小説のアイデアを出すときに知っておくべきこと3つ
ちょっと極端なことを言うと、良いアイデアがないなら書くだけムダです。
料理で例えると、食材(アイデア)が腐っていれば、どうやっても良い料理にならないのと同じです。
ですが、これは逆に言えば、食材が良ければ、そこそこの技術でも美味しくなるということでもあります。
今回はアイデアを出すときに知っておくべきことをご紹介します。
知っておくべきこと3つ
今回はアイデアの本質的なところを3つほどにまとめ、おまけで簡単なアイデア出しの方法をご紹介します。
アイデアとは何か
問題か解決か
アプローチの違い
(おまけ)簡単なアイデア出しの方法
それぞれ説明していきましょう。
1.アイデアとは何か
最初にアイデアとは何かを知っておきましょう。
ごく単純にいって、アイデアとは
問題の解決方法
のことです。
加えてアイデアには「今までなかった新しさ」が必要になります。
すでにあったものならアイデアとは言えないからですね。
ですからアイデアとは
新しい問題の解決方法
ということになります。
当たり前に思うかもしれませんが、まずはこのことをはっきりとわかっておいてください。
2.問題か解決か
さて、上で書いたように、アイデアとは「新しい問題の解決方法」です。
見てわかるとおり、この定義は3つの要素で構成されています。
つまり、
新しい
問題
解決方法
ですね。
ここで、小説やマンガといったコンテンツについて見ておきましょう。
単純に言って、すべてのコンテンツは以下の2つに分解できます。
コンテンツ = 問題 + 解決
たとえばミステリがわかりやすいでしょう。
ミステリは犯罪や謎という問題と、その解決で成立しているコンテンツです。
ファンタジーも同じです。
問題: 魔王を倒したいが強すぎる
解決: 仲間を集め、伝説の剣を手に入れて倒す
皆さんが書いている物語も、同じように、問題と解決に分解できるはずです。
ところで、アイデアのもう1つの要素は「新しさ」でした。
この「新しさ」は、「問題」と「解決」の両方に掛かってくると考えてください。
式にするとこんな感じです。
アイデア = 新しさ × ( 問題 or 解決 )
ですから、アイデアの正体は、
新しさ × 問題
新しさ × 解決
の2つになるわけです。
以上を踏まえると、アイデアを出す際のアプローチには2通りあることがわかりますね。
新しい問題を考える
新しい解決方法を考える
問題を新しくするか、解決を新しくするか、の2つのアプローチです。
どちらを選ぶかによって考え方は違ってきます。
引き続き、両者の違いを見ていきましょう。
3.アプローチの違い
上で書いたとおり、アイデア出しのアプローチは2つあります。
新しい問題を考える
新しい解決方法を考える
どちらか一方でもいいですし、両方でもいいです。
したがって、アイデアは以下の3パターンに分類できます。
新しい問題 + 既存の解決 or 新しめの解決(※)
既存の問題 + 新しい解決
新しい問題 + 新しい解決
(※新しい問題を考えると、解決もやや新しめになるのが普通です)
ただ、実際のところ、3の「新しい問題+新しい解決」は新しすぎてややわかりにくい作品になりがちです。
ですから、実質的には1か2になると考えればいいでしょう。
さて、一般的には、2の新しい解決方法を考える方が簡単です。
つまり、「既存の問題+新しい解決」のパターンですね。
たとえばミステリで言えば、「古典的な密室を、最新科学で解明する」などがこれに当たるでしょう。
ファンタジーで言うと、「強すぎる魔王を、交渉術で説得する」などがあり得るかもしれません。
一方、新しい問題を考えるのはかなり難しいでしょう。
「新しい問題+既存の解決」のパターンです。
テスト問題を解くよりも、問題を作る方が難しいのは自明のことです。
ですが、こちらの方がうまくいけばヒットを狙えます。
なぜならほとんどの作品は「既存の問題+新しい解決」で構成されているからです。
新しい問題を考えるのはかなり難しいですし、思いついてもまったく受け入れられない可能性もあります。
したがって挑戦者は少ないのです。
ですから、可能なら「新しい問題」からアプローチする方がベターでしょう。
以上をまとめるとこうなります。
アイデア出しのアプローチは2つ
既存の問題+新しい解決
難易度:比較的かんたん
利点:そこそこの作品を作れる
新しい問題+既存の解決 or やや新しめの解決
難易度:かなり難しい
利点:うまくいけばヒット作を作れる
