓国のゲームシャットダウン制
(山田さん)
次に、オーストラリアのSNS規制と似た構造を持つ韓国の「ゲームシャットダウン制」についてお話ししたいと思います。この件については以前も触れましたが、改めて取り上げます。私自身もこの問題に対応した議員の1人であるイ・サンホンさん(韓国国会議員)にお会いし、韓国を訪問して直接話を伺いました。
(山田さん)
この「ゲームシャットダウン制」は、スマホ依存と同様に「ゲーム依存が体に悪影響を及ぼす」との懸念から導入されました。2011年に青少年保護法の一部が改正され、深夜0時から午前6時まで青少年によるインターネットゲームの利用を強制的に制限する仕組みが作られました。
(山田さん)
この「強制シャットダウン制」に加えて、利用時間を自主的に選択する「選択的シャットダウン制」も導入されています。
(山田さん)
しかし、この制度は効果が薄かったとされ、国民からの反発も大きく、2021年11月には「強制シャットダウン制廃止法案」が可決されました。そして、2022年には正式に廃止されました。
(山田さん)
この法案の推進役となったのが、先ほどのイ・サンホン議員です。私は彼から、この制度導入と廃止の背景について詳しく伺いました。
(山田さん)
この「シャットダウン制」の導入背景には、「ゲーム依存から青少年を守るべきだ」という主張がありました。具体的には以下のような理由が挙げられていました。
ゲーム依存による睡眠不足:身体的・精神的な健康問題を引き起こす。
睡眠権の保護:青少年に十分な睡眠を保障する必要がある。
ゲームへの没入予防:個人の問題ではなく、政府が解決すべき社会問題である。
(山田さん)
しかし、「睡眠権」という主張については、「ゲームが睡眠不足の主因ではないのではないか」という疑問もあります。韓国青少年の睡眠不足の主な原因を調査したところ、1位は「宿題」「インターネット講義」「自由学習」など、勉強関連の要因でした。
この「ゲームシャットダウン制」の事例から、オーストラリアでのSNS規制がどのように進み、どのような結果を生むのかを考える上で、示唆を得られるのではないでしょうか。規制の目的が適切かどうか、またその効果と副作用を慎重に検証する必要があります。
(小山さん)
子育てしている親の立場から言えば、子どもはなかなか言うことを聞きません。たとえば、YouTubeを見ていて言うことを聞かない場合、YouTubeを取り上げてしまおうかと考えることはあります。
でも、もし勉強が好きで夜遅くまでやって寝ない場合、勉強をやめさせようとは思いませんよね。結局、自分が嫌だと思うもので子どもが夢中になっているときに、「それを規制しよう」とする短絡的な動機が多いように感じます。
(山田さん)
背景についてはっきりとは分かりませんが、韓国の受験競争が非常に激しいことも影響しているのかもしれません。ただ、「勉強で睡眠がとれなかった」というのは驚きです。
また、韓国コンテンツ振興院が発表したデータによれば、「ゲーム利用者の睡眠時間とゲーム利用時間には意味のある関係はなかった」という事実が示されています。さらに、「暴力的なゲームが青少年の精神的健康に悪影響を及ぼす」という主張についても、3000人を対象にした調査では何の関係性も見つからなかったそうです。
(山田さん)
これらのことから、「エビデンスがない中で規制を進めてしまった」というのが実態だったようです。また、シャットダウン制の廃止に至る経緯としては、
睡眠権という概念が結局根拠薄弱だったこと。
規制対象がSNS視聴などに移り、子どもの興味が次々と他のものに移る現象が見られたこと。
韓国の子どもたちが「マインクラフト」などの人気ゲームを楽しめなくなる問題が浮上し、規制に対する評判が悪化したこと。
こうした要因が絡み合い、最終的に「廃止しよう」という流れになったようです。
(小山さん)
規制には本音と建前があると思います。たとえば、Amazonでは18歳未満が利用してはいけないというルールがある一方で、実際には18歳未満がアカウントを作り、買い物をしていることを前提とした仕組みも見られます。
また、親の年齢確認済みのスマホを使って子どもがSNSを利用するケースも考えられ、抜け道はいくらでもあるように思います。
オーストラリアのSNS規制についても、メンタルヘルス問題やいじめ、自殺といった課題が法律によって本当に防げるのか、もっと慎重に考えるべきではないでしょうか。
韓国のインターネット実名制
(山田さん)
