新作小説が爆死した理由を考える
新作、爆死しました……涙
(爆死というのはぜんぜん売れなかったという意味です……)
担当さんとも話し合ったのですが、結局、このnoteにえらそうに書いている基本的なことを、私自身が実践できていなかったことが原因でしょう。
今回は戒めの意味も込めて、爆死した理由をまとめておきます。
みなさんにはぜひ他山の石にしてもらえればと思います。
爆死とは
最初に「爆死」について簡単に説明しておきましょう。
「爆死」とは作品がまったく売れなかったときに使う表現です。
どの程度の売り上げ部数からが「爆死」で、どの程度からは「爆死ではない」のかはジャンルによって異なります。
私がいるジャンルでは、おそらく爆死ラインは以下にようになるでしょう。
オリコン1週目に載らない = 爆死
オリコンランキングは何度か書きましたが、以下のサイトです。
オリコンランキングの「本ランキング」が作家に関係があるところです。
(特に「文庫」「ライトノベル」「文芸書」辺りをチェックすることになるでしょう)
登録すると20位(または50位)までが見られるようになります。
発売日によって集計に差が出るのですが、ごく単純に言って、(あくまで私がいるジャンルでは)発売1週目にこの20位以内に入っていなければ、爆死認定していいでしょう。
爆死した理由2つ
新作が爆死した主な理由は2つほど考えられます。
新規性が足りなかった
タイトルが地味すぎた
それぞれ簡単に見ていきましょう。
1.新規性が足りなかった
1つ目は新規性が足りなかったという理由です。
実のところ、本当はこれだけが真の理由です。
他のジャンルでは違うかもしれませんが、私がいるジャンルでは、新規性がない限り、絶対に売れません。
新規性とは何でしょうか?
一言でいえば、
今までの作品との違い
です。
もう少し具体的にいえば、
今までなかった切り口
今までなかったワード
今までなかった楽しさ
などになるでしょう。
当たり前ですが、今までもあったような作品なら、買う必要がありません。
読者は常に、今までなかった作品を求めています。
ですから、(本当は新しくなくても)少なくとも、新しい作品だと思わせなければ買ってもらえないのです。
作品の内容と外見
ここで少し遠回りして、商品(作品)の本質を見ておきましょう。
単純に言って、すべての商品は以下の2つに分解できます。
内容(コンテンツ)
外見(パッケージ)
小説においてはこうなりますね。
内容 = 小説本文
外見 = タイトル、あらすじ、帯、表紙、売り場、販促方法など
図にするとわかりやすくなります。
作品は図のように、外側に「外見(パッケージ)」があり、中に「内容(コンテンツ)」が隠れている構造になっています。
これは家電製品でも、お菓子でも、マンガでもぜんぶ同じです。
さて、多くのアマチュアの方や新人作家さんは、
「内容さえ良ければ売れる(読まれる)」
と思いがちです。
ですが、上の図を見れば、そんなことは起こらないことがわかりますね。
なぜなら読者が見ているのは、あくまでも「外見(パッケージ)」だからです。
内容がいくら良くても、外見が悪ければ、読者は手を出しません。
もちろん内容も良いに越したことはないのですが、読者が買うかどうか、手に取るかどうかは、ほぼ外見だけで決まります。
ところで、上で「新規性が足りなかった」と書きましたが、その新規性はどこに宿ると思いますか?
内容でしょうか?