4.簡単なアイデア出しの方法
ここまでわかったところで、簡単なアイデア出しの方法をご紹介しましょう。
この方法を、私は勝手に「階層法」と呼んでいます。
あらゆるコンテンツは階層構造を成しています。
たとえばミステリを見てみましょう。
この図は適当ですが、ある作品を分類していくと、どこかの階層に位置するのがわかると思います。
これを踏まえた上で具体的な方法を見ていきます。
1.新しい解決方法の考え方
まず、新しい解決方法の考え方を見ていきましょう。
この場合は、主に階層を下に降りていく方向になります。
たとえば、転生ものの異世界ファンタジーで考えるとわかりやすいです。
現代から異世界に転生
チート能力なし
現代知識あり
女性
という条件だとして、苦境を解決する方法を考えてみましょう。
階層の下にバリエーションを作る、と考えるとわかりやすくなります。
女性ならではのわかりやすい解決方法を考えると、現代で調理師だった、パティシエだった、宝飾デザイナーだった、花屋だった、刺繍が趣味だった、などが候補に挙がるでしょう。
(「女性」の下に「職業」「趣味」「技能」といった階層があると考えるとさらに出しやすくなります)
そういった知識で活躍する物語にすればいいわけですね。
候補の中でまだ作品になっていないものがあれば、それが新しい解決方法になります。
このように、解決方法を考える場合は、階層の下に種類を増やしていくと考えると簡単です。
2.新しい問題の考え方
では次に新しい問題の考え方を見ていきましょう。
こちらは主に、階層を上がっていく方向になります。
たとえばミステリで考えてみましょう。
雪が積もり、足跡を残さずには近づけなくなった離れで殺人が起こったとします。
いわゆる「雪密室」ですね。
「雪密室」を起点に、新しい密室(=新しい問題)を考えてみましょう。
図にするとこんな感じになります。
流れはこうです。
「雪密室」を起点にする
「雪密室」の上の階層を考えると、「季節」という階層を思いつく
「雪密室」は「季節」「冬」の階層の下にあると考えられる
「季節」階層には当然「春」「夏」「秋」があるはずだ
では「夏」の下にある「密室」はどんな密室だろう?
この例で新しい密室を思いつくかどうかはわかりませんが、考え方はわかったと思います。
一般化するとこんな感じです。
ある要素を起点にする
その要素が含まれる上の階層構造を考える
その階層の下に存在するであろう階層を考え、横に移動する
階層を下に降りて具体化する
階層の上の方で出したアイデアほど価値が高くなります。
なぜなら、階層の上の方が読者が多いからです。
おわかりのとおり、階層を下に進むほど、内容が特殊になっていくので、読者は少なくなるのです。
理想は、出したアイデアによって新しいサブジャンルができることです。
たとえばそれは、女性向けファンタジーに一番最初に「悪役令嬢」を持ち込むことであり、ミステリジャンルで最初に「特殊設定」を打ち出すことに当たるでしょう。
「次の定番をつくる」
これが最高のアイデアです。
そして、そういったアイデアはだいたいにおいて、「新しい問題を作り出す」方法で得られている、というのが私の考えです。
以上をまとめるとこうなります。
アイデア出しの方法
新しい解決の考え方
方向性:階層を下に降りる
コツ:下にバリエーションを作ると考える
利点:比較的かんたん
欠点:読者が少なくなる
新しい問題の考え方
方向性:階層を上に登る
コツ:何段か上まで上位階層を考え、横にずらす
利点:アイデアの価値が高くなる
欠点:難しく、リスクも高い
今回のまとめ
「小説のアイデアを出すときに知っておくべきこと」でした。
知っておくべきこと3つ
アイデアとは何か
問題か解決か
アプローチの違い
アイデアとは何か
アイデア = 新しい問題の解決方法問題か解決か
コンテンツ = 問題 + 解決
アイデア = 新しさ × 問題 or 新しさ × 解決
アプローチの違い
アプローチは2つ
新しい問題を考える
新しい解決を考える
新しい解決を考えるアプローチ
比較的簡単
無難になりがち
新しい問題を考えるアプローチ
かなり難しい
ヒットを狙える
簡単なアイデア出しの方法
コンテンツは階層構造を成している
新しい解決の考え方
階層を降りる方向
下にバリエーションを作る
新しい問題の考え方
階層を登る方向
上位階層を考え、横にずらす
アイデア出しの方法はいろいろあるので、その一つとして気軽に試してみてください。
それではまたくまー。
(2024.4.15追記)
わーい!