小説を書いているならコスト意識を持とう
何度か同じことを書いていますが、読者は利益を得るために本を読んでいます。
たいていの場合、利益を得るには、ある程度のコストが掛かります。
小説を書いているなら、読者が支払うコストについて意識しておくといいでしょう。
今回はコスト意識を持とうという話です。
小説のコストとベネフィット
読者は利益(ベネフィット)を得るために小説を読んでいます。
利益を得るために読者が負担するのがコストです。
小説のコストとベネフィットをまとめてみましょう。
主なものはこんな感じだと思います。
コスト
書籍代
本を探す労力
読む労力
ベネフィット
感情的
楽しい、面白い
感動した、泣いた
癒やされた、和んだ
興奮した、わくわくした
情報的
役に立った、勉強になった
知識が増えた、情報を知ることができた
コストの中で、作家が直接関与できるのは「読む労力」です。
また、ベネフィットはどれでも提供できることが分かると思います。
ところで、コストとベネフィットで考えると、作家の仕事は何だと思いますか?
作家の仕事は、次の式における左辺を最大化することです。
読者の純利益 = 予想される利益 ー 読みのコスト
読者の純利益を最大にするには
作家の仕事は、読者の純利益を最大にすることです。
そのためにできることは次の2つだと分かるでしょう。
予想される利益を上げる
読みのコストを下げる
それぞれ何が出来るか見ていきます。
1.予想される利益を上げる
1つ目は予想される利益を上げることです。
簡単に言うと面白くすればいいのですが、それ以上に気をつけなければならないのは、
利益を与えるタイミング
です。
単純に言えば、読んでいる最中は、読みのコストが掛かり続けます。
つまり、支払いばかりが続くのですね。
損してばかりだと、いずれ読者は本を読むのを止めるでしょう。
ですから、どこかの時点で利益を確定させなければならないのです。
この場合の利益とは、主人公が得をすることだと考えればいいでしょう。
主人公の得 = 読者の得
ですからたとえば、
小さな謎が解ける
ホッとするシーンになる
主人公が報われる、褒められる、認められる
楽しい出来事が起こる
などが利益になります。
これらの利益をいつ確定させるかですが、このタイミングは想定読者によって異なります。
たとえば、ライトエンタメの読者なら、ちょこちょこと小さな利益を与えない限り、読み進めてはくれません。
ですが、ミステリの読者なら、きっとそこまでの利益を確定しなくても、最後までついてきてくれるでしょう。
なぜならミステリでは最大の利益が、物語の最後に得られることが分かっているからです。
(真犯人が分かる、謎がすべて解ける、どんでん返しが起こるなど)
このように、利益を与えるのは当然のこととして、利益を適切なタイミングで確定させていくことが重要です。
これができないと、読者は途中で「これ以上読んでも損をする」と判断し、本を読むのを止めてしまうのです。
2.読みのコストを下げる
2つ目は読みのコストを下げることです。
読みのコストは総合的なものですが、以下の要素ごとに考えると分かりやすいでしょう。
文章
キャラクター関連
ストーリー関連
世界設定、アイデア関連
テーマ関連
それぞれが複雑であればあるほど、読みのコストは上がります。
たとえば文章なら、
難読漢字を使う
一文が長い
言い回しが独特
改行が少ない
台詞が少ない
漢字の量が多い
漢字を開かない
難しいレトリックや比喩を使う
などをすれば、コストが上がるのが分かるでしょう。
こういった工夫を止め、文章をシンプルなものにすればするほど、読みのコストは下がります。
もちろん、やみくもにコストを下げる必要はありません。
ですが、コストを上げるなら、同時に利益も上げないと、読者は損をするばかりだと分かっておきましょう。
逆に言えば、「利益が上がると確信できるなら、コストを上げてもいい」と考えてもいいですね。
たとえば、難読漢字を使うことで読みのコストが上がるが、同時に物語の雰囲気が高まり、それが読者の利益につながるならOK、ということです。
(ただ、上でも書いたとおり、利益は適切なタイミングで確定させる必要があります。「物語の雰囲気」が利益として確定するのは、だいぶ後になりそうな気もしますね)
以上のように、小説を書いているなら、読者のベネフィットとコストに意識的になるといいです。
常に読者の純利益を気に掛けてあげましょう。
純利益が下がれば、読者は本を読むのを止めます。
そうなれば、いくら美麗な比喩を使っていても、最後に衝撃的な展開が待ち受けていても、すべては無駄になってしまいます。
最後まで読まれない本は、存在しないのと同じなのです。
せめて、最後まで読んでもらえるよう、読みのコストの増加には気をつけるといいですね。
今回のまとめ
「小説を書いているならコスト意識を持とう」でした。
読者は利益を得るために小説を読んでいる
小説のコストとベネフィットを知っておく
作家が直接関与できるコストは、読みのコスト
ベネフィットはすべて提供できる
作家の仕事は読者の純利益を上げること
読者の純利益 = 予想される利益 ー 読みのコスト純利益を上げるためにできることは
予想される利益を上げる
読みのコストを下げる
予想される利益を上げる
面白くする
読者の利益 = 主人公の利益
利益を適切なタイミングで確定させる
読みのコストを下げる
小説の各要素をシンプルにする
コストを上げるなら、利益も同時に上げる
ごく単純に言えば、簡単な話、簡単な文章にして、ちょこちょこと利益を与えてあげれば、最後まで読んでもらえると思います。
まずはこの辺りを意識してみるといいでしょう。
それではまたべあー。
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