もちろん内容に新規性がある方がいいに決まっているのですが、内容に新規性があっても、読者からは見えません。
図で見たとおり、読者が見ているのは「外見」だからです。
従って、
新規性は「外見(パッケージ)」に宿る
と分かっておいてください。
そうでなければ、読者には伝わらないのです。
創作物の3要素で考える
さて、ここでさらに理解を深めるために、創作物の3要素を知っておきましょう。
創作物の3要素とはこうです。
アイデア
ロジック
表現
すべての創作物(成果物)にはこの3つが含まれています。
たとえば建築物なら、
アイデア:コンセプトを出す
ロジック:設計する
表現:施工する
になりますし、
小説なら、
アイデア:アイデアを出す
ロジック:ストーリーやキャラクターを設計する
表現:文章で表現する
となるでしょう。
これらを踏まえた上で、内容(コンテンツ)と外見(パッケージ)の図を別の角度から見ておきます。
創作3要素で考えると、作品と読者の関係は、こんな感じになるはずです。
作品は、アイデア>表現>ロジック、の三層構造を成していると捉えられます。
読者の目に最初に写るのは「アイデア」です。
この「アイデア」が新規性ですね。
多くの読者はこの「アイデア」層の新規性を見て、買うか買わないか、読むか読まないかを決めます。
「アイデア」層の下には「表現」層があります。
表現まではチェックする人が多いでしょう。
本をパラパラめくって好みの文章か確認するとき、読者は「表現」層の浅いところまでは見ています。
つまり、読者に見えるのは、この「表現」層の浅い部分までということです。
そして、見ているだけではわからないのが「ロジック」層です。
ストーリーやキャラクターなどのことですね。
ここは読んでみるまではわかりません。
以上のように、読者が作品を買うかどうか、読むかどうかを決めるプロセスは、
アイデア(新規性)を見て手に取る
表現(文章)をチラ見して買うかどうか決める
ロジック(ストーリー)は判断材料にはならない
といった感じになると思います。
2.タイトルが地味すぎた
さて、話を元に戻しましょう。
爆死した理由の2つ目は、タイトルが地味すぎたという点です。
実のところ、先日出した本は、企画段階で「ちょっと新規性が足りないな……」という認識を持っていました。
実際売れなかったのですから、その認識は正しかったのでしょう。
ですがそれなら、せめてタイトルは目を引くものにすべきだったのです。
新規性があるなら、もちろんその新規性はタイトルに入れなければなりません。
今まで見てきたとおり、
多くの読者は「外見」しか見ていない
「外見」とはタイトルやあらすじ、帯、表紙などのことである
読者は今までなかった新しい作品にしか興味がない
なのですから、必然的に、その新規性は外見、つまり、主にはタイトルに入れることになります。
では、新規性がない、あるいは弱い場合はどうすればいいでしょうか?
おわかりのとおり、それならせめてタイトルで新しさを醸し出す必要があります。
つまり、パッケージで新しく見せる方法ですね。
極端なことを言えば、内容は新しくなくても構いません。
外見(パッケージ)さえ新しければ、手に取ってもらえます。
「それでは志が低いのではないか?」と思う人もいるかもしれませんが、手に取ってもらって初めて中身を読んでもらえます。
もちろん中身が良いに越したことはありませんが、外見を磨くことを忘れると、そもそも読んでもらえない作品になってしまうのです。
以上のように、私の新作は、新規性がやや弱いからこそ、タイトルで勝負すべきでした。
極端に言うと、「なにこの変なタイトル!?」と思われるようなタイトルをつけるべきだったのです。
(もちろん戦える新規性があれば、そのまま素直にタイトルに入れればいいです)
さて、このように、最終的に作品は「新規性」で勝敗が決まることがわかったと思います。
新規性とは創作物の3要素で言うところの「アイデア」ですね。
ですから、売れる作品を作る方法は、
良いアイデア(新規性)を出す
そのアイデアが読者に伝わるようにする(=主にタイトルに入れる)
というシンプルなものになるわけです。
最後に、何度も同じことを言いますが、これだけは分かっておいてください。
内容で売れることはありません。
特に内容に自信がある人は気をつけましょう。
(それは私のことです……)
プロになってから大分経ちますが、今でもついつい「この内容なら売れるはず」「今回の作品だけは大丈夫でしょ」などと思ってしまいます。
ですが、そんなことを思ってしまったときこそ、以下を思い出してください。
肝に銘じましょう。
内容が良いだけでは絶対に売れません!
今回だけは大丈夫などという例外はありません!
新規性だけが勝敗を決めます!
「この内容なら売れるっしょ?」みたいな甘いことを考えていた発売前の自分を殴りたいですね……はは
今回のまとめ
「新作小説が爆死した理由を考える」でした。
爆死とは、オリコン1週目に載らないこと
爆死した理由2つ
新規性が足りなかった
タイトルが地味だった
作品は内容と外見に分けられる
内容:小説本文
外見:タイトル、あらすじ、帯、表紙ほか
読者は外見しか見ていない
内容で売れることはない創作物の3要素
アイデア
ロジック(ストーリー、キャラクター設定)
表現(文章)
読者はアイデア、表現までを見て買うかどうか判断する
勝負は新規性(アイデア)で決まる
新規性があるなら、タイトル(外見)に入れて読者に伝える
新規性がないなら、せめてタイトルで新しく見せる
なかなか上手くいかなくてヘコみます……
でも来年こそはヒットを出したいです!
今年良い結果を出せなかった方、一緒にがんばりましょう!
それではまたくまー。
(2023.12.25追記)
お、おう……