韓国の話が続きますが、現在、日本でも誹謗中傷や選挙関連の問題があり、インターネットの規制を強化すべきだという議論が再燃しています。
自民党内でも「インターネットの匿名表現を廃止し、実名制に移行すべきだ」という意見が挙がっています。発言に責任を持たせるために実名制にしよう、という主張です。
これに関連して、韓国では「インターネット実名制」という規制も試みられています。これがどのような結果をもたらしたのか、日本でも参考になると思いますので、少し触れていきます。
(山田さん)
韓国では2007年、若いタレントが相次いで自殺する痛ましい事件が発生しました。その背景には、攻撃的な投稿が多かったことがあり、「匿名ではなく実名でなければインターネットの安全を保てない」という考えのもと、インターネット実名制が導入されました。
この規制では、本人確認を義務化し、従わない場合には罰金を科すという厳しい内容でしたが、導入の結果、通常のコメントは大幅に減少した一方で、悪質な書き込みはほとんど減りませんでした。その理由として、
他人になりすますケース
極端な意見を持つ人が実名でも臆さず投稿するケース
が挙げられます。
結局、この実名制は普通の人々にとっては発言を躊躇させるものでしたが、悪質な投稿者への抑止効果はほとんどありませんでした。このため、導入から5年後の2012年、韓国の憲法裁判所は「表現の自由の観点から違憲である」としてインターネット実名制を廃止しました。
韓国の取り組みには、ある意味で驚かされますが、ゲームシャットダウン制やインターネット実名制のように、大胆な規制を試みた後、その効果を冷静に検証し、問題があれば廃止できるという点は素晴らしいですね。良いか悪いかは別として、こうした議論と決定を行う韓国の姿勢には学ぶべきものがあります。
(小山さん)
日本では一度規制が導入されると、なかなか見直されることがありません。また、裁判所も積極的に違憲判断を下すことは少ない印象があります。これが日本と韓国の違いなのかもしれませんね。
(山田さん)
韓国の憲法裁判所がインターネット実名制についてどのような判断を下したのかを見てみます。裁判所は、この制度が以下の理由で「過剰侵害禁止の原則」に違反し、表現の自由を侵害していると判断しました。
関連情報の無期限保管による個人情報流出のリスク
実名制を実施するには、個人情報や年齢を特定するために関連データを長期間保管する必要があります。これにより、個人情報が流出する危険性が高まり、より大きな問題を引き起こす可能性があると指摘されています。国民全員を潜在的な犯罪者として扱う構造
匿名のすべてが悪ではないにもかかわらず、制度上すべての国民を「悪意のある投稿者予備軍」として扱うような仕組みが構築されています。これにより、必要以上の不信感を生むという批判がありました。
また、実名確認の方法も非常に厳格で、住民登録番号の提示を求めたり、クレジットカードや携帯電話などを使用して本人確認を行う仕組みでした。これを守らない事業者には3000万ウォンの科料が科されていました。
しかし、結果として、通常のコメントは激減したものの、誹謗中傷や攻撃的な書き込みはほぼ減少しませんでした。制度自体の効果が乏しかったことが明らかになっています。
(小山さん)
実名制を求める気持ちは理解できますが、必要性や効果について慎重に議論すべきです。さらに、それが憲法秩序に照らして許容されるのかという点も重要です。
韓国の事例では、議会はその判断を見誤り、結果的に憲法裁判所が違憲と判断しました。日本でも、誹謗中傷や匿名性に関する議論がありますが、同様に慎重な検討が必要です。
必要性が認められる場合でも、「本当に実施してよいのか」「憲法違反のリスクをどう回避するのか」を深く議論しなければ、国民に不利益だけをもたらす法律になりかねません。
守ろうとしたものが守れず、むしろ害を与える結果を招く例は多く見られます。そうした失敗を繰り返さないよう、丁寧な検討が求められます。
ロシアにおけるネット規制の例
(山田さん)
次に、ロシアや中国のネット規制について触れてみます。これらの国では、政治的な取り締まりが非常に強いのが特徴です。日本がこうした方向に進まないように、事例を少し見ておきたいと思います。
(山田さん)
ロシアでは2014年から「公衆インターネット施設に関する規制」が導入されており、実名制が実施されています。インターネットの利用に関する監視が強化され、規制が進んでいます。
中国におけるネット規制の例
(山田さん)
