「切なさをどう表現すればいいですか?」など3つの質問にお答えします
皆さんからのお悩みやご質問に答えるシリーズ。
今回はMさんから3つ質問をいただきました。
Mさん、ありがとうございます!
さっそく質問を見ていきましょう。
3つの質問
Mさんからの質問は以下です。
復讐の方法
ジャンルの比重
切なさの表現
原文はこちら。
今、主人公が復讐する物語を書いてるのですが、肝心の「復讐方法」が思いつきません。この場合、以前の「ミステリっぽい小説を書く簡単なコツ3つ」のように逆転の設定を考えれば良いのでしょうか?
また、ミステリー×〇〇のように、1つの作品に2つのジャンルが掛け合わされている作品は、それぞれをどれくらいの比重で書いていけばいいでしょうか?
例えば、ミステリー×恋愛の場合、ミステリーと恋愛のシーンをどのくらいの比重で書けばいいのかがわからないです。「切なさ」とはどう表現すれば良いのでしょうか?切ないの定義が、イマイチ分かりません。これまで見たドラマや映画に、胸にグッとくるシーンがありましたが、切ないの「公式化」ができません。
かなり具体的な質問ですね。
それぞれ私なりに回答していきます。
1.復讐の方法
1つ目は復讐方法の考え方です。
これは単純にこう考えるといいでしょう。
その人物が一番嫌がることをする
たとえば、
貧乏が嫌な人
資産を全部奪って極貧生活に落とす
虫が嫌いな人
大量の虫がいる穴などに落とす
美貌を誇る人
顔をぐちゃぐちゃにして大勢にさらす
子煩悩な人
子どもを誘拐する
などですね。
その人物が嫌がることを考える場合は、その人物の生育歴を書き出してみるのが簡単です。
育ってきた時間の中で嫌なもの(や大事なもの)が形作られるので、どう育って、なぜ嫌いになったのかを設定してみると、復讐方法も浮かびやすくなるでしょう。
あるいは、
自分がされたことを何倍かにしてやり返す
と考えるのもいいですね。
おそらく主人公は相手にひどい目に遭わされたはずなので、それと同じ状況を作り出せば、どれほどひどいことだったかを相手に分からせることもできそうです。
また、えげつない復讐方法を考えるには、一瞬で終わらせるのではなく、ダメージを長引かせるにはどうすればいいかを考えてみるといいでしょう。
一生ダメージが続くのがもっとも陰惨な方法です。
戦場では、兵士を殺すより、怪我をさせた方が部隊の負担が大きくなるのと似ていますね。
2.ジャンルの比重
2つ目はジャンルの比重についてです。
これは、その作品のターゲット読者を考えると目安を出しやすいと思います。
ターゲットとなる読者は、どういう作品を読みたい人たちでしょうか?
ガチガチの本格ミステリを読みたい読者なら、恋愛はむしろ邪魔になるので割合は低い方がいいですね。
(ミステリ:恋愛 = 9:1くらい?)
あるいはライトなファンタジーを好む読者なら、ミステリ要素は低くてもいいでしょう。
(ミステリ:ファンタジー = 2:8くらい?)
