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住所情報を入力するなんていうのは、クラウドCRMが先進国だけのものだった時代の話

「この見込み客の住所情報ってどうやって入力したらいいですか?」

最近新しくご支援を開始したスタートアップ企業とのオンラインミーティングで聞かれました。
住所情報という、もう型が決まった基本的な情報をどう入力するか、一見簡単な質問かと思うその問いかけの裏側には、CRMの未来を考える重要なヒントがあったのです。

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こんにちは。
ベンチャー、スタートアップ、中小企業専門に、ZOHOやSalesforceの運用支援をしている虹雲ワークスです。

この仕事をしていると、本当にさまざまな業種業態の方からクラウドCRMの活用について相談をお受けします。
世の中には、こんなにもたくさんのビジネスと、それぞれの顧客とのつながり方があるんだな、と仕事を超えた驚きや尊さを感じることもしばしばです。
そんな経験を、システム開発技術の話ではなく、ストーリーとして伝えられたらと思い、noteをはじめました。
(この話は実体験を基にしていますが、あくまでフィクションですのでそのつもりで読み物として楽しんでもらえたら幸いです。)

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「この見込み客の住所情報ってどうやって入力したらいいですか?」

国、都道府県、市区町村、それ以降の番地までを分けてそれぞれの項目に入れてください。
取引が開始された後、取引先や取引先責任者(連絡先)に住所情報をどう引き継ぐかは任意で設定できますよ。
ちなみに、マンション・ビル名を別でカスタム項目として作成する場合もありますね。

私がお答えすると、「いや、違うんですよ」というお返事。

この国では、いわゆる住所情報なんてないんです。
正しくは、ないわけじゃないけど誰も使ってないし、番地みたいな個別の建物を特定するようなものはないんです。

実はご支援先は、ある新興国に進出した日系スタートアップでした。
彼ら曰く、住所という仕組みが全国的に整っているのは、欧米や日本などの先進国だけで、自分たちがビジネスを展開している新興国では都市部だけにしか細かい住所情報はなかったり、世界には、「住所」というものはあっても実質上使われていない国もたくさんあるんだとのこと。

では日々の生活をどうしているかというと、通りの名前や目印になるもので呼んだりするんだそうです。
イメージとしては、京都にあるような「〇〇通下入ル」みたいな感じに近いようです。

とはいえ、業態の特性上、何らかの形で客先の場所は特定しないといけないということで、結局「緯度・経度」情報を使うことにしました。
Google Mapとかで緯度経度情報を数値で取得し、町名・番地項目に入力することで代用しました。
(ちなみに、モバイルアプリからだとこの情報だけでマップがちゃんと起動しました!)

現在使われているクラウドCRM(SalesforceやZOHO)は、その原型が1990年代後半~2000年代前半に作られています。
Salesforceは元々アメリカ、ZOHOはアメリカに本社を置き開発はインド中心のです。
米国Salesforce.comの設立は1999年、ZOHOの前身であるAdventNetの設立は1996年です。
おそらくユーザは欧米企業を中心にイメージしていたのでしょう。
SalesforceもZOHOも、当然のように、Country、State、City、Streetという分け方で住所情報を持っています。
日本では、(国)、都道府県、市区町村、それ以降という分け方になります。
(Salesforceは数年前から緯度経度情報も持てるようになりましたが住所情報の代替ではありません)

それから30年近くが経ち、クラウドCRMは欧米の先進国だけでなく、新興国や商慣習の違う東・東南アジア圏、中東などでも当たり前のように使われています。
また、モバイルの発展により「場所」の表し方も単なる住所ではなく、GPSによる特定やビルの中での階の情報(高さ情報)、さらには移動経路や手段の情報なども扱われるようになってきました。

もう、「都道府県、市区町村、それ以降で分割した、正しい住所を入力しましょう」的な、一部の先進国の20世紀末のビジネスの常識を型として押し付ける時代ではないのかもしれません。

クラウドCRMの発展と普及の歴史に思いを馳せるとともに、これからの時代は住所情報がないような新興国(だけどモバイルは浸透しており、むしろ緯度経度やGPSでビジネスが進んでいく!)でこそCRM活用が伸びるのかもしれない、とも感じます。

そんな時代に求められるのは、我々と異なる常識で動く新興国でのビジネスチャンスに取り組む現場ニーズへのリスペクトと、存在する機能をどうアレンジしてニーズに適用させていくかという知恵とノウハウと前向きかつ大らかなマインドではないかと思いつつ、世界ってやっぱり広いんだなと空を見上げたのでした。


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