次に中国についてです。中国のネット規制は非常に徹底されており、日本がこのようにならないことを願います。中国には表現の自由や通信の秘密といった概念が存在しません。極端なケースと言えるでしょう。たとえば、以下のような規制が行われています。
SNSでの時事問題の取り扱い禁止
時事問題を扱う投稿者に対し、事実上「書いてはならない」とする制約があります。有力インフルエンサーの実名情報開示
フォロワーが50万人以上のインフルエンサーは、美容や旅行、グルメなどの日常生活の投稿を除き、実名を明かさなければなりません。データの海外持ち出し制限
ネット安全法により、中国国内で取得したデータの海外持ち出しが厳しく制限されています。日本に持ち帰るパソコン内のデータですら、規制に抵触する可能性があります。
(山田さん)
中国のネット実名制は、「社会主義制度の転覆を煽る」とされる行為に対する取り締まりを強化するためのものです。政府に対する批判的な投稿をすれば、大きなリスクを背負うことになります。
(山田さん)
さらに、2023年11月からは50万以上のフォロワーを持つインフルエンサーが実名表示を義務付けられ、美容や旅行、グルメ以外の投稿には強い制約がかけられています。
(山田さん)
中国の規制は「グレート・ファイアウォール(金盾)」と呼ばれる監視システムによって支えられています。ブラックリストによる監視体制の下で、遮断されている情報が非常に多いのが特徴です。たとえば、中国では以下のウェブサイトがブロックされています。
Facebook
YouTube
Twitter
Instagram
GitHub
ニューヨークタイムズ、BBC、ブルームバーグなどのニュースサイト
これらの規制を考えると、情報アクセスが極端に制限されることが分かります。これほど制約される状況では、私たちのような情報に依存する生活は成り立たないと感じます。
(小山さん)
中国の「グレート・ファイアウォール」による情報遮断の主な対象として、政治的問題や政府に不都合な行動が挙げられます。また、政治的啓発サイトや政府を批判するSNSメッセージも規制されています。
日本国憲法では「表現の自由」が優越的価値を持つとされています。特に、民主主義を健全に機能させるために必要不可欠な「政治的表現の自由」が重要だというのが通説的見解です。
しかし、中国はこれを真っ向から否定しており、政治的表現の自由はもちろん、それ以外の表現の自由も事実上存在していない状態です。
ただ、完全に規制が徹底されているわけではなく、一部の人々はアンダーグラウンドの手段を使ったり、国外の情報を活用したりしていると聞いています。
(山田さん)
中国は本当に変わってしまいましたね。私が2005年から2006年にかけて中国で仕事をしていたころは、まだのどかな時代でした。ネット規制や監視もそれほど厳しくなかった印象があります。
それが今では、強烈なデジタル監視社会に変わり、国会議員としても怖くて訪問できないような国になっています。さらに驚くべきことに、日本のコンテンツも多くが規制対象となっています。
(山田さん)
たとえば、「デスノート」「東京喰種」「進撃の巨人」などが禁止されています。禁止理由が明確でないものもありますが、大抵の場合、エログロや暴力を理由に規制されているようです。日本国内で議論される規制が控えめに見えるほど、中国の規制は過激です。
(山田さん)
また、中国の「インターネット安全法」によって、テレビ、映画、ゲーム配信、アニメなど、ほぼすべてのメディアが検閲対象となっています。
(山田さん)
日本の価値観からすると、検閲が堂々と行われる状況は受け入れがたいものです。日本の民主主義社会では、こうした政策を掲げれば政権が倒れる可能性すらあるでしょう。それだけ日本が民主主義国家であることを改めて実感します。
(小山さん)
これまで「さんちゃんねる」でも取り上げてきた新サイバー犯罪条約についてですが、中国やロシアが主導したとされる国連総会決議が可決されました。この動きから分かるのは、中国やロシアのようなインターネット規制や検閲を歓迎する国が多いという現実です。
私たちは、「中国やロシアのやり方はおかしいから、いずれ自由主義や民主主義によって正されるはずだ」という認識にとどまってはいけません。こうした単純な認識のままでいると、厳しい現実に直面することになるでしょう。
(山田さん)
新サイバー犯罪条約において、日本の漫画が標的にされる理由はよく分かります。中国国内では、あの程度の漫画やアニメですら検閲の対象になるのですから。
(山田さん)
中国の検閲基準を見ても驚かされます。何を言っても規制に引っかかるような基準が設けられているため、この価値観の違いを考えると、サイバー犯罪条約についての議論もなかなか相容れない部分が多いと感じます。