目指しているジャンルやレーベルがあるなら、代表的な作品を何冊か読んで、どのくらいの割合で混ざっているかをざっくり見てみるのもいいと思います。
多少の偏見込みで言うと、ライトノベルやライトミステリといった「ライト」と名のつくジャンルでは、少なからず恋愛要素が入ってくるものです。
主人公とヒロイン(たち)のちょっとした恋愛模様は、標準装備だと考えるといいでしょう。
また、ジャンルを混ぜる場合は、どちらをメインにして、どちらをサブにするかを意識しておくといいです。
読者はどっちつかずの作品を嫌いますし(選びにくいので)、どっちつかずだと売り出し方(押し出し方)も難しくなるからです。
ですから、半分半分で混ぜるといったことはせず、7:3くらいを目安にメインとサブで混ぜるのが無難だと思います。
もちろん上手くいく確信があるなら、半々で混ぜても構いません。
3.切なさの表現
3つ目は切なさをどう表現するかです。
これは難しい質問です。
なぜなら「切なさ」自体、なかなか定義するのが難しいからです。
ですからここでは「切なさ」単体ではなく、切なさを抱合するであろう
グッとくる = 感動する
を対象に考えていきます。
1.「感動」を分解する
最初に「感動」について理解しておきましょう。
「感動する」とは、単純に言って、「心が動く」ことです。
心にも運動方程式が適用できるとしましょう。
ご存じのとおり、運動方程式は、
F(力) = m(質量) × a(加速度)
ですね。
これを心に当てはめると、
心を動かす力 = ある量 × 加速度
と言い換えることができます。
この式を物語的に解釈すれば、
心を動かす力 = 想いの量 × 変化率
と捉えることができるでしょう。
変化率とは、物語の変化の度合いのことです。
変化の度合いが加速度なのはわかりますよね。
従って、「読者の心を動かす力」を上げるには、右辺の「想いの量」と「変化率」を上げればいいことになります。
ここまで分かったところで次に進みましょう。
2.想いの量と変化率
上で書いたように、読者の心を動かす(感動させる)には、物語において、
想いの量
変化率
の2つを上げなければなりません。
ここで、想いの量と変化率について見ておきましょう。
「想いの量」は、単純に言って、このような式で表せます。
想いの量 = 想いの強さ × 持続時間
図にするとわかりやすくなるでしょう。
想いの量を増やすには、強さだけでも、長さだけでもなく、強い想いが長く続くことが必要です。
この図の場合なら、右が一番、想いの量が多くなります。
一方、「変化率」はどうでしょうか。
変化率が大きい=変化の幅が大きければ大きいほど、加速度は上がります。
物語において、もっとも変化が現れるのはどこでしょうか?
それは、隠されていた真実が明らかになる瞬間です。
この場合の真実とは、いまの文脈で言えば、「想いの量」のことだと分かりますね。
ですから、単純に言うと、こうなればいいわけです。
変化率最大 = 秘めていた想い(の量)が突然明らかになる
3.感動を起こすには
以上が分かれば、感動を起こすのは簡単です。
想いの量を上げる = 強い想いを長い間隠しておく
変化率を上げる = 隠していた想いが突然明らかになる(and その後突然失われる)
単純な例だとこんな感じになるでしょう。
恋愛もので考えてみます。
想いの量と変化率、ともにキーとなるのは時間です。
私たちは自身の体験で、何かを何十年も思い続けるのは無理だと知っています。
ですから、私たちは「長い時間」により強く心を動かされるのです。
一方、変化率は瞬間的に変化が起こる方が大きくなります。
こちらは短い方がいいのですね。
ですから、急に何かが明らかになり、急に失われるのが最良ということになります。
従って、「強い想いが明らかになるが、そのときすでにその人はいない」といった瞬間的な変化を起こすと、読者に強い感動を与えることができるのです。
(一般的に言えば、その人がすでに死んでいるのが一番変化率が大きくなりますね)
感動を作り出す方法はこれだけではありませんが、この考え方を基本として、いろいろバリエーションを作っていくのがいいと思います。
今回のまとめ
「切なさをどう表現すればいいですか?など3つの質問にお答えします」でした。
3つの質問
復讐方法の考え方
ジャンルの比重
切なさの表現
復讐方法の考え方
その人物が一番嫌がることをする
自分がやられたことを倍返しする
ジャンルの比重
読者がどのような作品を望んでいるか
メインとサブ7:3くらいを目安にするのが無難
切なさの表現
切なさ ≒ 感動する
感動 = 心が動く
心の運動方程式:心を動かす力 = 想いの量 × 変化率
想いの量 = 想いの強さ × 時間
想いの量を上げるには、想いを強くし、時間を長くする
変化率 = 変化の度合い
突発的、瞬間的だと大きくなる変化率を上げるには、隠しておいて突然明らかにする
(そして、突然失わせる)
これで回答になったでしょうか?
分からないところがあればまた聞いてください。
改めましてご質問ありがとうございました!
引き続き、皆さんからのお悩みやご質問を受け付けています。
コメント欄やページ下の「クリエイターへのお問い合わせ」からお気軽にお寄せください。
それではまたくまー。
(2024.5.6追記)
わーい!