読者に求められる小説を書く、たった1つのコツ
「たくさんの人に読んでもらいたい!」「もっと売れたい!」というのは、小説を書く人なら誰でも思うことでしょう。
今回は、特定のジャンル向けになるかもしれませんが、求められる小説を書く考え方をご紹介します。
やや上級者向けの記事になるかもしれません。
読者は欲望を満足させるために本を読む
最初にこのことを分かっておきましょう。
読者は、自分の欲望を満足させるために本を読んでいます。
読者の欲望とは何でしょうか?
欲望は人それぞれですが、簡単なものでは以下のようなものがあるでしょう。
知りたい、わかりたい
認められたい、褒められたい
癒やされたい、安心したい
冒険したい、活躍したい
感動したい、興奮したい
読者は、これらの欲望が満たされると思う本を選んで読んでいます。
ですから、読者に求められる小説を書くには、読者の欲望を適切に満足させなければならないということです。
とはいえ、読者によって欲望は様々ですから、どんな欲望を満足させればいいか迷ってしまいますよね。
どう考えればいいでしょうか?
指針はこうです。
後ろめたい欲望を満足させる
後ろめたい欲望を満足させる
欲望はいろいろですが、もっとも強烈な満足感を与える欲望は、読者が
「ちょっと後ろめたいな……」
「さすがに調子よすぎるよなあ」
と尻込みするような欲望です。
読者には(人には)、本当は欲しいにも関わらず、「それは人としてどうなのよ?」と後ろめたく感じてしまう欲望があるものです。
ごく簡単なところでは、誰もが、
「自分だけ異性にちやほやされたい」
という欲望を持っていることでしょう。
とはいえ、この欲望をおおっぴらには言えません。
それを言うと「人としてどうよ?」と思われるからです。
ですが、だからこそ、その欲望をフィクションで叶えてあげるのです。
こういった後ろめたい欲望こそが、読者が最も叶えて欲しい欲望です。
現実で言うのは後ろめたいけど、フィクションの中でなら思いっきり求めていいからですね。
つまり、後ろめたい欲望であればあるほど、フィクションで描く価値があります。
ライトエンタメジャンルでヒットしているのは、ほぼこういった作品だと分かるでしょう。
(ほかのジャンルでは違う場合も多いですが)
「ハーレム」「逆ハーレム」「自分だけが最強」「自分だけ能力がある」「自分だけちやほやされる」「自分だけ血筋がすごい」……
こういった作品がヒットするのは、「それはどうなのよ?」と思うような後ろめたい欲望をこれでもかと叶えているからです。
ですから、単純に言って、とんでもなく後ろめたい欲望を叶える小説を書けば、読者はこぞってあなたの小説を読みます。
従って、読者に求められる小説を書くには、
「それはさすがにだめでしょ」
「人として終わってるわ……」
「都合が良すぎるだろ……」
と思うくらいの欲望を見つけるのが手っ取り早いということです。
欲望のバランスを取る
とはいえ、上で書いたような後ろめたい欲望をそのまま提供しても、多くの読者は抵抗を覚えます。
現実で言ったら「人としてどうよ?」「頭がどうかしちゃったの?」と非難されるような欲望だからです。
たとえば「イケメンでちょっと意地悪な伯爵様が自分を溺愛して離してくれない」とか、「聖女の力に目覚めて世界を救い、王族や貴族たちに求婚されて困ってしまう」などはちょっと頭のおかしい欲望でしょう笑。
その場合はバランスを取るといいです。
簡単なバランスの取り方は、
主人公をこれでもかとひどい目に遭わせておく
ことでしょう。
最初にものすごく落としておけば、あとで上げても(ちやほやされたりして
も)、読者は言い訳ができます。
つまり
「こんなにひどい目に遭ったんだから、後で欲望を叶えてもいいよね?」
ということです。
読者は、後ろめたい欲望を存分に味わうための言い訳が欲しいのです。
ですから、ちゃんと言い訳を用意してあげましょう。
ひどい目に遭ったからといって、良い目に遭うのが当然、というわけではないのですが、フィクションの中では、このようにバランスを取ってあげると読者は安心して欲望を満たすことができるのです。
もっと後ろめたい欲望
さらに言えば、もっと後ろめたい欲望を叶えることでも、読者を引きつけることができます。
もっと後ろめたい欲望の代表は、
他人が不幸になるのを見たい
です。
栄華を極めていた人物が落ちぶれていく様を見るのは、後ろ暗い欲望を強烈に満足させるでしょう。
とはいえ、ここでも読者は抵抗を覚えます。
「他人の不幸を楽しむなんて、人としてどうよ?」
この場合も、上と同じように、読者に言い訳を用意してあげます。
その人物を、どうしようもなくひどい人物にすればいいのです。
主人公をこれでもかと苛め抜いたちょっとした権力者、などにするのが簡単でしょう。
そういう人物から誰かが主人公を救い出し、主人公はどんどん幸せになり、苛め抜いた人物はどんどん落ちぶれていく——
この構造なら、
「こんなひどい奴、落ちぶれて当然だよね」
と読者は「他人の不幸を楽しむ」という欲望に言い訳を作れるわけです。
こういった、後ろ暗い欲望を叶えることでも、読者を呼び込むことができるでしょう。
さて、何度も同じことを言いますが、読者は本を読んで、自分の欲望を満足させたいだけです。
すべてのジャンルに言えるわけではありませんが、少なくとも特定のジャンルにおいては、後ろめたい欲望であればあるほど、読者の満足感は高まります。
そして、その際、言い訳を提供することを忘れないことです。
言い訳があることで、読者は、その後ろめたい、やましい欲望を、思う存分楽しむことができるからです。
あなたの作品は読者の欲望を満足させているでしょうか?
その欲望は、現実では後ろめたくて言えないような、やましい欲望ですか?
そういった欲望を叶えているなら、あなたの小説は読者に求められるはずです。
もちろん、読者に求められることだけが小説を書く意義ではありません。
ですが、私のようなエンタメジャンルの作家であれば、今までなかった後ろめたい欲望を叶えることが、ヒット作を出すコツでもあります。
下劣な考え方だと思う人もいるかもしれませんが、ちょっと検討してみるのも悪くないと思います。
今回のまとめ
「読者に求められる小説を書くコツ」でした。
読者は欲望を満足させるために本を読む
欲望は人それぞれ
指針は「後ろめたい欲望を満足させる」
後ろめたい欲望とは
人としてどうよ?と思われそうな欲望
現実では言えないやましい欲望
後ろめたい欲望であればあるほど、フィクションで描く価値がある
欲望のバランスを取る
読者は後ろめたい欲望を叶えることに抵抗がある
だから言い訳を作ってあげる
主人公をひどい目に遭わせておくのが簡単
もっと後ろめたい欲望
他人の不幸を楽しむ
同様に言い訳を作ってあげる
主人公をいじめていた人物が落ちぶれていくのが簡単
今回は身も蓋もない内容だったかもしれません笑。
とはいえ、売れている作品には多く見られる構造です。
そういった作品をご自身でも楽しんでいるなら、同じ構造を提供すれば、読者も同じように楽しんでくれるということです。
それではまたくまー。
(2023.10.2追記)
やったー!
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