隣国として中国と仲良くやりたい気持ちはありますが、表現の自由や価値観の土台が全く異なるため、同じ土俵で議論すること自体が難しい状況です。
中国の人々にとっても、自国の検閲基準は「堂々と掲げられた当たり前の内容」と認識されているため、批判というよりは価値観の違いとして受け止めざるを得ません。この点に関しては議論が極端にすぎるため、取り上げること自体に限界があると感じます。
日本の表現の自由を守るために
(山田さん)
ただ、日本が中国のような規制国家にならないようにするためには、努力が必要です。そして、これまでの議論を通じて分かってきたのは、アメリカやEU、オーストラリアといった先進国も含めて、ネット規制が非常に進んでいるという現実です。
この流れは間違いなく進行しており、今後も注視していかなければなりません。
日本では比較的表現の自由が守られており、特定の表現を描いたり書いたりしたことで捕まったり罰せられたりするケースは少ないです。こうした自由を信じているからこそ、私たちはこの国で自由な活動ができているのだと思います。
ただし、例えばクレジットカード規制のような問題が出てくると、「こういうものを作ったり発表したりすると禁止されるかもしれない」「他人に迷惑をかけるかもしれない」という自主規制が生じてきます。
その結果、「ああいう表現は良くない」「こういう描写は控えるべきだ」といった風潮が広がり、それが新たな規制や法律を求める声につながることがあります。
やがて基準が曖昧なまま規制が広がり、「みんながそう言っているから」という理由だけでルールが作られる状況が生まれる可能性もあります。
立法府にいる私たち国会議員は、法律や秩序を作ることが職務ですが、社会秩序を維持するための立法が必要以上に広がると、個人の自由や文化的な表現が阻害されるリスクもあります。
個人の権利や利益を守るための立法は重要ですが、社会秩序を理由とする規制は、一部の人に利益をもたらす一方で、他の人に不利益を与える可能性があります。このため、慎重に議論する必要があります。軽率な規制が広がると、文化や経済の成長が阻害される恐れがあります。
例えば、クリエイターや文化を大切にしようとする一方で、「こういう表現は控えよう」といった自主規制が広がると、表現活動が萎縮し、社会全体が生き苦しいものになってしまいます。
誰にも迷惑をかけない限り、自由な表現を認めるべきです。このような状況を避けるためにも、規制には慎重さが求められます。
今回取り上げたクレジットカード規制やオーストラリアの16歳未満のSNS利用禁止のような極端な事例を見ると、日本も似た状況に陥る可能性があると感じます。
一方で、韓国のように、新たな規制を導入しつつ、効果がないと判断すれば迅速に廃止できる国もあります。韓国は派手に規制を作り、また大胆に廃止するという姿勢が特徴的で、これも1つの民主主義のあり方だと感心します。
表現の自由について改めて考えると、規制のあり方が重要だと痛感します。小山さんは今回の調査でどのように感じましたか?
(小山さん)
やはりバランスが重要だという結論に尽きると思います。人の命は何より大切です。そして、表現の自由もまた非常に重要です。では、これらが衝突する場面でどう判断するべきかという問題に直面したとき、慎重な議論が求められます。
たとえば、「これを実施すれば人命が救える」と考えられる場合でも、その効果がほとんど期待できない一方で、多大なデメリットがあるとしたら、それを立法府として採用するのは適切ではありません。
人の命を守ることの重要性は誰も否定できませんが、たとえば交通事故で毎年多くの命が失われている現実があります。では「車の運転を禁止しよう」という極端な結論にはならないのが通常です。このように、どのような場面でどの程度の制限を設けるのか、その線引きが重要になります。
命を守るためであっても、何をしても良いというわけではありません。一方で、命の尊さは厳然たる事実であり、これを踏まえた議論が必要です。これまでの憲法秩序の中で人権が作り上げられてきた歴史的背景やその重みを十分に理解し、冷静に議論を重ねるべきだと改めて思います。
(山田さん)
今日はこの辺りで終わりにしたいと思います。クレジットカード規制の問題は現在厳しい局面を迎えていますが、粘り強く取り組み、可能な解決策を模索していきたいと思います。皆さまのご支援をよろしくお願いします。それでは本日はこれで終わります。どうもありがとうございました。